フカボリ
子猫の命に真正面から向き合う-中学2年生の勇気と責任と覚悟-
2022年6月22日
ある日、知事宛に一通のお便りが届きました。
送り主は、赤石朔さん。現在中学2年生の赤石さんは、小学5年生から家族で富士市内に「子猫園ベルソーデシャトンズ」を開き、保護猫活動を行っているそうなのです。
お便りには、子猫を取り巻く過酷な現状を知ってショックを受けたこと、保護猫の問題は根深く、より多くの方に知ってもらいたいことが綴られていました。
--保護猫活動って?根深い問題とは?
目次
1 「守ることができる命を救いたい、未来につなぎたい・・・」
2 保護した子猫は261匹!子育てさながらの多忙な日々
3 卒園は幸せになるためのステップ
4 殺処分を減らすために
「守ることができる命を救いたい、未来につなぎたい・・・」
コロナ禍でおうち時間が増え、ペットを飼う人が増えた、といったニュースを目にする機会が増えました。みなさんはいかがでしょうか。
ペットがいると、その姿に癒やされたり、一緒に遊んだり、お散歩したりと楽しいことが増えます。
その一方で、命を預かるというのは、日々のエサやりに掃除、体調管理などのお世話が不可欠。命を預かるというのは大変です。
どうして赤石さんは保護猫活動を始めたのか、どんな取り組みをしているのか、広聴広報課職員が詳しく聞いてみました。
こちらは、赤石さんが家族で運営する「子猫園ベルソーデシャトンズ」の保護猫「ぼん」です。取材中、膝の上に乗ってきてくれたりと、その人懐っこさに、あやうく、連れて帰りそうになりました。
こんなに可愛い子猫たちですが、毎年、全国で約2万匹の犬猫が殺処分されています。その半数以上は生まれたばかりの子猫です。猫は、不妊・去勢手術をしていなければ、一度に複数の子猫を産みます。飼い主が不妊・去勢手術をせず、飼育を放棄した野良猫は、今もなお、どんどん子猫を産み続けています。
赤石さんは、4年前、近所で保護活動をしていた方から子猫2匹を譲り受けました。「こんなに可愛いのになぜ保護猫がいるのだろう」と疑問を持ち調べていった結果、生まれたばかりの子猫たちが、人間の飼育放棄による勝手な都合で殺処分されている現状に、強いショックを受けたとのこと。
そこで家族と相談し、「子猫園ベルソーデシャトンズ」を立ち上げ、保護猫活動を始めました。『ベルソーデシャトンズ』とは、フランス語で『子猫のゆりかご』という意味です。
「生まれてくる子猫は、何も悪くない。同じ命なのに、飼育を放棄する人間の都合で殺されてしまうことをなくしたい。守ることができる子猫の命を救いたい、子猫の命をつなぎたい」と、赤石さんは力強く教えてくれました。
保護した子猫は261匹!子育てさながらの多忙な日々
県保健所や市役所からの連絡を受けて、これまで261匹の子猫を保護してきました。活動の範囲は、沼津市、富士市、富士宮市が多く、過去には伊豆市まで行ったことも。現在は、約40匹の猫を保護しており、その約8割が生後0日から2ヶ月位の乳飲み子。3時間置きにミルクを与えたりと、人間の子育てのように多忙な日々が続きます。親戚やボランティアの手を借りながら、交代でお世話をしているそうです。
「保護した子猫は、ほとんどが野良猫。野良猫は、ノミ、ダニ、栄養失調、虐待と思われる怪我など、何かしらの問題を抱えています。子猫園で迎えるに当たり、動物病院に連れて行き、治療をした上で、育てています。」
保護された猫達は、里親が見つかるまで、赤石さんに見守られてその日を待っています。
「保護猫活動は、想像以上に大変です。避妊・去勢手術の促し、園で保護することへの同意など、すぐに理解を得られることばかりではありません。でも、助けられた子猫の命を見ると、辛いときや悲しいときに安らぎを与えてくれます。救える命を救いたい、またがんばろう、と思うんです。」
子猫たちは、みんな辛い過去を抱えています。赤石さんは、「これからは幸せしかない。いつもこの子が愛されるように、幸せになれるように」との思いを込めて、一匹一匹に名前を付けています。
卒園は幸せになるためのステップ
毎週日曜日、完全予約制の譲渡会が行われています。譲渡に当たっては、「屋外で飼わない」、「譲渡は2匹以上(子猫園では集団で育ってきたので1匹では仲間がいないことがストレスになる)」、「3段ゲージ・キャリー(カゴ)・脱走対策の実施」、「猫アレルギーがない」、「飼い主が55歳未満(猫は20年は生きる)」といった条件を課すと共に、10日間のトライアル期間を経て、問題がなければ譲渡するとのこと。
「今の生活よりも幸せになれるかどうかが重要。里親が見つかって離れる時は寂しいです。でも、しっかりとした里親の元で新しい暮らしをしてくれることが何よりも嬉しいです」と語る赤石さん。譲渡した後も、里親の相談に応じたり、成長の様子を教えてもらったり、時には遊びに行ったりと、里親とのつながりも大切にされています。
殺処分を減らすために
子猫の殺処分を減らすためには、親猫のTNR(トラップ・ニューター・リターン:捕獲器などで野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻す)が必要です。望まれない命が生まれてしまう根本を解決しなければ、殺処分は減りません。赤石さんは、保護猫活動を知ってもらうために、市役所やショッピングセンターでの写真展、県保健所と一緒に近隣の小学校における「命の尊さ」の授業も行っています。
「命に真正面から向き合うのは、勇気と責任と覚悟が必要です。辛くてため息や涙が出ることや、体調が悪くなったこともありますが、子猫の命を救う事を諦めたくない。子猫たちを助ける方法があるならば、自分にできることを全力で考えたい。世の中の人が、『人も動物も命は平等で大切。子猫の命を救うことに理由なんてない』という気持ちを持ってくれたら」と語る赤石さん。
赤石さんのお話を全て聞き終えた後、可愛い子猫たちを見ると、かけがえのない命を大切に守り育ててあげたい、と感じました。そう思う一方で、子猫たちが今、ここにいる理由を考えると、動物を家族として迎え入れる際の心構え、最期まで見届ける責任・自覚を持つことが大事であると改めて思いました。
<子猫園ベルソーデシャトンズ 赤石朔さんからのお願い>
- 春(4~6月)は、出産が多くなります。子猫を見つけたら、迷わず保護して欲しいです。必要な処置や治療のアドバイス、乳飲み子の一時預かり、里親探しといったサポートもします。
- どの子猫もみんな可愛く自慢の子ども達です。大切な家族として迎えていただける方を募集しています。
- 子猫の保護、育児、治療等には費用がかかります。負担にならない範囲で、支援をお願いしたいです。
- 子猫の命をつなぐために一緒に活動をしてくれるボランティア仲間を募集しています。通院のお手伝いや一時預かり、親猫の避妊・去勢の捕獲など、少しずつでも良いので、力を貸してほしいです。
赤石さんの活動の詳細については、「子猫園ベルソーデシャトンズHP」をご覧ください
▶https://berceau-de-chatons.localinfo.jp/
<県からのおしらせ >
令和4年6月1日、改正動物愛護管理法が施行され、飼い主には、繁殖の制限や逃げ出さないための措置、さらに、ブリーダーやペットショップで販売されるマイクロチップの登録も義務化されました。人と動物が共生する社会の実現に向けて、まずは飼い主が責任と自覚を持って飼育することがその一歩です。
マイクロチップについては、「県民だより6月号」をご覧ください
▶https://www.pref.shizuoka.jp/kikaku/ki-110b/202206/hyousi/index.html
―――↓問い合わせ――――――――――――――――――――――――――
【問い合わせ】 県広聴広報課 ☎ 054(221)2231 FAX054(221)4032