フカボリ
捨てるなんてもったいない!
素材本来の味を生かしたジェラート店 「おりじなる・すまいる」の取り組み
2024年8月30日
みなさんこんにちは。メディチャン学生特派員の大石です。私は、小中高校と、社会の授業で環境問題やSDGsについて習ったことがきっかけで、自分にも出来ることはないかと考えるようになりました。偶然、テレビで「おりじなる・すまいる」さんの特集を見て、ジェラートで野菜や果物といった食品ロス削減に取り組んでいることを知り、興味を持ちました。今回は「おりじなる・すまいる」の安本昌隆さん、安本美帆さんにお店づくりにかける思いをお聞きしました。
目次
1.オープンしたきっかけ
―おりじなる・すまいるをオープンしたきっかけを教えてください。
安本美帆さん
まず、ここを始めたきっかけはSDGsを意識していたわけではなかったんです。私の主人は3代続く八百屋の家系で、流通センターの方に卸専門のお店があって、例えば学校とか病院とかホテル、レストラン、スーパーに青果を卸しています。
その中で全国各地から集まってくる野菜やフルーツを取り扱うのですが、1日何トンもの仕入れの中で、やはり熟れすぎてしまったものは、スーパーに渡すことが出来ないんです。
バナナは茶色い点がプツプツ出てると美味しいって言われるけれど、その時点で卸が出来ない状態になってしまう。1番美味しいものが捨てられてしまうなんて、「なんてもったいないんだろう」ということから始まったのが、このお店なんです。
例えば、1日150kgの野菜が届くとしても、1箱10キロですが、だいたい40本入っていて、その1本2本がスーパーなどで求められる規格よりも大きかったり小さかったりすると、出荷ができず廃棄せざるを得ませんでした。
スイカやメロンといったフルーツも規格の箱に入らないだけで規格外なんですよ。
廃棄するだけでも、お金がかかってしまうんですよね。そういった問題を打開したいなと思いました。何か形を変えて、提供できるものがないかということで、ジェラートを始めました。
―どうしてジェラート店をやろうと思ったのですか。
お店を始めたのは、2022年の7月30日。ちょうど1年ほど前に、主人が「ジェラート店やりたいんだよね」と言いだしたのがきっかけです。
私は子どもを出産する前は別の会社で正社員として仕事をしていました。
やはり子どもを持つことで、家庭と両立しなければならないということで……女性も活躍する社会になってきて、一緒に仕事をしたいという思いもあって。主人と一緒に青果の世界に入るなんて思っていませんでした。
「廃棄野菜などをなんとかしたい」ということで、ジャムなどいろいろと考えてみたのですが、やはり万人受けするのはジェラートかなっていうことで。アイスは、お子様からお年寄りまで食べられるし、嫌いな人はいらっしゃらないと思います。たまたま主人の友人にジェラート職人さんがいて、思いや構想を相談したところ、「それだったら自分で売ってみたら」と言われたのがきっかけです。
初めは、店舗を構えずに試作したものを卸して、先方で取り扱ってもらうということから始めました。それから1年ほどがたち、このお店をオープンしました。もうすぐ2周年になります。
2.名前に込められた思い
―名前に込められた思いについて、教えてください。
祖父に試作したアイスを食べてもらったんですが、その時のあの、くしゃっとした笑顔。
笑顔って一人一人違うと思うんですよね。その笑顔を引き出したくって。
野菜も色々な色がありますし、笑顔もそれぞれ違うということで、みんなそれぞれの笑顔を引き出したいという思いと、色々な野菜の良さを知っていただきたいという願いから、『おりじなる・すまいる』という名前を付けました。
―周りの反応はどうでしたか。
地元の方がリピーターとして来てくださって、お客様の口コミで広がっているようなお店になります。この間の輪くぐりさんのお祭り(静岡浅間大社の夏越大祓式・大茅の輪くぐり神事に併せて開催された静岡浅間通り商店街のお祭り)でも、若いお客さん二人がすごくうれしそうに来てくれたんですよ。ちょっとずつですけど、広がっていくのがうれしいです。
また、『mydo』という情報誌にお店の情報を掲載しているのですが、それがきっかけで東京ガールズコレクションにシャンソン化粧品さんとコラボして出店させてもらいました。
―連携事業について詳しく教えてください。
シャンソン化粧品さんの商品と「おりじなる・すまいる」の野菜をかけ合わせたジェラートを作りました。例えば、青汁とイチゴをかけ合わせたら、抹茶のようなジェラートが出来る。ピュアベリーというサプリとヨーグルトをかけ合わせてブルーベリーみたいな感じのジェラートとか。すごく好評をいただきました。
情報誌はいつも葵区しか出していないんですよ。たまたま駿河区版に出したときがあって、それを見た担当者さんにお声がけいただきました。SDGsのお店を探していたようです。
駿河区版に掲載していなかったら、お声はかからなかったかもしれません。偶然の必然性みたいなものです。
また、6月には、田丸屋本店さんとコラボして、わさび漬けのジェラートをやらせてもらったり、甘酒のフレーバーを出していたりしました。
―規格外の野菜や果物、食材を使用する時のポイント、こだわりはありますか。
安本昌隆さん
こだわりは季節です。季節を1番重要視していて、そこを意識しながら、安全にこだわってやっています。
3.おすすめのメニュー
―おすすめのメニューはありますか。
安本昌隆さん
1番最初に作った煎茶あきひめにすごく思い入れがあります。藤田農園さんと一緒に作ったものになります。たまたまお茶とイチゴを作っていて。「混ぜよう」という一言から始まったんですけど、そうしたら今まで食べたことのないジェラートになって。
「牧之原夢コンテスト」では、最優秀賞を取ることができました。ダメもとで作ったら、本当に食べたことのない食感でした。
安本美帆さん
クリームに「栗」をかけて、ベイクドチーズを使った「栗~むチーズ」です。女性に人気でした。
「煎茶あきひめ」は最初は煎茶の香りが広がり、後からほんのりといちごの甘みが出てきます。煎茶の渋みと旨味とあきひめとの相性、抜群です!
「栗~むチーズ」は栗の甘いとろけるような味と、チーズのバランスの良いハーモニーが楽しめます。とても濃厚なジェラートでした。
―ふじのくにSDGs認証制度に取り組もうと思ったきっかけを教えてください。
安本昌隆さん
銀行の方から「しずおか女子きらっ☆プロジェクト」を紹介していただいたことがきっかけです。それから色々な巡りあわせがあって。昨年度、ふじのくにSDGs認証制度が新設されたこともあり、応募してもよいかな、と思いました。
「しずおか女子きらっ☆プロジェクト」とは、静岡市で働く女性・働きたい女性を応援するプロジェクトです。静岡市では、女性がこの町に住み続けられるよう、女性が活躍できる魅力あるまちづくりを目指しているそうです。
―これからの目標ってありますか。
安本昌隆さん
ここの通りを本当に元気にしたい。ここにお店を構えたのは、高校生の頃、よく通っていて、静岡浅間大社への玄関口であるこの商店街が、地域の人にも愛され、多くの人が訪れて、そして地域の活性化につなげていきたいと思っているからです。私たちだけではなく、ここで新しいお店がどんどん開いてもらえるようにやっていきたいなって思っています。
ここは、静岡の歴史が詰まっている通りでもあるし、静岡浅間大社もあります。
地元の人も来たことがない人もいると思うので、ここから発信して人が集まる場所を作っていきたいです。そして、地域再生の力になりたいです。
取材を終えて
この取材を通して「おりじなる・すまいる」さんでは、食品ロス削減だけでなく、働く女性を応援していたり、まちづくりを応援していたりと、さまざまなSDGsの取り組みを行っていることがわかりました。
一番印象に残っていることは、安本さんたちが人との「出会い」を大切にしているということでした。「ご縁を大切にし、幸せをつなげ、伝えていく」ことは、今の自分にとても大切であると感じました。一つの出会いが人生を変えることもあります。出会いは不思議な偶然の重なりと思ってしまうこともありますが、恵まれた縁をつかめるかどうかは自分次第なのではないかと考えています。私も日々の生活において、感謝の気持ちを持って大学生活を送っていきたいです。
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