フカボリ

「やさしい日本語」で地域をつなげたい!~コニュニティFMの挑戦~

2023年2月17日

日本語に不慣れな外国人のほか、子供や高齢者、障がいのある方とのコミュニーケーション手段として、近年注目されている「やさしい日本語」。
静岡県東部の伊豆の国市に、やさしい日本語を使って情報発信に取り組んでいるコミュニティFM局があります。
番組にかける想いをお聞きするため、FMいずのくにのパーソナリティの大橋栄子さんを訪ねました。

やさしい日本語とは?

やさしい日本語は、漢字にルビをふったり、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語のことです。災害時の外国人への情報伝達の手段として取り組みがはじまりましたが、近年では医療や教育現場、日常のコミュニケーションツールとしても広がりを見せています。

やさしい日本語の変換例

目次

1 災害時の情報発信の砦、コミュニティFM

2 コミュニケーションはまず、やさしい日本語で

1 災害時の情報発信の砦、コミュニティFM

FMいずのくには、伊豆の国市の「今」を伝え、「まちを元気にする」こと、「災害時の情報を提供する」ことを目的に、2013年に開局されたコミュニティFMです。

コミュニティFMには、豪雨や地震等の災害発生時に地域の正確な情報をいち早く発信するとともに、音楽などで、不安なリスナーの心を落ちつけるという役割もあるとのことです。

FMいずのくにで特徴的なのは、担当者が番組制作からパーソナリティまですべてを務めること。そこにはディレクターもいなければミキサーもいない。災害時に誰が被災し、誰が到着できるかわからない中、一人でも番組を回せるようにするためだそうです。

--大橋さんの、やさしい日本語との出会いについて教えてください。

もともと司会やナレーションなどの仕事をしていたのですが、子育てで一時離れたんですね。その間、阪神・淡路と東日本の二つの大震災を経験しました。友人や親しい人が被災し、情報を受け取れなかったという話を聞きました。そうした体験から、災害時にコミュニティをつなぐ役に立ちたいと思い、6年程前にコミュニティFMの仕事を始めました。

やさしい日本語との出会いは、2020年に県が行った「コミュニティFM担当者向けのやさしい日本語研修と番組制作」です。この話があったとき、真っ先にやりたいと手をあげました。

コミュニティFMは災害時に重要な役割を果たすことが期待されている

--初めてやさしい日本語に触れた印象はどうしたか。

これなら誰でもできるなというのが、第一印象ですね。ハードルがそれほど高いとは思いませんでした。話を聞いて、自分の体験や想い、漠然とやりたかったことが全部つながったような気がしました。それで局長に、自分の持っている番組の中で、やさしい日本語をやらせてほしい、とお願いしたんです。静岡県がやさしい日本語を広めているというのもあって、自由にやらせてもらえました。

--放送されている番組の内容を教えてください。

毎週1回、「やさしい日本語の時間」という15分間のレギュラー番組で、市の広報紙の内容を中心にやさしい日本語でお伝えしています。あとは、週数回、5分程度ですが、災害時に役立つ情報のやさしい日本語による放送をしています。

FMいずのくに番組表。中央に赤字で「やさしいにほんごの時間」の文字が。

--どんな方に聞いてほしいですか。

外国人の方に聞いていただきたいというのが一番ですが、高齢の方も意識しています。やさしい日本語は、はっきりゆっくり、丁寧に話すので、「家でおばあちゃんが聞いてるよ」という声もいただいています。災害時のお知らせも、やさしい日本語だけで流した方がわかる人が多いかもしれないと感じています。

あとは、多くの人にやさしい日本語を知ってほしいですね。

--やさしい日本語を地域の方に知ってほしいと。

そうです。番組を始めた最初の頃はクレームみたいなものもあって。「まどろっこしい」と言われたり。なので、災害のときに急に聞くより、普段からやさしい日本語というものがあるんだと知っておいてもらって、避難所や街中で「そういえば」って、やさしい日本語を思い出してもらいたいです。

外国人の方も税金を納めているのに、必要な情報がもらえないのはアンフェアですよね。特に災害時は、日本人とか外国人とか関係なく、みんなに情報が伝わらないといけない。

やさしい日本語に慣れてもらって、「だからゆっくりしゃべってるんだな」、「簡単な日本語でしゃべってるんだな」と思ってほしいですね。

--そういう想いもあってのレギュラー番組なんですね。

はい。それから、聞く側だけでなく制作側の慣れも必要です。やさしい日本語は、言葉を簡単にするだけではなくて、わかりやすいよう情報を絞ったり、逆にイメージが湧きやすいように説明を付け足したりします。

今は、私が番組の原稿を作った後、やさしい日本語に詳しい方にそれを見てもらい意見をいただいているのですが、災害のときは一人でやらなくてはいけません。普段から番組を制作しているからこそ、災害時でも実践できると思います。

--最後に、今後の展望をお聞かせください。

たくさんの方に番組を聞いてもらうことはもちろん、皆がやさしい日本語を使って、自由にコミュニケーションがとれるようになることが私の願いです。

たとえば、伊豆の国市では地域医療が注目されていますが、医療や介護の現場で働く人が不足する中で、外国人の方がそれを支えてくれる。医師や施設の人がやさしい日本語を知って、少し日本語のレベルを調整するだけで、彼らにもっと通じるようになります。患者さんに対しても、「どうなさいましたか」ではなく「どこが痛いですか」と聞いたほうがわかりやすいし、認知症の方にも、やさしい日本語で話すと伝わりやすいと感じています。そういったところにもやさしい日本語が広がってほしいですね。

やさしい日本語を皆に使ってもらいたい、と話す大橋さん。

2 コミュニケーションはまず、やさしい日本語で

静岡県に住む外国人は、約10万人。多くはブラジル・ベトナムなど、英語を母語としない方です。一方で、県の調査では、「日本語で話すことができる・少しできる」と答えた外国人の割合は、全体の84%にもなります。

「英語ができないから話せない」ではなく、まずは「やさしい日本語」で話しかけてみたら、コミュニケーションの輪が広がるかもしれません。

やさしい日本語の「やさしい」という言葉には、簡単な「易しい」と、相手を思いやる「優しい」のふたつの意味が込められています。

“やさしい日本語で地域をつなげたい”と日々奮闘されている大橋さんの、今後の活躍に期待したいですね。


〈県からのお知らせ〉

静岡県では、2023年2月中旬~3月中旬をキャンペーン期間とし、集中的にやさしい日本語に取り組みます。
県内12局すべてのコミュニティFMで、やさしい日本語の番組を放送するほか、JRなど鉄道各社、フェリーでのポスター掲示、一般県民向けのやさしい日本語講座などを行います。皆さんも、ぜひこの機会に、やさしい日本語に触れてみませんか。

やさしい日本語キャラクターを用いた普及啓発バッジ

▼キャンペーンの詳しい内容はこちらhttps://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/1049844/tabunkachiiki/1002474/1043777.html

▼やさしい日本語紹介動画「話そう、やさしい日本語」

▼やさしい日本語についてもっと知りたい方はこちらhttps://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/1049844/tabunkachiiki/1002474/1015551.html

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