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医療的ケア児等に関わる方の心の拠り所を目指して(前編) – 静岡県医療的ケア児等支援センター 始動-

2022年10月31日

人工呼吸器による呼吸管理、たんの吸引といった医療的ケアを日常的に必要とする「医療的ケア児」。
令和4年7月、県は、医療的ケアが必要な人やそのご家族などからのさまざまなご相談に総合的に対応するための拠点を開設しました。
今回、拠点への相談方法や携わる職員の思いをご紹介します。

目次

1 医療的ケア児等支援センター設立の経緯
2 ご相談はいつでもどんな方法でも大丈夫
3 医療的ケアに関わる方々の不安を取り除きたい……
4 医療的ケアに関わる方々に寄り添った地域づくりに向けて

1 医療的ケア児等支援センター設立の経緯

医学の進歩により、これまで延命が難しかった命をつなぐことができるようになりました。日常的に医療を必要とする子ども、医療的ケア児。現在、全国で約2万人の方々が、NICU(新生児特定集中治療室)等に長期入院した後、ご家庭で人工呼吸器や胃ろうなどで体の機能を補ったり、たんの吸引や経管栄養などを行いながら、日常生活を送っています。

入院中は医師・看護師の方々によるサポートが常時ありますが、退院後は、ご家族中心のサポートになります。歩ける方から寝たきりの方まで、その状態は幅広く、ご家族や支援者が抱える悩みは様々です。

令和3年9月、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が施行されました。この法律では、医療的ケア児やそのご家族の日常生活における支援、相談体制の構築、保育所や幼稚園での受け入れ体制の整備などが、責務として明文化されました。

令和4年7月、県は、医療的ケアを必要とする方やそのご家族等の相談を受け、地域の枠を超えて支援・共有するための拠点「静岡県医療的ケア児等支援センター」を開設しました。
これまで、ご家族が退院後に悩みを打ち明けられる場所は限られていましたが、ご家族の心の拠り所となる相談窓口としての機能が期待されています。

今回、静岡県医療的ケア児等支援センター(以下、センター)に関わる方々の思いを取材しました。 

センター入り口。心温まるアートがお出迎え(作:社会福祉法人草笛の会 山田さん)

2 ご相談はいつでもどんな方法でも大丈夫

医療的ケアを必要とする方は、子どもだけではありません。その子が成長していく中、その時々の支援が必要であり、成人となっても続きます。センターでは、医療的ケアを必要とする方やご家族、サポートする支援者、事業所など、関わりのある方全員を支援していきます。

県静岡総合庁舎別館3階にあるセンターでは、平日、10時から16時、職員(看護師)2名でサポートしています。相談方法は、電話、FAX、メールのほか、来訪していただくこともできます※。現在の状況をセンター職員さんにお話を伺いました。                          

※ 来訪する場合は、あらかじめお電話でご連絡ください。              

Q.どのような方法で相談すればよいですか?

「電話、近隣の方や静岡に来た用事のついでに立ち寄るなど、相談される方にとって負担のない方法で利用できます。相談は無料で時間制限もありません。誰かに話を聞いて欲しいとき、電話でもいいし、直接来ても大丈夫。心が安らげる場所ですので。」

取材時にも、遠方にお住まいの方が「近くまで来たので」とお越しになっていました。

Q.どのような相談が寄せられていますか?

「相談内容は様々です。お一人お一人、事情は違いますので、まずは、お話を伺って、その方に相応しいサポートをしています。例えば、遠方への冠婚葬祭など、数日間、どうしても家族で看ることができないときもあると思います。また、24時間付き添って介護していて気が休まらない、一息つきたい、と思う時もあると思います。そのようなご相談には、一時的に看てくれるショートステイ可能な機関を紹介します。」

「長年、介護している方もいらっしゃいます。今の状況を変えることができず、 困っている方もいらっしゃいます。『本音の話をしたいけれどできない。とにかく誰かに話したいけれど話す相手がいない』という方も、相談いただいています。

平日10時から16時まで相談可能です

3 医療的ケアに関わる方々の不安を取り除きたい……

医療的ケアが必要な方には、日常生活をサポートする体制が取られています。しかし、一人一人抱える課題が異なるため、本人及びご家族が十分満足する支援が受けられることばかりではありません。ケースによっては、ご家族自ら動き出さなければ、支援制度の情報を得ることができなかった、ということもあります。

医療的ケアを必要とするのが子どもの場合、特に配慮が必要です。成長・発達段階に応じた支援が必要となるので、関わる支援者も変わってきます。新たな支援者を探すことはもちろんのこと、一から信頼関係を築きあげなければならないので、ご家族の負担も大きくなってくるそうです。

「ご相談の中には、センターだけで解決できない問題もあります。そのような場合、地域の関係機関と連携して支えていきます。また、地域をまたぐ会議などでその問題を提起し、関係者間で共有します。医療的ケアに関わる方々の意見を吸い上げ、その情報を発信していくことがセンターの役割です。これまで地域の課題や相談事は、各地域の障害福祉関係機関が担ってきました。このセンターができたことで、地域間の悩みの共有とともに、連携して支援していくことにもつながっていきます。医療的ケアが必要な方やそのご家族の不安を取り除き、安心して生活を送っていただきたいと思っています。」

相談室でゆっくりお話を伺います

4 医療的ケアに関わる方々に寄り添った地域づくりに向けて

最後に、センターで活動する上での思いを伺いました。

「どんな相談にも丁寧に対応して、お答えできるように努めています。様々な機関と連絡を取り合い、解決に向けた支援ができればと思っています。医療的ケアを必要とする方の悩みは切実です。どうしたいのか、どうなりたいのか、まずはしっかり思いを受け止め、その上で、支援できる関係機関などをご紹介できればと思っています。」

医療技術は進歩してきている一方で、日常の医療的ケアを必要とする方を取り巻く環境の整備は道半ばです。法律の施行が契機となり、教育の場でも医療的ケア児を受け入れる体制づくりに取り組む動きも見られつつあります。医療的ケアに関わる方々の負担を軽減するためには、周囲の理解と連携、支援が不可欠です。医療的ケアに関わる方々の様々なご相談が、私たちにも気づきを与えてくれるきっかけになるので、まずはご相談いただきたいと思います。

「先程、お越しになった方は、沼津で医療的ケア児ママ同士の交流を深めようとしていて、自らも医療的ケアを必要とする子どもがいらっしゃる方でした。地域の支援の輪が広がるためにも、多くの方々にそのような方の活動も知って欲しいです」

今回、取材をきっかけに沼津で活動をしている方を知りました。
地域の状況はどうなのか?これもご縁。そこで実際に訪ねて見ることにしました。
(後編へ続く/12月公開予定)

静岡県医療的ケア児等支援センターの仕組みについては、「県民だより8月号」をご覧ください▶https://www.pref.shizuoka.jp/kikaku/ki-110b/202208/color2/index.html

問い合わせ

県広聴広報課 ☎ 054(221)2231 FAX054(221)4032

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