しずおか絶景 総合情報誌ふじのくに

【富士山西山本門寺】信長伝説が似合う富士五山の古刹

2022(令和4)年10月

富士五山

信長公首塚

県天然記念物 大ヒイラギ

JR富士駅から身延線で北上すること約35分。芝川の清流沿いに車で10数分走ると、富士山西山本門寺の黒門が見えてくる。門をくぐると約1.5kmの長い参道が続く。うっそうと茂る老杉に覆われた道は、中世の寺建立の頃からほぼ変わっていないのだろう。道を進むにつれて静謐さが一層際立ってくる。

東北に霊峰富士、西北に天子ヶ嶽を望む絶好の地に建つ黒門。ここから約1.5kmの参道が始まる。
樹齢を重ねた木立が続く表参道の杉並木。大河ドラマなどのロケに使われることもあり、いにしえの面影が今もそのまま味わえる。

建立は室町初期の康永3(1344)年。開祖は日蓮の孫弟子にあたる日代。日蓮、日興の流れをくむ富士五山の一つだが、現在は単立寺院となっている。

700年近い時の流れの中で、寺の隆盛は時代の為政者や権力者と深く関わってきた。戦国時代の駿河は、今川家、武田家の支配下で栄えた。江戸時代になると皇女常子内親王の庇護を受け、近衛家など公家、徳川家との深いつながりが続き、長く繁栄を極めた。約3万5千坪の広大な敷地に建つ本堂や宝蔵、鐘楼は、およそ350年前に築かれたと推定され、幾度かの改修を経ながらも当時の面影を今に残している。

広い境内でひときわ目立つ大イチョウの風格も圧巻だ。推定樹齢は約200年。晩秋には落葉が辺り一面を黄金色に染め、その奥に建つ本堂の姿が美しく映える。そして推定樹齢500年といわれる県天然記念物の大ヒイラギ。この樹下に、原志摩守宗安(はらしまのかみむねやす)によって本能寺から持ち出された信長の首が埋められたと伝えられており、側に建つ石碑には『信長公首塚』の文字が。

(左)県天然記念物の大ヒイラギと(右)信長公首塚の石碑。

所伝には原志摩守宗安は、18代日順と父子の関係にあるともいわれており、また、囲碁の名人本因坊日海と日順とは師弟子の間柄ともみられ、共に本能寺の変に居合わせたことから、当寺に首を運んだという伝説が生まれたのであろうか。真偽の程は分からないが、心引かれる物語だ。

皇室など高貴な方々の霊を祭ることに徹し、本堂や宝物の一般公開はしていない。それ故、時代の波にもまれることなく、中世からの美しい佇まいが残されている希少な古刹だ。境内が黄葉に染まるこの季節、静かに訪れてみたい。

黄葉まっ盛りの11月には「信長公黄葉まつり」を規模を縮小して開催予定。問い合わせは芝川商工会へ。
寛永21(1644)年の作とされる梵鐘。富士宮市指定文化財。晩秋には、周囲の黄葉と相まって厳かな美しさを醸し出す。

アクセス

富士山西山本門寺

住所

静岡県富士宮市西山671

アクセス

JR富士駅より車で約40分
JR身延線芝川駅より車で約10分
新東名新清水ICより車で約25分

お問い合わせ先

TEL:0544-65-0242
※本堂拝観ご希望の方は個別にお問い合わせください。

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