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支援機器の進歩が視覚に障害のある方の生活を変える!―静岡県視覚障害者支援センターのICTサポートに迫るー
2026年7月1日
こんにちは!学生特派員の安野です。
突然ですが、皆さんは視覚に障害のある方が普段どのように生活を送っているか知っていますか?
私は今回、県内にお住まいの視覚に障害のある方やそのご家族などに対してさまざまな支援を行っている静岡県視覚障害者情報支援センターの土居さんと横山さんを訪問し、センターの役割や取り組み、点訳や音訳、ICTを活用した支援、そして今後の展望について、たくさんのお話を聞くことができました。
この記事を通して、静岡県視覚障害者情報支援センターについて少しでも知っていただけたらうれしいです。
目次
1.静岡県視覚障害者情報支援センターってどんなところ?
2.どのようなサポートを行っているの?
3.支援機器の発展に伴って広がる可能性
4.スタッフの方々の思い
5.まとめ
1.静岡県視覚障害者情報支援センターってどんなところ?
-静岡県視覚障害者情報支援センターの設立背景や目的について教えてください。
点字図書館とは言うものの、実は、1990年頃から音声の図書の貸し出しが圧倒的に多いです。「目が悪い、見えない」というと、点字や白杖に結びつくイメージがありませんか?たしかに、多くの視覚に障害のある方にとって「点字」という言葉自体に重みがあることから、「点字図書館」という名称を変えずに来たという一面がありました。
15年ほど前からは、もう一つの施設である「静岡県視覚障害支援センター」を併設して業務を行っていましたが、視覚に障害のある方の各種相談の内容に共通点が見られたことや、業務連携による対応向上を目指すため、2015年に「静岡県視覚障害者情報支援センター」として組織を一体化し、現在に至っています。
センターでは、視覚に障害のある方への生活全般に関する相談対応、各種情報へのアクセス支援などを、包括的に行っています。
また、必要に応じて、他の専門機関に繋ぐのも私たちの役割です。

-どのような方々が利用されていますか?
身体障害者手帳を所有している視覚障害者だけでなく、手帳はないものの、見えない・見えにくいことで困っている方々も利用されています。
点訳・音訳図書を借りるには手帳を確認した上で利用登録が必要ですが、その他の相談や体験、イベントへの参加は、見えにくい方やそのご家族なども利用いただけます。「目が少し見えにくくなってきたので…」と、お気軽にお立ち寄りいただくのも、大丈夫です。
具体的には、加齢や病気などで見えにくくなった50代以降の方々が相談に来られることが多いですが、もちろん若い方方々を含む全世代、あるいは「支援者」として関わっている方、これから関わりたい方など、どんな方にも対応しています。
現在、センターに利用登録している方は1,100人程度です。一方、県内には手帳を持っている人が7,500人程度いらっしゃいますので、必要とされている方により多く利用いただきたいと考えています。
-実際にどのような相談が寄せられていますか?
視覚障害者の困りごとは、大きく分けると3つあります。
まず一つは「移動」です。
例えば、交通量の多い大通りだと横断するのが怖いと思います。視覚に障害がなければ、横断歩道の場所が分かったり、その他の情報を得て、問題なく渡ることができますが、視覚に障害のある方の場合、そういった判断が難しいです。
2つ目は「情報を得る」という問題です。
例えば、外を歩く場合、周囲の音しか手掛かりがありません。目が見える人であれば、目で見て、「足元ガタガタしているな」「ここは意外と綺麗だな、歩きやすそうだな」などが分かりますが、見えない方たちにとっては、目で見て得られる情報がありません。
3つ目は「コミュニケーション」です。
視覚に障害のある方は、例えば知り合い同士で会釈したり、顔を見合わせるなどということが、できないに等しいです。遠くから声をかけられても、それが自分に対する者かどうか、判断がつきません。そういったことから、コミュニケーションをとることも、場合によっては難しいのです。
具体的には情報機器のご相談としてスマートフォンやパソコン、タブレット、さらに「センスプレイヤー」や「プレクストーク」といった専用機器の操作方法が分からず、教えてほしいというもの。特に、センスプレイヤーやプレクストークは専用機器なので、周りの人に聞いても分からないため、センターでのサポートが必要になっています。
また「読書器」といって活字を拡大したり、その活字を解析して音声で読み上げる機器について「どのようなものか知りたい」「体験してみたい」というご相談も多く寄せられます。
その他「体重計や白杖、こういった機器がどこで手に入るのか」「点字が読めるようになった方がいいのか」といったこともご相談内容としては多いです。
2.どのようなサポートを行っているの?
―スタッフの方々の構成やサポート体制について教えてください!
職員は非常勤やアルバイト含めて9名で、センター長と代理の他、3つの班に分かれて支援を行っています。
<貸し出しサービス班>
図書の貸し出しや利用者登録者の管理、読書相談などを行っている。
<メディア制作班>
点訳・音訳図書を作ることと作る人を育てることの両方を行っている。
図書製作では、センターで選書する蔵書以外にも、利用者から来たリクエストに対応している。
<生活サポート班>
相談対応やICT関連のサポートなど幅広い支援の他、スキルアップ(訓練)の窓口として、さまざまな相談に対応する体制を担う。
―班体制でさまざまな専門的サポートを行っているのですね。このうち、点字・点訳図書についてはどのような体制で制作しているのでしょうか。
文字を点字や音声にすることを「点訳」「音訳」と言います。
点訳や音訳にはさまざまな技術やスキルが必要になります。点字にするにあたって漢字かな交じり文を読みやすく、あるいは間違いなく伝えるための工夫が必要になります。その一つが、文章の適切な区切りです。点訳では「マスあけ」と呼ばれる方法を用いて語句や文節の間にスペースを入れます。
例えば…「私は学校へ行きます」
これを点訳するときは「私は 学校へ 行きます」と区切って表します。
もし「私は学校へ行きます」のように全てを続けて書いてしまうと、文章が長くなるにつれ読み取りにくくなってしまいます。
そのため、点訳では文章の意味や構造を考えながら、「分かち書き(どこで区切れば読みやすくなるのか)」を適切に判断しています。
点訳者は、このような点訳のルールを学び、文章の意味に応じた区切りを判断します。中には記号や図、写真などのグラフィックが多く含まれる資料もあるため、どのように説明すれば、利用者に伝えられるのかを勉強して点訳をしています。
音訳も同様に、利用者が理解しやすいように伝えるためにはどうすればいいかを学び、技術やスキルを身につけています。
そのため、簡単に「ちょっとやってみようか」という気持ちだけでは難しく、少し勉強していただく必要があります。センターではメディア製作班が丁寧にサポートしています。
―点訳や音訳を用いたサポートの仕組みと実際の利用例について教えてください。
会議資料などは、点字になっていないと確認が難しい場合があります。音声で資料を利用する人もいますが、その場で必要な情報を素早く確認するという場合には、点字になっている資料の方が使い勝手がいいです。音声を使う場面と点字を使う場面はさまざま考えられますが、必ずしも一緒ではありません。
もちろん、全ての人が点字を読めるわけでありません。点字を利用する人もいれば、音声で情報を得る人もいます。例えば、行政からのお知らせなどは、点字と音声の両方で提供することが望まれます。
特に、選挙公報では、候補者名や政策を正確に知ることが重要です。点字で自分のペースで正確に確認したい人もいらっしゃいますし、音声での提供を望まれる方もいらっしゃいます。こうした情報は、文字による資料だけを配布して十分というものではありません。自分が投票する人の名前やどのようなことを主張しているのかを自分の指や耳で確認できる環境が必要です。
また、街中の点字や音声も重要な役割を果たしています。例えば、駅では階段の手すりの両端に点字による案内で、何番ホームへ向かう階段なのかを確認できます。
このように、点訳や音訳は単に情報を伝えるための手段ではなく、利用者が自分で情報を確認し、自分で判断して行動することを支える重要な役割を担っています。家庭内のものから公共施設の案内、行政の公報まで、点訳・音訳は視覚障害のある人の自立した生活を支える大きな情報保障の手段となっています。
―お知らせ―
9月から視覚障害サポートボランティア養成講座(点訳・音訳)がございます。
詳しくはこちら。

3.支援機器の発展に伴って広がる可能性
―ICT機器を活用した支援について教えてください。
近年、スマートフォンアプリやAI技術の進歩により、視覚障害者を支援するツールは急速に発展しています。視覚障害者が日常生活で特に直面する課題は、「移動」と「情報の獲得」です。目で情報を得ることが難しいため「安全に目的地まで移動するにはどうすればいいか」「必要な情報をどのように入手するか」が重要な課題となります。
現在は、これらを支援するアプリの開発が盛んに行われています。特に、AIの進歩は著しく、数年前には考えられなかったことが、今では当たり前のように視覚障害者の世界でも実現しています。具体的に言うと、文字を読み上げたり、絵や写真の説明をしたりすることです。「文字は点字に、写真や絵の説明は言葉で」という話もしましたが、AIがあればある程度できてしまうのです。
現在のAIを用いたアプリケーションは非常に高性能で、活字資料をカメラで読み取れば、その場で音声として読み上げることもできます。以前のように文字化けすることは少なくなり、手書き文字でもある程度は認識できます。
また、スマートフォンがあれば、文字の読み上げだけではなく、ナビゲーションや物体認識も利用できます。目の前に人がいれば「人が立っています」と教えてくれ、信号機を映せば、信号の色を知らせてくれるなど、多くの機能が無料で利用できるようになっています。
だからこそ、このようなAI技術を知っているかどうかで、生活の質は大きく変わります。
一方で、AIにどこまで頼るかという問題もあります。例えば、信号の色をAIが教えてくれていても、自分の前を車が走っている音が聞こえれば「今は渡ってはいけない」という判断力が必要になります。
つまり、安全に歩行するための基本的な知識や技術を身に付けた上で、AIを補完的に活用することが大切です。
ICT機器の発展に伴って、視覚に障害のある方の行動範囲や情報収集の可能性は広がっています。だからと言って、点訳や音訳、ガイドヘルバーなどの人的支援が必要ないかというと全くそうではありません。誤認識や誤った説明が起こる可能性もあるため、点訳・音訳、人的支援は今後も重要な役割を担います。
そのため、それぞれの長所を生かして使い分けることがとても重要になります。

―ICTサポートを通じて感じた課題や今後への期待や注意点について教えてください!
一つは、ICTの可能性について、弱視の方にも広がっていく期待感です。スマートグラスというデバイスですね。弱視の方の中には、映画館のような薄暗い場所に入ると真っ暗に感じ、何も見えなくなってしまう方がいます。なので、暗がりの中でも周囲の状況がわかるための助けとなるような機能が充実すれば、個人差などがあるかもしれませんが、とても有効なデバイスになることと思います。
もう一つ重要だと感じているのが、スマートフォンの更なる活用です。
スマートフォンは既に単なる連絡手段ではなく、生活に欠かせないインフラになっています。マイナンバーカードとの連携や災害時の情報収集や安否確認、電話、インターネットによる情報検索などさまざまな場面で活用されていますが、全ての人がスマートフォンを使いやすいわけではありません。
例えば、高齢の視覚障害者の中には、手指が思うように動かず、スマートフォンの操作が難しい方もいらっしゃいます。
そのような場合には、物理ボタンが付いた機器の方が便利な場合があります。こうした機種であれば、ボタン操作が中心となるため、スマートフォンより扱いやすい方もいます。
ICTサポートで大切なのは「スマートフォンが便利だから勧める」ということだけではありません。その人の身体状況や生活環境、使いたい目的に合わせて、最適な機器やアプリ、使い方を利用者一人一人に寄り添いながら提案することが大事です。
そのためには、支援する私たち自身も、新しいICT機器やアプリ、AI技術について継続的に学び、情報を収集し続ける必要があります。
ICTは日々進歩しています。だからこそ「ICTは便利です」と伝えるだけではなく、どのような支援が適しているのかを考え、提案できるスキルを身に付けることが、今後のICTサポートにおける大きな課題であり、私たちに求められる役割だと考えています。
4.スタッフの方々の思い
―サポートをする中で感じるやりがいや難しさについて教えてください。
利用者に納得していただけたり、お応えした情報がきっかけで生活がより豊かになったと実感できることがやりがいです。
例えば、電話で「センターまでの道を教えてもらえませんか」と相談を受けることがあります。その際には「駅から歩くと20分ほどかかります」「バスを利用すると近いですが、乗り場は分かりますか」と言ったように、できるだけ具体的に説明します。その後、その方が実際に来所されたと分かるだけでも、とてもうれしくなります。
感謝の言葉だけが支援の成果ではありません。利用者の方が自分の力で行動できるようになったり、施設を利用し続けてくれることも、支援の成果を実感できる大切なフィードバックだと感じています。
―静岡県視覚障害者情報支援センターの今後の展望について教えてください。
静岡県の東部地域ではICTサポートを受けられる機会が比較的少ないのが現状です。そのため、東部地域の支援をさらに充実させたいと考えています。
その取り組みの一つとして、今年度7月から県東部地域で新たなICTサポート事業を開始する予定です。具体的には、スマートフォンやICT機器に詳しい「ICTサポーター」を派遣し、利用者からのさまざまな相談に対応するとともに、機器の体験や操作方法のサポートを行います。
現在の予定では、毎月第1木曜日の10時から16時まで、三島市民文化会館(ゆうゆうホール)を会場として実施する予定です。
詳しくは、以下をご参照ください。

今後は、こうした取り組みを通じて東部地域の支援体制を充実させ、県内どこに住んでいてもICTサポートを受けられる環境づくりを進めていきたいと考えています。
5.まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回の取材を通して、ICT機器の進歩により、見えない方や見えにくい方が抱える困りごとが少しずつ解消され、行動範囲や情報収集の可能性を大きく広げていることを学びました。そして、このような技術を知っているかどうかで、生活の質は大きく変わることを知りました。
一方で、以前から活用されてきた点訳・音訳も、利用者が自ら情報を確認し判断して行動する重要な役割を担っていおり、今なお欠かせない支援であると分かりました。
ICTと点訳・音訳はどちらかが優れているかということではなく、それぞれの特長を理解し、場面や目的に応じて自分で選択し「使い分ける」ことが大切だと実感しました。
この記事をきっかけに、一人でも多くの方が視覚障害者支援に関心を持ち、点訳・音訳のボランティアや養成講座について知るきっかけとなれば幸いです。
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―お問い合わせー
静岡県視覚障害者情報支援センター
URL:https://i-center-shizuoka.jp/
静岡県静岡市葵区駿府町1-70
E-mail: info@i-center-shizuoka.jp
