しあわせに暮らせる地域づくり 総合情報誌ふじのくに

リーダーは若者! 官民連携で巻き返しを狙う 「しぞ~か茶魅力発信プロジェクト」

2025(令和7)年1月

「山は富士 お茶は静岡 日本一」という標語が生まれるほど、静岡県は全国有数の茶産地だ。
しかし、ペットボトル茶の登場以降、リーフ茶の需要は低迷の一途をたどり、茶業を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。

若者を中心にお茶離れが進む中、若者による新たな視点でお茶の魅力を発信し消費拡大を狙う、官民連携の新プロジェクトが始動した。その取り組みを紹介する。

お茶の輸出に向けて需要に応じた生産構造へ転換

2023年の本県の茶産出額は223億円で、20年前の約3分の1にまで減少した。特に荒茶単価の低下が深刻で、生産者の廃業も続いている。一方で、海外での茶文化の関心や世界的な健康志向の高まりから、栄養素が多くさまざまな飲み物や料理などにアレンジしやすい抹茶や、化学肥料や化学農薬を使用せずに栽培した有機茶の需要が増加し、輸出額は年々右肩上がりである。ただ、輸出に活路を見いだしたくても、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)を生産する農家が少なく、有機茶として販売するために必要な「有機JAS認証」の取得も高いハードルとなって、需要に対して供給が追い付いていない現状だ。

これまで県はお茶の魅力を伝えるさまざまな取り組みを進めている。

今、特に推進しているのが、静岡茶の輸出拡大に向けた碾茶(てんちゃ)や有機茶の栽培拡大支援など、需要に応じた生産構造への転換だ。県の主要品種である「やぶきた」から、碾茶(てんちゃ)や有機茶に適した「つゆひかり」への改植支援もその一つ。静岡茶の技術力と誇りは、数々の困難を打破しながら進化し続けている。

若者の茶離れを、若者が食い止める

本県の茶業がさらに発展するために必要な視点とは何か―。

まず重要なのは、お茶の魅力を発信する広報力だ。2023年4月、県は(株)静岡第一テレビと静岡県JAグループの3者で連携協定を締結した。目的は、互いの資源を有効に活用しながら、静岡茶の魅力を発信し、本県茶業の振興を図ることだ。この連携に基づく事業を実施する組織として、「しぞ~か茶魅力発信プロジェクト」を発足。お茶離れが進む若者世代に若者目線でお茶の魅力を発信することで、国内外で静岡茶のファンを増やすことを目指していく。

プロジェクトの具体化を図るため、3者から選出された若手メンバー約20人から成る、4チームを結成。勉強会や県内茶関連施設の視察・体験を行い知見を深めつつ、「お茶×α」をテーマにチーム別に事業を検討した。結果、❶お茶×サブスク「ちゃブスク」、❷お茶×サウナ「しずおか“CHA”UNA」、❸お茶×ガチャガチャ「茶ガチャ」、❹お茶×アニメ「Tea’s★party!!」の4事業がスタート。若者世代がお茶に親しみ、その子や孫へと受け継がれる「生活習慣」や「文化」を築くことを見据えた企画となっている。

「お茶離れ」が進む原因や有効なアプローチ方法などを話し合い4つの事業を決めた

お茶を楽しみ、しあわせに暮らせる地域づくりへ

これら「しぞ~か茶魅力発信プロジェクト」だけでなく、アイデアのある企業や団体、お茶生産者など多様に連携し、他の事業も立ち上げながら消費拡大に取り組む。

昨年12月には、外部有識者や次世代を担う若手茶業者が中心となって、「静岡茶リブランディングプロジェクト」が新たに始動した。

この取り組みを通じて、世界に通用する静岡茶の統一ブランドの形成を目指し、静岡茶ブランドの定義や生産力強化・マーケティングの戦略等を構築していく。

本県には、既存の「お茶」の枠にとらわれず、自由な発想でお茶の新たな価値を創り出す若者たちがいる。官も民も関係なく知恵を出し合い、「現代のお茶」を楽しむことで静岡茶の未来を切り開いていく。

プロジェクトで取り組む4事業

【お茶×サブスク】ちゃブスク

「家に急須がない若者が増えている」という背景から、お茶を飲む機会を定期的に提供する

LINEを活用したお茶のサブスクリプションサービス。県内の茶販売店やカフェなどの加盟店で静岡茶の割引や給茶といったサービスを提供。プランは選べる2タイプ
❶月額1,100円で500円程度のサービス(月3回) 
❷月額2,200円で500円程度のサービス(制限なし)

利用者の声

友達に勧められて登録した。普段お茶を飲む機会がなかったが、お茶のおいしさ、奥深さを知ることができた。

今後の展開

将来的にはティーバッグの定期発送へシフトし、日常的に家でお茶を楽しんでもらう

【ちゃブスク加盟店インタビュー】お茶を愛用してもらえるよう、プロジェクトに期待!

当施設では、「KADODE OOIGAWA茶寮」でおしることお茶のセット、「緑茶B.I.Y.スタンド」でお茶の入れ方体験をちゃブスクとして提供しています。ちゃブスクで新しいお客さまが増え、当施設のことが広まっているという手応えを感じています。さらに、お茶をあまり飲まない人も引き込み、お茶を飲むことを習慣化してもらえるよう、プロジェクトに期待しています。

KADODE OOIGAWA
お茶マルシェ部マネージャー
太田昂甫(こうすけ)さん

【お茶×サウナ】しずおか“CHA”UNA

「静岡茶になじみのない人たち」に、静岡茶の新しい楽しみ方を提案する

県内温浴施設とコラボして静岡流サウナイベントを開催。お茶を使ったオリジナルのサウナドリンクやサウナ飯、お茶ロウリュウや水出し茶風呂などを提供する

玉露のうま味が凝縮されたサウナ飯「しぞ~かCHAづけ」。全て静岡産食材。
利用者の声

お茶ロウリュウはずっといい香りがするので、長くサウナの中にいられる感じがする。

今後の展開

「CHAUNAウィーク」を県内10店舗ほどのサウナ店で一斉開催。静岡県では、静岡茶を取り入れた独自のサウナが楽しめることを周知する

【お茶×ガチャガチャ】茶ガチャ

「普段お茶を飲まない人たち」に、ガチャを楽しむことでお茶を飲むきっかけにつなげる

煎茶・和紅茶・苦みが強い苦丁茶(くうていちゃ)の3種類が入ったガチャを、お茶版ロシアンルーレットとして販売する

「全国お茶まつり」出展で茶ガチャをする知事
利用者の声

見たことがない企画で面白い。友達と一緒だと盛り上がる。

今後の展開

高速道路SAや土産店舗などに設置する他、イベントにも出展し、観光客に向けて静岡茶を広くPRする

【お茶×アニメ】Tea’s★party!!

「アニメを通じて静岡茶の魅力を発信」し、ファンを拡大する

地元のアニメーターや声優との協働で、ショートアニメや静岡生まれの茶品種「つゆひかり」を擬人化したVtuber 露島ひかりを制作。静岡茶イベントやSNSなどで発信している

しぞ~か茶魅力発信プロジェクト

公式アンバサダー露島ひかりが、プロジェクトやお茶の豆知識を紹介
詳しくはこちらから(YouTubeへ)

全国お茶まつり
利用者の声

アニメを見ているだけで自然とお茶の豆知識が得られるから、お茶のことをよく知らない人に見てほしい。お茶の豆知識をもっと知りたくなった。

今後の展開

❶ショートアニメの英語版を作成し、インバウンドツアーで訪れる観光地などで流すことで、ア ニメとツーリズムをつなげる
❷海外でアニメの映像権を販売し、その収益をお茶生産の経費に運用する

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