しあわせに暮らせる地域づくり 総合情報誌ふじのくに

静岡県地震・津波対策アクションプログラム2023

「防ぐ」「備える」…そして「逃げる」災害対策で肝心なのは、自助・共助の取り組み

通常時は横断歩道橋、災害時は避難施設として利用できる津波避難タワー(吉田町)

静岡県は、南海トラフ巨大地震に備えるため、
ハード・ソフト両面におけるさまざまな防災対策を実施。
その一環として、県は住民一人一人が適切なタイミングで避難するという意識を
持っていただくことが大切だと考え、
地域に密着した「わたしの避難計画」の普及活動を進めている。

駿河湾から日向灘沖にわたる海底地形「南海トラフ」は、大陸プレートの下に海洋プレートが潜り込む震源域として知られる。約500キロに及ぶ海岸線を有する静岡県は、震源域に近く、巨大地震が起こった場合、10メートル級の大津波の襲来と甚大な被害が想定されている。被害を最小限に抑えるため、県は「県民の命を守る」ことを最優先事項に掲げ、災害に強い県土づくりを長年進めている。「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2013」の実行により、想定犠牲者数を10年間で約8割減少(2022年度末時点)という目標を達成。現在は後継の行動計画「静岡県地震・津波対策アクションプログラム2023」に基づき、次の10年間を見据えてさらなる想定犠牲者数の減少に取り組んでいる。
減災目標の達成にはその時点の県民の防災意識の影響が大きいことから、自助・共助の底上げが不可欠。防災設備や避難施設の整備と並行しつつ注力しているのが、災害から「逃げる」ための避難啓発活動だ。

自助避難の徹底、備蓄の確保
共助要配慮者の支援の確保・自主防災組織の活性化
公助施設整備の推進・被災後生活の質的向上

巨大地震だけでなく風水害においても、正しい避難行動を把握しておらず、避難指示が出された時に避難の遅れが生じ、そのために被災するなどが問題となっている。そこで避難意識を高めるため、住民自らが作成する「わたしの避難計画」を考案し、その普及促進に努めている。
津波浸水、河川氾濫、土砂崩れなど、災害リスクは地域によって異なるだけでなく、個人や世帯の事情によっても変わる。そのため、まず県内モデル地区8カ所でワークショップを実施し、住民や市町の意見を踏まえて避難計画の雛形を作成。地域の災害リスクに合わせて作成でき、誰もが記入しやすい様式にした。これにより “簡単・ローカル・パーソナル”な避難計画を立てることができるようになった。防災を“自分ごと”に落とし込むための静岡ならではの取り組みだ。

「静岡県地震・津波対策アクションプログラム(AP)2023」では、自主防災組織の活性化などソフト面の対策も充実させていくことで、想定犠牲者数約9割減を目標としている。

「わたしの避難計画」普及活動推進中

2023年11月2日、静岡市清水区横砂地区の横砂自治会館にて、県による防災講座を開催。この地区周辺は、2022年9月の台風15号の豪雨で350戸以上が浸水などの被害を受けている。集まった40人弱の住民に対して、県静岡土木事務所職員によるハザードマップでの災害リスクの把握方法、避難行動のきっかけ(トリガー)についての説明が行われた。
次に、「わたしの避難計画」をその場で実際に作成するワークショップへと続き、県危機政策課などの職員が参加者の間を回って避難計画作りを個別にサポートした。
県はこの取り組みの認知度向上を図るとともに、「わたしの避難計画」の全戸配布を進めている。また、今後は「わたひな普及員」を養成し、地域住民主体の防災体制づくりを支援していく。

防災講座の様子

命を守る第一歩 “わたしの避難計画(通称わたひな)”

各市町のハザードマップを活用して住民一人一人がそれぞれの「災害リスク」を理解し、避難のタイミングと避難先を考え、書き込むことで完成する。早期避難意識を向上させる本県独自の取り組み。
各居住地域の災害リスクに合わせて避難計画を容易に作成できるよう工夫を凝らした。

わたしの避難計画作成サイト

沼津市第三地区版(A4サイズ)

「わたしの避難計画」作り方

はじめに
①避難に時間がかかる人が家族内にいるか確認

河川氾濫・土砂災害
②洪水・土砂ハザードマップで大雨時の自宅や職場周辺などの災害リスクを確認
③避難先、避難のタイミング、情報収集手段を確認

地震・津波
④津波ハザードマップで地震時の自宅や職場周辺などの災害リスクを確認
⑤大地震発生時の安否確認方法や、津波の到達時間、緊急避難先を確認
(※市町によって、手順は若干異なる)

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