フカボリ
自転車競技選手が集まる東部・伊豆半島地域、全日本選手権も開催。TEAM BRIDGESTONE Cycling(チーム ブリヂストン サイクリング)徳田選手にお話を伺いました。
2023年5月29日
自転車競技の全日本選手権は、5月に伊豆市でトラック競技が行われ、ロードレースは同じく伊豆市内で6月22日から開催されます。本県でのロードレースの開催は4年振りとなります。
5月に行われたトラック競技の全日本選手権の男子中距離種目で全日本チャンピオンの座を独占し、ロードレースでも元全日本選手権のチャンピオンが在籍する自転車競技チームの「TEAM BRIDGESTONE Cycling」は、三島市に拠点を構えています。「オリンピックでのメダル獲得」を目標に世界と戦っているチームです。
6月はトラック競技のアジア選手権、ロードレースの全日本選手権を控える同チームの徳田選手にチーム、自転車競技についてお話を伺いました。
目次
1 東部・伊豆半島地域と自転車競技
東部・伊豆半島地域は、東京2020オリンピック・パラリンピック(2021年開催)の自転車競技の開催地でした。オリンピックでは、トラック競技は伊豆ベロドローム(伊豆市)、マウンテンバイクは伊豆MTBコース(伊豆市)、ロードレースは東京都をスタートし富士スピードウェイ(小山町)をゴールとして、御殿場市、裾野市、小山町の公道を使い行われました。
パラリンピックも同様にトラック競技は伊豆ベロドローム、ロードレースは富士スピードウェイ及び周辺道路で行われました。
無観客開催の競技が多かった東京2020オリンピックですが、自転車競技は有観客での開催となり、大人から子どもまで世界トップクラスの白熱した戦いを、手が触れそうな程間近で観戦し、臨場感たっぷりに目に焼き付けることができました。
元々東部・伊豆半島地域は、「自転車競技の聖地」と言われています。「自転車に乗っていれば誰しもが集う地」と元世界チャンピオンが以前話してくれました。
伊豆市には日本競輪選手養成所、日本サイクルスポーツセンターがあるなど、施設面でも充実していること、起伏に富む山あり海ありの自然美、富士山を眺められる絶好の景色があることで、自転車競技の選手のみならず、多くのサイクリストの憧れとなっています。このため、日本だけではなく、世界中から多くの選手やサイクリストが集まってきています。
令和5年度は、トラック競技とロードレースの全日本選手権が伊豆市で開催され、他にも、プロの選手が出場する自転車競技のレースが東部地域で複数開催される予定であり、オリンピック・パラリンピック後も自転車競技レースが東部地域で相次いで開催されています。
2 TEAM BRIDGESTONE Cyclingについて
伊豆半島の玄関口、三島市に拠点を構えている自転車競技チーム「TEAM BRIDGESTONE Cycling」。「オリンピックでのメダル獲得」を目標に掲げ東部・伊豆半島地域を中心に活動をしています。
ロードレースの選手として、また今季からはチームのスタッフとしても、チームを支える徳田優選手に、トラック競技のアジア選手権やロードレースの全日本選手権を控えるチームについてお話を伺いました。
所属しているチームの魅力は、「目標が明確にあって、それに向けて、ストイックに打ち込んでる姿」と徳田選手は語ってくれました。
TEAM BRIDGESTONE Cyclingは、オリンピックに出場した選手が4人在籍し(令和5年5月時点)、トラック競技では世界選手権の銀メダル、ネーションズカップの優勝・表彰台等、世界との戦いで表彰台に上っている選手が複数いるチームです。
トラック競技を戦いながらロードレースも当然戦う-。世界を転戦しながらも、国内の各地で行われるロードレースに参戦しています。
ロードレースにおける同チームのメンバーの特徴について、
「メンバーは、トラック競技の中距離の選手が多いので、野球で言うと全員4番バッターみたいなチームです。
他のチームは上りに強い選手やスプリントに強い選手などをバランス良く配置するのですが、うちは同じタイプの選手がずらっと並んでいます。
他のチームとは違う作戦を考えなければいけないので、それは楽しいですね。」と語ります。
さらに「ロードレースは、みんなでレースを作っていきます。
作戦会議をして、ダメだったときは言い合いになることもあります。『何であれをしてくれなかったのか』、『ああして欲しかった』みたいになることもあります。でも、それも含めて楽しいですよね。なんだかゲームをしてる感じで好きですね。」とチームメンバーとの関わりや、チームで戦うロードレースの特有の面白さについても教えてくれました。
トラック競技だけではなく、ロードレースでも今年は既に複数回優勝を飾っている同チーム。直近では、5月28日に行われたツアー・オブ・ジャパン2023東京ステージで優勝しています。
コース特性や大雨の影響で自転車のパンクや故障が続出したレースでも、優勝を飾りました。そのレースを、スタッフとしてチームを支えた徳田選手は、こう振り返りました。
「うちは、メカニックの腕がいいので、パンクやトラブルはすごく少ないチームだと思います。
それでも、いつ何が起きるかわからないのでメカニックは準備を怠りません。レースの片付けで、誰でも出来るような(給水用の)ボトルを洗うなどの作業を僕がすることで、メカニックが自転車を整備する等技術の仕事に専念してもらえるようになればと思っています。」と、力強く語ってくれました。その話ぶりからは、チームへの信頼感とその強さの一端が垣間見えました。
選手としての活動だけではなく、スタッフとしてもレースのサポート業務に取り組み始めた徳田選手。
スタッフの業務を始めてから「(ボトル洗いを)自分でやると、こんなに面倒くさかったのかと改めて実感しました。スタッフには感謝しています。」とチームをサポートする側の大変さも感じたとのことです。
徳田選手がスタッフとしてチームを支えるうえでは、選手としての感覚が活かされています。
「うちのチームは、監督も普段から選手とコミュニケーションをとっています。選手は好きに言わせてもらっていますね。
(スタッフの立場になると、)『選手はこう言われたらこう思うんじゃないか』とか、選手目線に立って発信しないといけないと思います。『裏方だから』となって黙ってしまうと、僕がスタッフでいる意味はあまりないと思います。
スタッフ間でもコミュニケーションを取っていますので、場合によっては『選手はストレスに思ってるんじゃないか』ということは、積極的に言うようにしています。」
徳田選手の言葉から、現役の選手がスタッフに加わることにより、一層チームが強くなってきている感じが伝わってきました。
また、同チームは、地域貢献として、東部地域の小学校でのイベント出演なども行っています。昨年度は、東部地域に住む小学生を招待し、子ども向けお仕事体験会を開催しました。
お仕事体験会では、「自転車競技選手の仕事」、「メカニックの仕事」、「チームスタッフ(監督)の仕事」を子ども達が一つ一つ体験しました。
「自転車競技選手の仕事」ではトレーニングを体感し、「メカニックの仕事」では、メカニックさんが、自転車を綺麗に洗う姿を目の前で見せてくれました。
また、監督がレースで使う補給食の作り方を子ども達に教え、監督が実際に作る様子を見せながら、子ども達もレース用に作った補給食を包む体験をしました。
子ども達との触れあいについても、徳田選手にお話いただきました。
「子どもにとって自転車は、『免許を取らなくていい一番最初に自分で操作する乗り物』だと思うので、それを楽しんでほしいです。
『危ないからダメ』な乗り物ではない、ということを伝えたいです。自転車が危ないんじゃなくて、乗り手が危ないだけ。
『転ぶから危ないので止めなさい』ということで、チャンスがなくなる子がいるのは嫌だな、と思いますね。
競技をすることに繋がるかは別として、お仕事体験は、選手だけではなく、監督やメカニックがどのようなことをしてるか、など、競技と触れ合うことで『自転車は速いだけじゃないよ』ということを伝えられて楽しかったです。」
お仕事体験会を開催した際、同チームの宮崎監督もこう振り返っていました。
「自転車競技チームについては、どういうことをやっているのか、なかなかわからないと思います。地元の子ども達に見てもらえる機会が作れて良かったです。
私たちの目標はパリオリンピックですが、チームには色々な役割の人がいて、色々な関わり方をしていることを知ってもらい、興味を持ってもらうことが出来たと思います。」
東部地域は、元々子ども達にとっても自転車を乗ること自体に親しみを感じやすい環境だと思います。子ども達が元気に自転車に乗れる大きな公園がいくつかありますし、車が入れない河川敷などでは安心して自転車に乗ることが出来ます。
河川敷などでは、同チームの選手を始め、他のチームの選手が走っている姿を間近で見ることが出来ます。
徳田選手を始め多くの選手の経験やノウハウ、自転車に乗ることの楽しさが、イベントや普段の練習の姿を通じて東部地域の多くの子ども達に受け継がれているのではないでしょうか。
3 東部地域と自転車 これから
6月には、全日本選手権のロードレースが伊豆市で開催されます。ロードレースはスタジアムのような場所で開催される競技ではなく、マラソンと同じように一般の公道などが会場となります。
ロードレース特有の魅力についても、徳田選手に教えてもらいました。
「ほとんどのレースで、選手がいるピットに観客が出入りしやすいということが、ロードレースの魅力だと思います。選手にサインをもらいに行きやすいスポーツです。
スタジアムだと、選手の控え室は決まっていて、そこに観客が入ることはできないのですが、ロードレースはそれができます。そういうことを楽しんでもらえたら良いなと思います」
ロードレースの会場では、コースの近くの定められた場所に各チームのチームカーを駐車し、テントを張り、選手がそこでスタンバイしていることが多いです。選手がアップしている様子なども間近で見ることが出来ます。
そのため、選手と観客の距離がとても近い競技と言えるかも知れません。
今後も、東部地域では、自転車競技のレース開催が複数予定されています。
10月には、マウンテンバイクの国際大会であるジャパンマウンテンバイクカップも伊豆MTBコース(伊豆市)で開催予定です。
普段から多くの自転車競技の選手が練習を積んでおり、その姿を河川敷や公道で見ることができる東部地域。今回紹介した東部・伊豆半島以外でも、富士市にチームの拠点を置く「レバンテフジ静岡」は、富士山周辺などで練習を積んでいます。
レースを間近で見ることの出来る自転車競技。レースの観戦に東部地域を訪れてはいかがでしょうか。
レース観戦以外にも、起伏に富んだコースでサイクリングを楽しんだり、富士山や駿河湾を望む雄大な景色や味わい豊かなグルメを堪能しに、東部地域にぜひお越しください。
\ 静岡県東部地域ってこんなところ /
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静岡県 東部地域局
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