フカボリ
再エネの拡大とエネルギーの地産地消に取り組む!「ふじのくにエネルギー総合戦略」とは?
2023年5月31日
「6月から電気料金が値上げ」・・・そんなニュースに、「電気代を節約しなきゃ!」「でもどう節電すれば・・・」と危機感を持った方、多いのではないでしょうか。
県は、「ふじのくにエネルギー総合戦略」を策定し、住宅や工場の屋根への太陽光発電の導入などエネルギーの地産地消を進めています。「これって、もしかしたら、家計への助けになるかも?」と、気になった広聴広報課職員が、エネルギー政策課職員に取材をしてみました。
県民だより令和5年6月号と一緒にご覧下さい。→県民だより令和5年6月号
目次
1.静岡県の再生可能エネルギーの現状は?
ーー県民だより6月号で太陽光発電を取り上げていますが、他にも静岡県で導入されている再生可能エネルギーにはどんなものがあるのでしょうか?
小水力発電、バイオマス発電、温泉熱発電、風力発電などがあります。
小水力発電というと、ダムでの発電など大規模なものをイメージされるかと思いますが、そうではなく、農業用水、貯水池、用水路などを活用したものです。県内各地で導入されていますが、特に富士宮市は「日本一小水力発電のまち」を謳っています。
バイオマス発電は、木材を燃やした熱や、食べ物の残りカス等を発酵させて発生させたメタンガスを燃やした熱を利用して発電と、色々あります。小規模のバイオマス発電は、県内各地で導入されています。 また、現在、御前崎港で大規模なバイオマス発電所の建設が進められています。
温泉熱発電は、温泉の熱蒸気や発生するメタンガスを活用して発電したもので、県内3カ所で導入されています。なお、全国を見てみると、東北や九州では大規模な地熱発電が導入されていますが、静岡県では、源泉の温度が低かったり、既存の温浴利用との共存などの課題もあります。
風力発電は、風の力を利用して風車(タービン)を回して電気に変換します。静岡県は風況に恵まれていますが、大きな設備が必要となり、地域の自然環境に与える影響が大きく、導入が難しい面があります。
2.なぜ再生可能エネルギーの地産地消を目指すのか?
ーー静岡県にはさまざまな再生可能エネルギーがあることがわかりました。エネルギーの地産地消に取り組んでいるとお聞きしましたが、なぜ、地産地消を目指しているのでしょうか。
静岡県は日照時間が長く、雪があまり降らず積もらないため、太陽光発電には本当に恵まれた地域です。山が多く、山から水が流れる際に落差があるため、小水力発電にも向いています。
また、防災面の強化を図るためでもあります。今は主に、大規模な発電所で電気を作り、送電線で各ご家庭まで電気を送っていますが、地震・台風などの災害により発電所が停止したり送電線が切れたりすると、大規模な停電が発生するおそれがあります。そのため、エネルギーを一極集中型の供給体制から、小規模分散型の供給体制への切り替えを目指しています。
ーー県は、「ふじのくにエネルギー総合戦略」を立てていますが、戦略を立てた理由や背景は?
東日本大震災以降、全国で再生可能エネルギーを増やそうという機運が高まりました。さらに昨今では、世界中で2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)社会の実現を目指しているので、静岡県もまずは、2030年度までに県内の温室効果ガス排出量46.6%削減(2013年度比)を目指そうということで、「ふじのくにエネルギー総合戦略」を改定しました。
カーボンニュートラル社会実現への対応だけでなく、静岡県の経済の活性化のチャンスとして捉え、県の豊かな自然環境を活かしたエネルギー産業のビジネス化を図るためにも、戦略を策定しました。
3.実は4つのストーリーでつながっている?4つの戦略
ーーふじのくにエネルギー総合戦略には4つの戦略があるとのことですが、戦略について詳しく教えていただけないでしょうか。
戦略1の「再生可能エネルギー等の最大限の導入促進」ですが、太陽光発電は設置までに要する時間が他の再生可能エネルギーよりも短く、導入量の拡大に大きく貢献してきました。2030年度の目標達成には、引き続き太陽光発電が大きく寄与すると考えられるため、導入をさらに促進します。ただ、メガソーラーなど大規模発電は、環境に大きな負荷をかけるという問題があります。また、設置する場所によっては、太陽光を反射する太陽光パネルは景観にそぐわないという問題もあります。そのため、各家庭や事業所などの屋根に設置する、比較的小規模な太陽光発電を増やし、地域や環境と調和する形で推進します。その取り組みが、県民だより令和5年6月号に掲載している「太陽光パネル・蓄電池の共同購入事業」です。やはり、自分のところで作った電気は自分のところで使うのが1番。まずは、家庭の屋根に太陽光パネル。電力の自家消費を促していきます。
また、太陽光発電だけでなく、小水力発電、バイオマス発電及び温泉エネルギーの導入を促進するため、市町や民間事業者が導入する場合に、設備などの費用を助成する制度「ふじのくにエネルギー地産地消推進事業費補助金」を設けています。(令和5年度は受付終了)
戦略2の「脱炭素化に合わせた産業の振興」ですが、製造の現場では、化石燃料をエネルギー源としていることが多く、まずは化石燃料から電気への転換を推進しています。今は電気も多くが火力発電所で化石燃料を燃やして発電していますが、将来、カーボンニュートラルな電気が増えれば、製造現場のカーボンニュートラル化が進むと考えています。
ただ、エネルギー源を電気に変えることが難しい分野もあり、そうしたところは燃やしたときに二酸化炭素が出ない、水素を活用できるよう進めます。水素は今、世界的に注目を集めています。
最近は、電気を蓄えて走る車、電気自動車(EV)が増えていますが、トラックやバスなどは蓄電池が重くなりすぎて航続距離が短くなるといったデメリットがあります。
水素と空気を利用した燃料電池自動車(FCV)だと、発電しながらモーターを回して走るため、重たい蓄電池が不要で、長距離走行に向いています。東京オリンピックでは選手やスタッフの送迎に燃料電池(FC)バスが活躍しました。既に路線バスとして導入されている地域もあり、今後もっと全国的に普及していくと思います。県としても、水素ステーションの設置に対して助成しており、FCVの利用環境の整備を進めています。
戦略3の「二酸化炭素の吸収源対策」は、戦略1と2を行っても、どうしても出てしまう二酸化炭素への対策です。二酸化炭素を吸収する森林の適切な整備や森林資源の循環利用を促進したり、海草や海藻など海の森「ブルーカーボン」の活用に向けた取り組みも進めており、榛南地域では藻場の保全活動などが行なわれています。
戦略4の「徹底した省エネルギーの推進」は、県民の皆さまに1番取り組んでもらいたい内容です。
2030年度までに県内の温室効果ガス排出量46.6%削減(2013年度比)するという目標に、1番効果的で、県民の皆さまにも取り組みやすいのは省エネです。例えば、こまめに電気を消す、LED化にするといった取り組みです。また、冷蔵庫やエアコンなどは、昔に比べて省エネ性能が格段に向上していますので、最新のものに買い換えると、場合によっては、10年以上前のものの半分近くの電気代ですむこともあります。
他に、地球温暖化対策アプリ「クルポ」に参加登録し、脱炭素アクションに取り組むという方法もあります。
「クルポ」についてはこちらでご紹介しています!→県民だより令和5年3月号
ーー4つの戦略はバラバラだと思っていたのですが、戦略1と2で再生可能エネルギーと水素などに取り組み、それでも出てくる二酸化炭素を戦略3で吸収、そしてなおかつ戦略4で省エネに取り組むと、実はつながっていたんですね!
戦略の目標として、2030年度までに県内の温室効果ガス排出量46.6%削減(2013年度比)を目指していますが、達成できそうですか?
実は、挑戦的な目標で、今までの取り組みをそのまま継続したのでは、46.6%削減は達成できません。より一層の普及啓発、取り組みの加速化を図らなければ、目標の達成は困難です。
ーー目標達成のためには、どうすればいいのでしょうか?
県民の皆さまの協力が必要です。太陽光パネルを設置して、発電した電気は自家消費をする。さらには蓄電池も合わせて設置していただければ、昼間蓄電したものを夜間使うことで、エネルギーの完全自給自足が達成できるので、ぜひ導入を検討していただきたいと思います。
4.私たちもできる?おうちに太陽光で快適ライフ!
ーー太陽光発電は正直いってお高いのですが、お安く購入できる方法はないでしょうか?
今、新築の住宅を購入する時に、セットで太陽光パネルも導入しようかという家庭が増えています。
新築の住宅であれば、住宅所有者の初期費用が原則無料でソーラーを設置する、いわゆる「ゼロ円ソーラー」という事業を行なっている事業者さんがあります。設置の際に費用はかかりませんが、その代わりに、例えば10年契約で10年間はパネルを設置した小売電気事業者さんに電気代を支払い、その電気代の中に、太陽光パネルの設置費用や管理費用を上乗せして毎月分割で支払っていただく形です。
ただ、それだけだと県民全てに太陽光パネルは広がっていきません。今後は新築だけでなく、すでに建っている建物の屋根にも太陽光パネルを増やしていかなければならないといったところが課題です。
その課題解決のために取り組んでいるのが、「太陽光パネル・蓄電池の共同購入事業」です。
ーー古い家だと、太陽光パネルが載るかどうか心配ですが・・・・
あまりにも築年数が経っている家だと、耐震性の不安がありますが、パネル自体は20~30年持ちます。多少築年数が経っていても、元々しっかり設計されていて、パネルが載っても耐えられる家ならパネルを設置できます。ただ、家の状況は千差万別なため、それぞれの家を見ての判断になります。
ーーパネルを設置したら、どれぐらい電気代が節約できるのでしょうか?
電気代の節約については、日中どれぐらい電気を使うか、日々の生活の状況でかなり変動が大きいです。例えば、日中働きに出てて、家では全く電気を使わないような家庭であれば、昼間に発電した電気はほぼそのまま売ってもいい状況になります。その場合は売電収入が見込めると思います。
逆に、ご高齢世帯など日中、家にいることが多いご家庭で、夏場などずっとエアコンを使用していたわりには電気代の請求があまりこなかった、自分のところの発電で日中のエアコン代をまかなえたという、利用者さんの声もあります。
また、パネルをどれぐらい屋根に載せるか、パネルの位置などの設置状況も大きく影響します。太陽光が当たりやすい位置に、パネルをいっぱい載せられるところだと、使う電気を全て太陽光パネルでまかなうこともできると思います。
ーーパネルは壊れることはないのでしょうか?
パネルの耐用年数は20~30年と言われており、日々のメンテナンスも必要はありません。ただ、電子部品などはパネルよりも早く耐用年数を迎えますので、数年に一度は設置業者に点検してもらったほうが良いでしょう。
今回の共同購入事業では、県と協定を結んだ事業者が、適正な工事と設置後のアフターケアを実施する施工業者を吟味したうえで決定しています。
詳しくはこちらをクリック→「太陽光パネル・蓄電池の共同購入事業」
これから夏に向けて、暑いし紫外線が気になるから嫌だと思っていた太陽。二酸化炭素を出さない環境にやさしいエネルギー、しかも電気代の節約になるかも?となると、電気代が値上がりしつつある今、共同購入を検討したくなりますね・・・家族と要相談です。
また、日常生活で部屋の電気やテレビ、エアコンなど付けっぱなしにすることが多い私としては、「ふじのくにエネルギー総合戦略」のお話をお伺いして、反省です・・・・これからは省エネを意識して過ごしたいと思います。
―――↓問い合わせ――――――――――――――――――――――――――
県広聴広報課 ☎054(221)2231 FAX054(221)4032