フカボリ
パラスポーツのチカラで静岡を元気に!~パラスポーツ応援隊による普及活動~
2023年9月27日
気温が下がり、過ごしやすい秋がやってきました。秋と言えば、スポーツの秋!1964年10月に開催された東京オリンピックをきっかけに、10月10日「体育の日」が制定され、この日を中心に、秋にスポーツを楽しむ風潮が生まれたそうですよ。
スポーツはやるのは苦手だけれど、観るのは大好き!の広聴広報課職員。静岡県障害者スポーツ応援隊として、県立東部特別支援学校で、車いすラグビーの若山英史(わかやま ひでふみ)選手による講演と実技指導があるとお聞きし、取材してみました!
目次
1 車いすラグビーって?
県は、スポーツを通して障害のある方に対する理解を深め、共生社会の実現を目指すため、パラリンピックに出場した静岡県関係選手を「静岡県障害者スポーツ応援隊」に任命し、小中学校や特別支援学校などに派遣して、生徒たちに講演や実技指導を行っています。
今回、応援隊に任命されている車いすラグビーの若山英史選手は沼津市出身で、19歳の頃にプールの事故でけい椎を損傷し、リハビリ施設で車いすラグビーを始めたそうです。守備力の高さに定評があり、ロンドン2012パラリンピック競技大会、リオ2016パラリンピック競技大会、東京2020パラリンピック競技大会に日本代表として出場し、リオパラリンピックと東京パラリンピックの二大会連続で銅メダルを取るなど、活躍されている選手です。
まずは、若山選手による生徒たちへの講演で、車いすラグビーの魅力や特徴を詳しく教えていただきました。
若山選手曰く、車いすラグビーの魅力とは、車いす同士で激しくタックルして、ラグビーボールを持っている選手を車いすごとひっくり返すとすごくいいプレーになり、それが魅力とのこと。車いす同士のぶつかり合いってちょっと想像できないですよね・・・もちろん、安全性が守られているラグビー用の車いすに乗ってコート内でルールを守ってタックルしてるので、通常の車いすでのタックルはまねしないでくださいね。
車いすラグビーの特徴として、ディフェンス用とオフェンス用の車いす2種類があり、競技特性に合わせて好きな方に乗るとのことで、若山選手はディフェンス用に乗っているそうです。通常の車いすは4~5年ぐらい耐久性がありますが、若山選手の車いすはまだ1年ぐらいしか乗っていないのに傷だらけでした。競技の激しさを語っていますね。
また、男女混合なのも車いすラグビーの特徴。同じコートの中に男女の選手が一緒にプレーし、激しいタックルも食らうし、自分からタックルしに行く選手も多いとのこと。体格差とか大丈夫なんでしょうか・・・
あと、ラグビーボールって皆さん楕円形を思い浮かべますよね?車いす用ラグビーボールは障害のある選手でも扱いやすいように、バレーボールのような丸い形をしていました。
2 生徒たちから質問タイム。若山選手の意外な一面も!
若山選手の講演後、生徒たちから若山選手にさまざまな質問が出ました。
ーー練習時間や休憩時間など、パラリンピック前の1日のスケジュールを教えてください。
パラリンピック前というよりは、基本的には、練習時間はいつも同じです。
東京のお台場にある「日本財団 パラアリーナ」という、バリアフリーで大きな体育館でいつも練習していますが、朝10時から練習をし、12時半ぐらいからお昼休憩をとった後、午後2時から午後5時ぐらいまでまた練習をしています。夜8時ぐらいに家に戻り、ご飯を食べたりお風呂に入ったりと、そんな感じで過ごしています。時折、日本代表の合宿や海外遠征があります。
ーー試合中に考えていることは何でしょうか?
基本的には、試合中はあまりマイナスなことは考えずに、「練習してきたことがちゃんとできるかな」とプラスなことを考えて試合を楽しむようにしています。よく「試合前に緊張しますか?」と聞かれるんですけど、ずーっと緊張してます。緊張はするけど、「ミスしたらどうしよう。嫌だな。」とかそういったマイナスなものではなくて、「自分ならここで絶対力を発揮するぞ」「今までやってきた練習の方法を絶対ここで出すぞ」といった緊張です。
本当は、練習は大嫌いですが、試合は楽しいし、何よりも車いすラグビーが心から楽しいという思いがあるから、練習にも耐えられます。
試合で勝った時に、チームや支えてくれる人みんなで一緒に喜びを分かち合えるのが、このスポーツのすばらしいところだと思っています。
ーー好きな音楽は何ですか?
あるグループにはまっています。この間ツアーに行ってきて、車いすであることを忘れるぐらい楽しみました!
若山選手にこんな意外な一面があるとは!好きな音楽を聞くと、モチベーションが上がりますよね。何のグループにはまっているかは、若山選手にお会いした時にぜひ聞いてみてくださいね(笑)
質問タイムのあとは、東京パラリンピックの銅メダルや車いすを順番に見せてもらったり、記念写真を撮ったりしました。
メダルは、パラリンピックならではの仕掛けがされており、リオパラリンピックのメダルは振ると音が鳴る仕掛けでしたが、東京パラリンピックはその仕掛けがなくなってしまったとのこと。ただ、その代わりに、視覚に障害のある方でもわかるような仕掛けがされているそうです。どこでしょう・・?
ボールを触るために松ヤニという粘着物を使っているため、車いすのタイヤはちょっとベタベタしているとのこと。それでも生徒は興味津々で見たり触ったりしていました。
3 ボールを落とさないように!若山選手と一緒にボール運びリレー
さて、次は赤チームと白チームに分かれて、若山選手と一緒にボール運びリレー。
膝の上にボールを乗せて、ボールを落とさないようにコーンを回って1周するリレーです。ボールをしっかりと抱えながら頑張っている生徒や、笑顔で楽しみながらボールを運ぶ生徒も。周りの先生方からの大きな声援が聞こえてきます。
ボール運びは最初は赤チームが速かったのですが、いつの間にか白チームが追い抜き、アンカーの若山選手がゴールし、白チームの勝ち!
でも、両方のチームとも工夫しながらボールを運んでいて、すばらしかったです。
本当は何回かリレーをやる予定だったそうですが、時間がないため1回だけ。もっと見たかったですね。
4 生徒たちからのお礼。そして若山選手へのエール
ボール運びリレーを楽しんだ後は、生徒たちから若山選手へお礼とプレゼント。
生徒たちからは、「今日は僕たちのために来てくださり、ありがとうございました。これを機に車いすラグビーにより興味がわきました。」とお礼の言葉とともに、生徒手作りの富士山のピンバッジやメモ帳などのプレゼントを若山選手に手渡ししました。
若山選手から、「僕も練習の合間のすごくリラックスした楽しいひと時を皆さんと一緒に過ごすことができてうれしかったです。しかもとてもすてきなプレゼントまでいただいて、本当に今日ここに来たことをすごくうれしく思います。皆さんに車いすラグビーのことを知ってもらいましたし、来年のパリのパラリンピックに出た時に、一緒に喜びを分かち合える仲間が増えたと思っています。次は銅ではなく金メダルを持って、また学校に帰って来れるようにこれからも頑張ります。」と決意の言葉が出ました。
最後に、生徒たちから、若山選手へパリパラリンピックに向けて「頑張れエール」を送り、楽しい時間が終わりました。
<参加した児童生徒のこえ>
- 車いすラグビーを詳しく知らなかったので、ラグビーをやり続けるための体力維持や車いすの工夫とかいろいろそういう考えがあるのを知って、率直にすごいなと思いました。
- ラグビー用の車いすに乗ってみて、自分の車いすと違うので、「怖い」「慣れない」っていう両方の感情があって少し怖かったけど、乗り続けていると慣れて、すごく楽しくなってきました。
- 視覚障害の方でも触ってわかるメダルを初めて見て、ちょっとびっくりしました。触ってみてうれしかった!
<応援隊活動を終えた若山選手に聞いてみました>
ーー今日の応援隊活動で生徒たちの反応を見ていかがでしたか?
実際に競技用の車いすに乗って、動きやすいとかそういったものに驚いてる表情を見るのもうれしいですし、ボールやメダルとかを実際に触ってみて喜んでもらえると、改めてしっかり結果を残して、またこういった機会をもう一度作ってもらえたらなと思いました。
ーー応援隊活動を通して、生徒たちにパラスポーツに対してどのように感じてほしいと思いますか?
パラスポーツもスポーツなので、体を動かすのが苦手な子であっても、どんな形でもいいから楽しむその一つのきっかけになってほしいなと思います。そこからさらに発展して、スポーツが好きになってくれたらとてもいいことだと思うので、こういった形でスポーツを通じて楽しさであったり、うれしさであったりとか、そういうのを感じていってもらえればなと思います。
<取材を終えて>
取材を終えた帰り道、同僚との最初の会話は、「若山選手、かっこよかった!」でした(笑)
二大会連続銅メダルでも充分な結果なのに、それを満足とせず、悔しいと言いながら、さらなる高みを目指している若山選手の車いすラグビーに対する取り組みもかっこよかったし、生徒たちに優しく接している姿もかっこよかったです!すっかり若山選手のファンになり、実際に会場で車いすラグビーを見て応援したい!と思いました。
この記事を読んで、私と同じく若山選手やパラスポーツを応援してみたいと思った皆さん、県民だより10月号で紹介している「ふじのくにパラスポーツ推進コンソーシアム」の会員になって、一緒に応援してみませんか?
○ふじのくにパラスポーツ推進コンソーシアムの紹介など、県民だより10月号はこちら
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