フカボリ

誰でも安心して来れるお店へ~しずてつストアの合理的配慮の取り組み~

2023年11月29日

皆さん、12月3日~9日は何の週間か知っていますか?それは、「障害者週間」です。実は聴覚に障害を持つ県広聴広報課職員。普段の買い物でコミュニケーションに不便を感じることがあります。もう少し気楽に買い物できたらなあ・・・と思っていたところ、しずてつストアが障害のある人へさまざまな配慮をした取り組みを行なっているとお聞きし、取材してみました!

目次

  1. 令和6年4月1日から義務化される「合理的配慮の提供」とは
  2. 従業員の意識が変わった!~しずてつストアの合理的配慮の取り組みとは~
  3. どなたでも安心してお店へ買い物に来て欲しい!

1.令和6年4月1日から義務化される「合理的配慮の提供」とは

平成28年からスタートした「障害者差別解消法」は、障害のある人に不当な差別的取り扱いを禁止しています。不当な差別的取り扱いとは、正当な理由なく、障害のある人にサービスの提供を拒否したり、制限したりすることです。私も、本人がここにいるのに、筆談も何もせずに無視され、付添いの人にばかり声だけで話しかけるという差別的な取り扱いを受けたことがあります・・・他にも、「受付での対応を拒否される」「車いすであることを理由に電車の乗車を断られる」「障害のある人本人のみの入店を断られる」「盲導犬の入店を断られる」などといった、不当な差別的な取り扱いの事例が。

法律では、上記のような不当な差別的取り扱いをなくし、障害のある人から何らかの対応を必要としていると意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲内で対応することを事業者に求めています。これを、「合理的配慮の提供」と言います。

その「合理的配慮の提供」が事業者は現在は努力義務ですが、令和6年4月1日から義務となります。

詳しくは、県民だより12月号に載っていますので、あわせてご覧ください!

県民だより令和5年12月号(12月1日公開予定)

2.従業員の意識が変わった!~しずてつストアの合理的配慮の取り組みとは~

しずてつストアで取材に対応してくださったのは、エンゲージメント推進課の小泉課長、横山副課長、総務・SDGs推進課の浦田課長、依田主任。

▲右から小泉課長、横山副課長、依田主任

ーーしずてつストアでどんな合理的配慮の取り組みを行なっているのか、教えてください。

店舗入口近くに、車いすのお客様や高齢のお客様優先の駐車場を確保してあります。また、店舗に車いすを1~2台確保し、定期的にタイヤ空気の点検などもし、いつでもどなたでも利用いただけるようにしています。他にも、盲導犬・聴導犬・介助犬も入店可能であることのマークを店舗入口に提示しています。介助が必要なお客様には、下のインターホンで従業員を呼び出せるようにしています。全て店舗入口に集約し、障害のあるお客様がわかりやすいようにしています。

▲車いすのお客様優先の駐車場
▲高齢のお客様優先の駐車場
▲どなたでも利用できる車いす
▲補助犬も入店可能のマーク
▲介添えが必要なお客様はインターホンで従業員を呼び出しできます
▲多目的トイレ。オストメイトも対応しています。(一部店舗)
▲車いすでも安心して乗せられる買い物かごトレー(一部店舗)

ハード面だけでなくソフト面でも、従業員に対して、障害のあるお客様への理解を深め対応できるように、ユニバーサルマナー研修を開催しています。研修では障害のあるお客様への対応の仕方や声掛け方法、車いすの操作や視覚に障害のあるお客様の誘導といった実践的なサポート方法を学んでいます。昨年度までにユニバーサルマナー検定3級に223人、2級に102人合格しました。

▲ユニバーサルマナー検定受講の様子

ーーいつ頃から、合理的配慮の取り組みを行なっているのでしょうか。

平成28年にスタートした障害者差別解消法が本格的に取り組むきっかけとなりましたが、それよりも前から取り組みを始めています。ユニバーサルマナー研修や検定については、ある従業員が個人的に受講したことがきっかけで、今は会社全体として取り組んでいます。

ーー合理的配慮の取り組みを行なうにあたって、準備や費用など事業者側の負担が重いのではないでしょうか・・・?

障害のあるお客様だけでなく、高齢のお客様や外国のお客様など色々なお客様を想定し、一人一人のお客様に対して分け隔てなくサービスを提供するのは当たり前だと思っています。

企業としては、お客様と共存していくのが大事ですので、負担と捉えず、当たり前の投資だと考えています。

ーーユニバーサルマナー研修を受ける前と受けた後で、従業員の意識はどのように変わりましたか。

研修前の従業員は、障害のあるお客様にお声掛けする時どうお声掛けしていいのか迷っていました。研修を受けた後の従業員はユニバーサルマナーの知識を身に付けたことで自信が付き、積極的にお声掛けできるようになりました。また、高い棚にある商品は車いすだと取りにくい、この通路は車いすだとUターンしにくいなど、研修前は障害のあるお客様の不便さに気がつかなかったことに、研修後は気が付くようになりました。店舗内のバリアフリーはもちろん、お客様が不便だなと思う部分を改善したりサポートできるような人材を今後も育てていきたいです。

▲車いすだと高い棚の商品が取りにくい
▲冷凍棚のドアが開けにくい
▲通路が狭くUターンできない

ーー実際に障害のあるお客様の来店はありますか。来店した場合、どのように配慮していますか。

障害のあるお客様は多くはありませんが、いつも決まった店舗にいらっしゃるお客様はわかりますので、店舗の方で買い物しやすいように常に配慮しています。タクシーで来店され、買い物が終わるまで付き添ったりもします。補助犬を連れていらっしゃるお客様もいますが、周りのお客様が抵抗なく迎え入れてくれました。周りのお客様の方が理解があるのではないかと思います。静岡県の人は心が温かいですね。

ーー障害のあるお客様に配慮する際に困ったことはありますか。

障害のあるお客様にお声掛けする時に、本当に配慮してほしいのか、配慮してほしくないのか、判断してお声掛けするのは本当に難しいです。特に家族でいらっしゃった場合は、家族内でのサポートで済んでしまうこともあります。障害のあるお客様がいらっしゃったら、こちらから先に気付いてお声掛けするのが1番良い方法ですが、お客様の方から、例えば上の棚の商品が取れないので取って欲しいなどといった要望がありましたら、喜んで対応いたします!

ーー障害のあるお客様から配慮に対してどのようなお礼がありましたか。

その場での口頭でのお礼が多いですね。本社にメールのお礼が届くときもありますが、やはり口頭でお礼を言われるのが1番嬉しいです。お礼を言われると、さらに頑張ろうという気持ちになれます。

3.どなたでも安心してお店へ買い物に来て欲しい!

合理的配慮の提供が令和6年4月1日から義務化されることについて、お伺いしてみました。

ーー義務化に合わせて新たに取り組むことはありますか。

今、聴覚に障害のあるお客様が使えるコミュニケーションボードを作成しているところです。手話で会話できたらいいのですが、手話の習得には時間がかかります。筆談も可能ですが、コミュニケーションボードを使うことで、より具体的にわかるようにコミュニケーションできたらと思っています。

作成中ですので残念ながらまだ現物をお見せすることはできないのですが、実際に聴覚に障害のある広聴広報課職員、試してみました。「LuLuCaカードを使用します。」「スマホ決済します」といった会計の際に使う会話が絵で示してあり、それを指さすだけで簡単に意思表示できます。 数字もあり、例えば、おはしの絵を指さした後数字の2を指させば、「おはしを2つください」になります。これは便利ですね!

ーーこのコミュニケーションボードはどこに置くのでしょうか。

レジと、サービスカウンターに置く予定です。聴覚に障害のあるお客様だけでなく、耳の遠くなった高齢のお客様や外国のお客様にも使えると思っています。

レジにあれば、後ろで並んでいる人達を待たせたままあわてて筆談しなくても、指さすだけですむので私も助かります!

ーー他に、何か取り組むことはありますか。

私たちも合理的配慮の提供の義務化に向けて、何かできることがあるのか、何か役に立てることがあるのか、考えながら取り組んでいきたいと思っています。

ーー最後に、障害のあるお客様に対して何かメッセージをお願いします!

ユニバーサルマナー研修など色々な研修を行い、従業員の教育をしていますので、障害のあるお客様はもちろん、どなたでも安心してお買い物に来てほしいです!

<取材を終えて>

しずてつストアの合理的配慮の取り組み、どれも障害のある人に対して配慮しており、私も気持ちよく買い物出来そうです。特にコミュニケーションボードについて、設置が待ち遠しいですね!

合理的配慮の提供というと、スロープやエレベーターの設置などハード面が注目されやすいです。もちろんハード面の利便性は大事ですが、それよりも、事業者側と障害のある人側、お互いを思いやる心が重要だと、私は思います。対応をお願いした時に、簡単に断られると、障害のある当事者としてはちょっと落ち込んでしまいます・・・ こちらから無理なお願いをしたのかもしれませんが、「○○なら対応できるけれどどうでしょうか」といった代案を提示したり、「今回は申し訳ないけれど・・・、検討するので、また来てください」といった前向きな回答だと、こちらも事業者が対応しやすいようにはどうすればいいのかなと考えることができます。

また、お店で筆談した後に、相手から「ありがとうございました。」と手話が出てくると、嬉しい気持ちになります。このようなちょっとした気遣いも、合理的配慮ではないでしょうか。

どなたでも安心して暮らせるためにはどうすればいいのか、皆さんも考えてみませんか?

○合理的配慮の提供など、県民だより12月号はこちら

県民だより令和5年12月号(12月1日公開予定)

――↓問い合わせ――――――――

県広聴広報課 ☎054(221)2231 fax054(254)4032

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