フカボリ
夜の博物館で見る新しい発見~ナイトミュージアムの魅力~
2025年9月24日
みなさん、こんにちは!メディチャン学生特派員の高塚です。
夜の博物館に一歩足を踏み入れると、昼間とはまったく違う世界が広がっています。暗闇に包まれた展示室にライトが当たり、標本や展示物が幻想的に浮かび上がる――まるで探検に出かけているようなわくわく感を味わえるのが「ナイトミュージアム」です。
今回は、ふじのくに地球環境史ミュージアムで行われた特別な夜の体験を、みなさんにご紹介します。
目次
1. ふじのくに地球環境史ミュージアムとは
2. ナイトミュージアムを体験!
3.職員の方が語る、ナイトミュージアムの魅力
4.秋のナイトミュージアムについて
5.取材を終えて
1. ふじのくに地球環境史ミュージアムとは
静岡市駿河区の丘陵地に位置する「ふじのくに地球環境史ミュージアム」は、2016年に開館した県立の自然史・環境史ミュージアムです。かつて県立静岡南高校だった校舎を再利用し、教室や廊下を展示空間として活用しているのが最大の特徴です。かつて学びの場だった場所が、新しい形の“学びの空間”として生まれ変わっており、どこか懐かしさを感じる一方で、新鮮な驚きに満ちています。
「地球環境史」というテーマが示すように、地球の自然環境と人類の歴史的な関わりを振り返りながら、これからの暮らしや環境をどう守り、築いていくかを考えることが目的とされています。単に展示を見るだけでなく、「今と未来の自分たちの生活」につながる問いを投げかけてくれる場所でもあります。
常設展では、生物多様性や地質の成り立ち、地域の自然の変遷などをテーマに展示が並びます。最大の特徴は、学校の雰囲気を残した「教室を活用した展示」です。教室の机や椅子をそのまま利用して標本や資料が並べられており、まるで「自然を学ぶ授業」に参加しているかのような気分になります。


展示室はテーマごとに分かれていますが、その番号にも工夫が凝らされています。
たとえば展示室3は「潜考」をテーマに、数字の「3」が水中へ潜り込むようなデザインで表され、深く考える姿を象徴しています。展示室4は「連鎖」をテーマに、数字の「4」が連なっているかのようなデザインによって、生態系や自然のつながりを感じさせます。さらに展示室5では「均衡」を表現し、傾いた数字の「5」がデザインされ、人と自然の関係のバランスを表しています。単なる部屋番号にとどまらず、数字自体が展示テーマを伝える役割を果たしている点も、このミュージアムならではの魅力といえます。
さまざまなテーマを取り上げた特別展や企画展も人気です。子ども向けには体験型ワークショップや観察会、大人向けには専門的な講座やトークイベントが開催され、幅広い世代が楽しめる内容になっています。
私が訪れた際には企画展「標本サファリ」が開催されていました。クジラの骨やホッキョクグマの剥製など、圧倒的な存在感を放つ展示物が並び、思わず息をのむほどでした。会場にはクイズボードも設置されており、標本や解説をよく読んで答えを探します。3問以上正解すると「ライセンスカード」がもらえ、子どもたちはもちろん大人も夢中になって挑戦していました。楽しみながら知識が増える仕掛けに、「学び」と「遊び」が絶妙に組み合わされていると感じました。


2. ナイトミュージアムを体験!
普段は夕方に閉館するミュージアムを、特別に夜間に開放する「ナイトミュージアム」。夜の暗さと照明演出により、昼間とは全く異なる幻想的な雰囲気に包まれます。
今回、研究員の方が案内してくれる「夜のバックヤードツアー」に参加しました。ミュージアムには100万点以上の自然史標本が収蔵されていますが、その多くは普段一般公開されていません。夜のツアーでは、特別にその収蔵室に足を踏み入れることができました。
最初に案内されたのは鉱物の部屋。石灰岩やルビー、琥珀などが並び、紫外線ライトを当てると鮮やかな光を放ち、まるで別の宝石に変身したかのように見えました。その神秘的な美しさに、参加者全員が見入っていました。

続いて昆虫標本の収蔵室へ。無数のトンボやチョウ、テントウムシの標本が整然と並ぶ光景は圧巻でした。

さらに剥製の収蔵室へ進むと、シカやタヌキなど多様な動物たちの姿が現れました。普段の展示では見ることができない剥製たちが数多く並べられ、夜に見るからか不思議と昼間に見るよりも一層迫力が増し、動物たちが今にも動き出しそうな錯覚を覚えました。


ほかにも、館内では特別展示として、ユウレイイカの標本が公開されていました。その不思議な姿はまさに夜にふさわしい存在感です。
さらに中庭では「光る植物」に関する解説が行われました。例えばバナナの実は熟すと黄色くなり、さらに熟すと黒い点が浮かびます。この黒い点は「シュガースポット」と呼ばれ、甘くなったサインとして知られています。ここでブラックライトを当てると、シュガースポットの周囲が蛍光を発して光り出します。普段身近にあるバナナが、光を放つ植物として姿を変える様子はとても新鮮で、自然界の奥深さを実感できる瞬間でした。幻想的にライトアップされた中庭と相まって、昼間の展示とはまったく違う世界に引き込まれました。さらにサンショウウオの展示もあり、普段なかなか目にすることができない生物の生態を間近に知ることができました。

見学のあとは「図鑑カフェ」でひと休み。通常のカフェも人気ですが、ナイトミュージアム期間は特別仕様に変わります。テーブルには貝殻のランプが置かれ、柔らかな光に包まれた空間はとても落ち着いた雰囲気でした。さらに、夜限定の特別メニューも用意され、展示を楽しんだ余韻のまま味わうことができました。



3.職員の方が語る、ナイトミュージアムの魅力
-ナイトミュージアムを始めた目的について教えてください。
夜の時間を有効に使ってほしいということと、あとは普段は入館が午後5時までなので、なかなか働いている人がミュージアムに行くっていうのが難しいんですよね。だから、そういった働いている人たちにもミュージアムを楽しんでもらえるように、ナイトミュージアムを始めました。
-昼の通常開館と比べて、どんな点が特徴ですか?
廊下や中庭など全体的に明かりを落としていて、その分ランプライトを使って照明しているのが特徴ですね。なので、昼間によく来ている人も、また違った雰囲気の展示を楽しんでもらえるのではないかなと思います。
-このイベントを通じて、来場の方にどんなことを感じてほしいですか?
普段なかなか来ることができない人が、来るきっかけにしてほしいと思っています。当館に来たことがない、知らないという方もいらっしゃるので、ナイトミュージアムを通して、まずはこの施設に興味を持ってもらいたい、そういう思いがあります。
-これから初めて来る方へのメッセージをお願いします!
意外と知っているようで知らない静岡を、もっと知ってほしいと思っています。県外や海外から来られた方には、ご自身の地元と比較してほしいです。それから、ふじのくに地球環境史ミュージアムのコンセプトに「百年後の静岡が豊かであるために」というものがあるように、今現在のことだけじゃなく、未来のことにも思いを巡らせてもらえるようになってほしいと思います。
4.秋のナイトミュージアムについて
本日は「夏のナイトミュージアム」でしたが、今年は秋にも新たなナイトミュージアムが予定されています。秋のプログラムでは、今回好評だったバックヤードツアーに加え、ブラックライトを使った体験や、身近な「蛍光ペン」に隠された科学的な秘密を学べる企画など、さらにバラエティ豊かな内容が用意されています。
さらに今回は、大人限定の特別イベントもスタート。大井川の源流部、標高1,200メートルの南アルプスに抱かれた井川蒸溜所を迎え、トークショーとウイスキーの試飲会が行われます。昼間とは異なる静けさの中で、展示や体験を楽しみながら、知識と感性を深める貴重な時間となりそうです。
(詳しくはこちら)令和7年度秋のナイトミュージアム詳細・webによる申込み(9/11(木)~受付)
5.取材を終えて
今回の取材を通して「ふじのくに地球環境史ミュージアム」は、自然と人間の関わりを身近に学び、考えるきっかけを与えてくれる場所だと実感しました。昼間は学校のような懐かしい展示空間で自然史を学び、夜はナイトミュージアムで幻想的な世界に浸る――同じ場所でも時間や企画によってまったく異なる体験ができます。静岡の自然や地球環境に興味のある人はもちろん、家族や友人と楽しく学びたい人にもおすすめです。一度訪れたら、また違う季節やイベントのときに再訪したくなる魅力にあふれています。ぜひ、みなさんもナイトミュージアムに足を運び、昼間とはひと味違う展示の魅力を体感してみてください。
-施設情報-
ふじのくに地球環境史ミュージアム
〒422-8017 静岡県静岡市駿河区大谷5762
電話:054-260-7111
開館時間 10:00~17:30(最終入館17:00)
休館日 毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は次の平日)、年末年始
常設展観覧料
・一般(個人):300円
・一般(団体):200円(20人以上)
・大学生以下・70歳以上・障害者手帳等をお持ちの方:無料
※一部(展示室1、展示室2、図鑑カフェ、キッズルーム)は無料でご利用いただけます。
(ホームページ)https://www.fujimu100.jp/