県政TOPICS 総合情報誌ふじのくに
交通空白の解消に向けた公共ライドシェア ~静岡県への期待~
2024(令和6)年10月
ライドシェアの全国的な動きや、静岡県の取り組みで期待することなどについて、(一社)全国自治体ライドシェア連絡協議会の共同代表である樋渡 啓祐氏に寄稿していただいた。
「康友さん、菅前総理から、ライドシェアの取りまとめをお願いされました。」 「自分も市長時代、浜松市の天竜地区でいわゆるライドシェアをやっていたので、共に頑張ろう。」と電話で会話したのが、昨年(2023年)8月。菅前総理からの電話の直後、鈴木康友前浜松市長に電話を入れた。
康友さんとは、私が武雄市長時代から交流があり、武雄市図書館のオープン時にはわざわざ駆けつけていただいた。他にもさまざまな場面でご一緒したが、特筆すべきは、現在330人を超す知事・市区町村長から成る「活力ある地方を創る首長の会」(以下「首長の会」という)である。康友さんは初代会長として辣腕(らつわん)を振るわれ(当時、私は事務局長)、新型コロナのワクチン政策など国に対して多大な影響力を与えてきた。その姿が強く焼き付いており、このライドシェア問題に当たっても、ぜひ康友さんにメインエンジンになってほしいと考えた。
「政策を掲げる前に、まず、首長の会でアンケートを行おう。」
昨年9月に「地域公共交通・ライドシェア」緊急首長アンケートを実施したところ、地域公共交通に関して、なんと、「95%が不満」という恐るべき数字がたたき出された。
地域公共交通・ライドシェア 緊急首長アンケート(全国知事・市区町村⻑ 119⼈回答)
「活⼒ある地⽅を創る⾸⻑の会」
実施期間2023年9⽉3⽇〜9⽇ 内閣府資料より引用
この数字には国土交通省も衝撃を受けたようで、国土交通省と首長の会が連携を深めるきっかけとなった。このような流れの中から、今年4月、康友さんが代表理事を務める一般社団法人全国自治体ライドシェア連絡協議会(全自連)が誕生。私は、全自連の事務局長を仰せつかり、国土交通省と共に制度設計を図ることにまい進していた矢先、康友さんが静岡県知事選挙に出馬。そして、後任の代表理事を急きょ私が仰せつかることに(苦笑)。
知事に就任された直後から、メディアはもとより、私にも、「静岡県はライドシェアをしっかりやるから、全自連はそのサポートを頼む。」と言われている。知事には改めて全自連の顧問に就任していただき、直近では、知事と私とで、国に対する公共ライドシェアなど地域交通に係る緊急要望として、今年8月に国土交通省物流・自動車局長などに行ったところ、前向きな回答をいただいた。
今後は、静岡県において、鈴木知事のリーダーシップの下、県内市町との連携を図りながら、わが国の公共ライドシェアにおけるロールモデルとなっていただくことを心より祈念する。
具体的には、公共ライドシェアにおけるブランドが、全国の自治体によってバラバラとなっては困るので、その統一ブランドとなるi-Chanを創設した。
今年3月22日、石川県小松市において、「小松市ライドシェアi-Chan(あいちゃん)」の本格運行を開始し、能登半島地震の二次避難者、小松市民、そして小松市を訪れる人々の移動の利便性の向上となり、好評を得ている。今後、i-Chanが全国的に広がるきっかけをぜひ、静岡県でつくってほしいと思っている。
県民の皆さまには、全自連の総力を挙げてご支援することをお約束し、この稿を閉じることとする。
樋渡 啓祐 氏
(一社)全国自治体ライドシェア連絡協議会共同代表、前武雄市長
佐賀県武雄市出身。総務庁(現総務省)を経て、2006年武雄市長に就任。市民病院の民間移譲、年間来館者数100万人を超す武雄市図書館を実現し、各メディアから「わずか人口5万人の武雄市を一躍全国区に押し上げた」と評価される。現在、まちづくりの株式会社である樋渡社中代表を務める一方で、大学客員教授、テレビコメンテーター、講演活動、地方創生に関する企画などを行っている。
静岡県におけるライドシェア
県は交通空白の解消を目的として、都道府県として初めて、今年7月(一社)全国自治体ライドシェア連絡協議会に加入。
9月11日には、ライドシェア専門部会を立ち上げた。初会合で、鈴木知事は「住民同士が支え合う共助型交通」の重要性について語り、県としてライドシェアの取り組む市町を全力で支援していくと挨拶した。
ライドシェアに取り組む背景
県の取り組み
県内自治体向けの説明会の実施
・県地域公共交通活性化協議会(6月18日)や市町および交通事業者向けの説明会(7月30日)を開催し、公共ライドシェアに関する最新情報を共有。
・7月30日実施の説明会では、県内35市町中29市町の担当者が参加。
専門部会の設立
・9月11日に県地域公共交通活性化協議会の下に、静岡運輸支局、県内35市町、県タクシー協会、県バス協会および県で構成する「ライドシェア専門部会」を設置。
・元国土交通事務次官による全国の導入事例や規制緩和の動きに関する講演会を実施。
・市町に対し、情報提供や人的支援などを行うことで公共ライドシェアなどを県内全域に展開することにより、地域交通の最適化を図り、交通空白の解消を目指す。