フカボリ

メッセンジャーが伝える生命の大切さ~交通安全を考え直すメッセージ~

2023年2月24日

県民だより11月号(令和4年10月30日発行)では、「みんなで守る!青少年の生命(いのち)と未来」と題して、交通安全と薬物乱用について、若年層やその家族に向けて記事を掲載しました。

その中で紹介した「生命(いのち)のメッセージ展」を覚えていますか?

▼みんなで守る!青少年の生命と未来 ~理不尽な交通事故、危険な違法薬物~
https://www.pref.shizuoka.jp/kensei/pr/johoshi/kenmin/1040307/1044711/1043873.html

目次

1 生命(いのち)のメッセージ展とは?
2 なぜ静岡県をはじめとする全国で展示しているのか?
3 広聴広報課職員が実際に展示会に行ってみた
4 生命のメッセージ展を通じて伝えたいこと

生命(いのち)のメッセージ展とは?

「やりたいこと、夢ばかりで 今の僕はまだ何もしていない。未知数だ。
これからひとつひとつ手にしていって 僕という人間を生きたい」

これはある若者が大学に合格したときの言葉。
ところが、平成12年4月1日の入学式を終えて間もない4月9日のこと。
この若者が親友と歩道を歩いていたところを後ろから飲酒、無免許、無車検、100キロを超えるスピードの暴走車に激突され、二人とも即死でした。

希望に満ち溢れ、喜びに胸躍る中、19歳の若者を襲った突然の「死」。
理不尽に奪われた命や残された家族の思いを想像できるでしょうか?

「生命のメッセージ展」とは、NPO法人いのちのミュージアム(東京都日野市)が取り組んでいる命の大切さを伝えるための展示会です。

メインの展示は、交通事故などの犠牲者一人一人の等身大人型パネルと、彼らの生きた証である遺品の「靴」です。人型パネルには、一人一人の素顔や遺された家族の綴ったメッセージが添えられています。いのちのミュージアムでは、人型パネルとなった方たちのことを、生命の大切さを伝える「メッセンジャー」と呼んでいます。

▼生命のメッセージ展について 
https://www.inochi-message.com/

2 なぜ静岡県をはじめとする全国で展示しているのか?

生命のメッセージ展をなぜ全国で開催するに至ったのでしょうか。主催しているいのちのミュージアムの担当者の方と、県くらし・環境部 くらし交通安全課の鈴木主査に、このメッセージ展に対する思いについてお話を伺いました。

-いのちのミュージアム担当者の方

「平成13年3月に初めて展示会を開催した時は、遺族の中には、『家族を晒しものにするようで忍びない』『失った家族を思うと何も手が付かない』『辛い事は早く忘れて、ステキな思い出だけ残した方が良いと家族に反対されている』と、参加を躊躇する人が多く、僅か16名でのスタートでした。

しかし、いのちの重さを再確認してほしい、暴力的に断ち切られたいのちを忘れずに未来へとつなげたいという生命のメッセージ展のコンセプトに賛同する参加者は、回を重ねることに増えていきました。

生命のメッセージ展には、難しい主義主張はありません。生命という言葉には命が生まれる、命を生かす、命を生きるという3つの意味が込められ、“かけがえのない生命の尊さ”というキーワードで、生きていることの希望、そして夢を伝えているのです。

私たちは、人が暴力的に生命を奪われることなく精一杯生きることが出来る社会を夢見て、多くの人々が現実を知り生命の重さを考えてもらうために全国で巡回展をしています」

-くらし交通安全課 鈴木主査

これまで県では、高校生の交通安全意識の高揚を図るため、平成29年度から県内の高校を中心に生命のメッセージ展を開催してきました。

このメッセージ展を通じてご遺族の悲しみを知るとともに、自他の命の大切さを感じて相手を思いやる心を育むことによって、自転車利用時はもちろんのこと、今後運転免許を取得した場合において、被害者にも加害者にもならないよう、早期段階において教育することを目的としています。

これまでに実施した高校でのアンケートでは、「改めて命の大切さを知った」「飲酒運転は絶対にしないようにする」「他の学校でも共有してもらいたい」などといった意見・感想が寄せられ、交通安全教育に高い効果があるものと考えます。

県では、今後も引き続き展示を予定しています。

県内高校での展示

3 広聴広報課職員が実際に展示会に行ってみた

展示は県内の高校にて実施しているため、一般公開されていませんが、令和4年10月、駿河区役所(静岡市駿河区)にて期間限定で一般公開されましたので、広聴広報課職員が行ってきました。

駿河区役所に入ると入口すぐ近くに展示があり、ご遺族の手によって等身大に切り出されたメッセンジャーと呼ばれる真っ白なパネルがありました。元気だった頃の写真が貼られ、足元には生きていた証としてお気に入りだった靴が置かれていました。

等身大のメッセンジャー
小学生や妊婦のメッセンジャーも

メッセンジャーには、生前のお写真・プロフィールのほかに、ご遺族・友達からのお手紙、事故当時の新聞記事なども貼られていました。
居眠り運転の事故被害によって亡くなられた方のご遺族のお手紙には、「朝学校へ『行ってきます!』と言った言葉が最後に聞いた声でした」というものもありました。

私たちは本当に、日々の暮らしの中で交通安全を意識できているのでしょうか?
突然に、しかも理不尽に命が奪われてしまうのだと、生きたくても生きられなかったメッセンジャーを前に改めて気づかされました。

4 生命のメッセージ展を通じて伝えたいこと

私は車の運転が好きなのですが、現在電車で通勤しているため、週末のみ運転します。久しぶりに運転すると、毎日運転していた頃を比べると恐怖感がありました。
自分が今までスピードを出し過ぎていたことや、隣の車の急な割り込み、自転車の危険走行など、今まで気付かなかったことが見えてきたからです。

そんな中、生命のメッセージ展を見ることで、今までの交通安全に対する意識を見直すきっかけとなりました。

県内では、平成30年から令和4年の過去5年間で485人の尊い命が交通事故によって奪われています。
交通事故は、誰でも被害者にも加害者にもなりうる可能性があります。
これは自転車でも同じです。令和5年4月1日から、全ての自転車利用者に対する乗車用ヘルメット着用が努力義務となります。

自転車事故で亡くなられた方の致命傷となった部位は、頭部が約7割(平成25年~令和4年)を占めており、ヘルメットは、転倒した場合などに頭部への衝撃を軽減する効果があります。
自転車を利用する方は、これを機会に自転車ヘルメットの購入を検討しましょう。

こうした一人一人の心掛けが、かけがえのない命を守る一歩になるのではないでしょうか。

【静岡県の取組】

▼静岡県の交通安全について 
https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/bosaikotsh/kotsuanzennet/index.html

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