フカボリ

第76回全日本フェンシング選手権大会が9月15日から沼津市で開催。「フェンシングのまちを目指す沼津市」沼津市を拠点に活動する日本代表の脇田樹魅選手にお話を聞きました!

2023年8月31日

「フェンシングのまち」を目指す沼津市。

今年は、第76回全日本フェンシング選手権大会が沼津市総合体育館で9月15日(金)から18日(月・祝)まで開催されます。18日は、決勝大会として各種目の準決勝、決勝が行われます。世界で活躍しているトップクラスの選手の真剣勝負や剣さばきを間近で観ることが出来る貴重な機会です。

フェンシングの拠点施設があり、日本代表選手が活動の拠点とする沼津市とフェンシングをフカボリしました。

目次

  1. フェンシングとは
  2. 沼津市とフェンシング
  3. 日本代表の脇田選手にお話を伺いました
  4. 今後に向けて

1 フェンシングとは

まず、フェンシングという競技について簡単に説明します。フェンシングは、中世の騎士による剣術がルーツとされています。

フェンシングは、ピストと呼ばれるコート(幅1.5m、長さ14m)上で、2人が向かい合って剣で戦い得点を競うスポーツです。「フルーレ」「エペ」「サーブル」の3つの種目があります。

フルーレ:有効面は胴体のみ。攻撃は突きのみ。攻撃の優先権があります。

エペ:有効面は全身。攻撃は突きのみで、どこを突いても得点になります。優先権がないので、同時に突いた場合は、両者にポイントが入ります。

サーブル:有効面は上半身。攻撃は突きと斬りがあり、ダイナミックな動きとなります。攻撃の優先権があります。

※優先権:優先権は、相手より先に攻撃を仕掛けることで得ることが出来ます。優先権を持たない選手は、相手の攻撃を阻止することで優先権を奪うことが出来ます。同時に有効面を突いたときなどに優先権を持っている選手が得点を得ることが出来ます。

もっと詳しくフェンシングを知りたい場合は、沼津市のサイトをご覧ください。

フェンシングのまち NUMAZU

2 沼津市とフェンシング

沼津駅北口の商業施設内に、フェンシングの拠点施設である「F3 BASE(エフスリーベース)」が令和3年にオープンしました。日本代表をはじめ、学生などがこの拠点施設を利用しています。

元々、沼津市とフェンシングのつながりは、昭和32年の第12回国民体育大会フェンシング競技の会場が、沼津西高校に決まったことをきっかけに、市内の高校にフェンシング部が作られたことから始まります。沼津西高校、沼津東高などは、今もフェンシング部が活躍しており、古くからフェンシングを行う土壌がありました。

そして、沼津市は東京2020オリンピック・パラリンピックにおけるフェンシング代表チームの事前合宿誘致活動をきっかけに、平成31年に日本フェンシング協会と全国初の包括連携協定を締結しました。令和元年9月には、日本、カナダ、フランス、ドイツの女子フルーレの合同合宿が沼津市内で行なわれたことをきっかけに、東京2020オリンピックのカナダ・フェンシングチームの事前合宿地が、沼津市に決定しました。

コロナ禍での事前合宿だったため、選手と一般の方(市民やホテルスタッフ等)の接触を減らす必要があり、動線を分けたり、担当となっている市の職員が食事を選手のところまで運ぶ等、多くの感染対策において市の職員も苦労をされたそうです。そのような状況のため、市民と選手は、直接的な交流は出来ませんでしたが、市の職員の工夫で市民がビニールシート越しに選手の練習を見学できるようにしたり、少しでも触れあえるような機会が作られました。また、リモートではありましたが、壮行会も行い交流を深めました。

カナダ・フェンシングチームだけではなく、日本女子フルーレチームも大会前に沼津で合宿を行いました。

その後、市内の商業施設にF3 BASEが出来るなど、沼津市内のフェンシングの活動がさらに活発になっていきます。

沼津市内では、フェンシングの普及活動の一つとして、柔軟性のある剣を利用したスマートフェンシングの体験会やフェンシング講座などの活動を行なっています。また、強化練習会やトップ選手育成、市内での合宿のサポート等、様々な取組が行なわれています。

また、沼津市内では、小中学生クラスの全国規模のフェンシング大会も行なわれています。

今年は、7月に行われた世界選手権で優勝した団体男子フルーレ日本代表も6月にF3 BASEで合宿をしていたばかりでした。沼津市で合宿をすると優勝出来るという伝説もあるようです(沼津市担当者談)

沼津市を拠点に活躍する選手もいます。脇田樹魅選手(沼津信用金庫)は、サーブルの選手。沼津市出身・沼津西高校卒の鈴木穂波選手(ネッツトヨタ静岡)はエペの選手。両選手とも日本代表として活躍しながら、沼津市内のフェンシングのイベントや学校訪問などに積極的に参加されています。

また、パラフェンシング(車いすを固定して行なうパラリンピック種目の一つ)の日本代表の河合紫乃選手も沼津市を拠点に活動しています。

シドニー・アテネオリンピックに出場した長良将司さんは沼津市の職員となり、フェンシングのコーチや普及などに取り組まれています。

3 日本代表の脇田選手にお話を伺いました

サーブル 脇田樹魅(わきた じゅみ)選手

沼津信用金庫に所属し、日本代表としても活動する脇田樹魅選手

脇田選手にフェンシングの魅力を教えてもらいました。

「フェンシングは、他のスポーツと違って、武器を扱うスポーツで、日常では味わえない体験ができるところがフェンシングの魅力だと思います。だけど紳士のスポーツと言われています。

本物の硬い剣は、なかなか日常では触れることがないので、それをスポーツとして体験できるということは魅力ですね。」

一方、競技を見る側としての魅力は、

「生で見ると、思ったよりダイナミックな動きがあり、音もすごいと思います。私の種目サーブルは、『突く』だけじゃなくて、『斬る』という動きもあるので、3D感が味わえます。その点が見ていて楽しいところかな。」と教えてくれました。

脇田選手はサーブルの選手、ポイントの取り方も違いがあります。

「フェンシングは、剣のセンサーが反応してランプが光りポイントが入ります。剣先にセンサーがついているので、フルーレとエペは剣先を突くことでポイントが入ります。

サーブルは剣の刃そのもの、全体がセンサーになっているので、相手の有効面と呼ばれるところに触れただけでランプがつく仕組みです。ですので、『突く』だけではなく、『斬る』という表現もあります。」

斬りの方法を教えてもらいました。

「フルーレとエペと違って、剣全体が、センサーなので、動き一つ一つを丁寧にしないと、防御が難しいです。

例えば相手が攻撃してくる剣を止めたいと思い、自分の剣で止めるけれど、その止めや避けが甘いとちょっと触れただけで相手の得点になってしまいます。

繊細かつ丁寧な動きを心がけてやらないと、サーブルは点を取るのが難しい種目です。」

サーブルは、ダイナミックながら繊細さも大切な競技。

テレビで見ていると、素人では剣さばきの様子やポイントが入る瞬間に、目で追えないこともあります。選手自身は、動きが見えているのか、聞いてみました。

「ほとんど見えていないです。相手の初動で、剣がどちらに来るのかを予想して、それで動く感じですね。剣先は見えていないので、みなさんが見てるような感じと一緒です。

初動の体や手の動きで、相手がどちらに来るかを予測して動いてます。」

実際に映像で見るとわかりますが、あれだけ素早い動きを予測しながら動くとは、フェンシングの選手の俊敏性のすごさがわかります。

サーブルの剣は、エペやフルーレと剣の形状がだいぶ異なります。下の写真のとおり、サーブルは持ち手の辺りにも金属の部分があります。

第76回全日本フェンシング選手権大会のサイトに掲載されているラブライブ!サンシャイン!!のキャラクターが持っているのもサーブルの剣です。

「斬り」があるサーブルでは、持ち手の金属部分で、相手の攻撃を防ぐこともあるそうです。

サーブルの剣

脇田選手の強みは「パラード」という技。剣で払う防御です。なかなかなじみのない言葉なので、詳しく聞いてみました。

「なじみがないですよね。私も、最初パレードとか言ってました(笑)

相手が攻撃してきた剣を、剣でよけるものです。そして、そのまま相手を斬ります。

ほとんどの選手は、攻撃を強みにしています。攻撃の方が圧倒的に有利ですが、私は防御が得意です。防御からの攻撃を見てほしいです。」

マスクを見せながら説明してくれました

今後、沼津市では、2つの大きなサーブルの試合が行なわれることから、意気込みを聞かせてもらいました。

「ホームである沼津市で複数試合が行なわれるのはラッキーですね。

所属先の沼津信用金庫や、沼津市役所の方など、本当に色々な方にサポートいただいています。今回は、今までの私の活動を見てもらえるチャンスなので、自分の全力を出して、自分の満足いく動きを見てもらいたいと思います。

私が普段活動していることの集大成ではないですが、この大会でそれを発揮できたらなと思います。

全日本選手権の過去最高成績は3位です。一番いい色のメダルを取るために、今、調整真っ只中です。しっかり全日本選手権に向けて調整して一番いい色のメダルを取って、会社の方やサポートしてくださった方に見せたいと思います。」

最後に、フェンシングの魅力について改めて聞きました。

「フェンシングは、難しいですよね。答えがない。

人それぞれ全く違うフェンシングをしますし、奥が深いです。掘れば掘るほど、どこまでも掘れるような競技なので、それを追求していくところが面白いなと思ってます。」

奥が深く、ダイナミックなフェンシング・サーブル。

お話を聞かせていただいた脇田選手の「繊細かつ丁寧な動き」は、全日本選手権で見ることができます。

脇田選手のインタビュー全文は、東部地域局noteから。

沼津市出身の鈴木穂波選手にもお話を伺いました。インタビュー全文は、東部地域局noteから。

4 今後に向けて

現在の沼津市のフェンシングに関する取組、今後の展望について、沼津市ウィズスポーツ課の杉山さんにお話を伺いました。

沼津市で試合が開催され、ジュニアの選手をはじめ市にゆかりのある選手が活躍をしています。

「活躍はすごく嬉しいですね。力を入れて取り組んでいること、『なぜフェンシングなのか』ということを結果で見せてくれています。ありがたいですね。

選手の活躍も嬉しいですが、選手だけではなく、地元で応援する環境が必要です。ファンを増やす取組をしないといけないと感じて、選手には学校訪問等もしていただいています。」

フェンシングの全日本選手権の開催など、多くの取組が行なわれる沼津市。担当者としての苦労についても伺いました。

「フェンシングの取組は、スピード感が求められ、さらに最適解が求められています。そのスピードになかなか追いつかないところがあります。それでも、協議会の皆様等に助けていただきながら取り組んでいます。」

今後の展望についても、足下の取組から大きな目標までお話をしてもらいました。

今後は、フェンシングを体験する機会を、もっと市民に近いものにしていきたいと思っています。今はイベントにブースを出展し、スマートフェンシングの体験をしてもらっていますが、好きな時にこれを楽しめるようにしたいと考えています。

全日本選手権の開催は、すごいチャンスだと捉えています。関心のある人を巻き込みながら、フェンシングが沼津市の日常になると良いなと思います。

今年、7月にU14、U11の全国大会を行ないました。そこにカナダの選手も参加してもらい、試合だけではなく文化交流も行いました。カナダ側からは、「来年はカナダに来てください」と言われています。オリパラの事前合宿がレガシーとなって繋がっています。今後も、カナダと交流を続けられれば良いと思います。もちろんフェンシングだけではなく、お互いの文化、語学など幅広く交流していきたいと思います。

今回の大会はカナダだけではなく、香港からも参加がありました。より多くの国に参加してもらい、いずれは、世界大会の誘致につなげていきたいです。また、オリンピックの金メダリストの輩出も合わせて市の大きな目標として掲げています。」

沼津市職員からも熱い想いを聞かせてもらいました。今年は全日本選手権も開催される沼津市とフェンシングから目が離せません。

まずは会場でフェンシングを見てみませんか。予選は無料で観戦出来ます。

<全日本選手権概要>

第76回全日本フェンシング選手権大会(個人戦)

主催:公益社団法人日本フェンシング協会

期日:

令和5年9月15日(金)から17日(土)予選 

令和5年9月18日(月・祝)決勝大会

会場:沼津市総合体育館

(沼津市御幸町15-1 JR沼津駅から徒歩15分)

大会公式ホームページ

※予選は無料でどなたでも観戦できます。決勝大会には有料チケットが必要になります。なお、沼津市民の方は「広報ぬまづ9月1日号」の特集記事に掲載されている切り取りチケットをお持ちいただくと、先着300名の方は無料で観覧できます。

(参考)チケット購入

また、「Proud NUMAZU CUPフェンシング選手権2023サーブルランキングマッチ&沼津北ロータリークラブカップ」も、10月21日(土)、22日(日)に沼津市内で行なわれる予定です。

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