フカボリ

“食の魅力”でおもてなし 美味らららの旅

2023年12月22日

初めて「ガストロノミー」という言葉を知ったのは、パリや東京の超高級レストランが舞台となった某テレビドラマでした。自分とは縁がない世界だと思っていたら、静岡県でも「ガストロノミーツーリズム」が始まっていると聞き、今回は、まだよく知らない「ガストロノミーツーリズム」について、フカボリしました!

目次

  1. ガストロノミーツーリズムって、ナニ?
  2. みんなちがって、みんないい -35市町ごとの食の魅力-
  3. 家康のてんぷら
  4. ガストロノミーツーリズムって、こんなこと?

1 ガストロノミーツーリズムって、ナニ?

“ガストロノミーツーリズムとは、その土地の風土から生まれた食材や伝統、歴史によって育まれた食を味わい、食文化に触れることを目的とした旅行”らしいのですが・・・グルメ旅と何が違うの??

県民だより11月号では、「料理人、生産者、観光事業者をはじめとした関係者が参加できる、無料の会員制ネットワーク組織“ガストロノミーツーリズムフォーラム”を設立しました」という記事があったけれど、関係者以外には、あまり関係ないような・・・料理人でも生産者でも観光事業者でもない私たちにとっての「ガストロノミーツーリズム」って、どんなもの??

そんなもやもやした疑問を抱えながら、11月1日に開催された「ふじのくに食と温泉文化フォーラム」に参加してきました。

2 みんなちがって、みんないい ー35市町ごとの食の魅力ー

会場であるプラサヴェルデに入って、まず目に飛び込んできたのが、壁に並んだカラフルなポスター!県内35市町全部のガストロノミーツーリズムを表したポスターが飾ってあり、興味深そうに眺める人たちの姿が見られました。私も自分が住んでいる市や実家があるまちのポスターを探してしまいました。

そのなかでも、幻想的な夕陽の写真が目を惹いた、西伊豆町。“伊豆の松島”とも言われる堂ヶ島の夕陽と、潮かつおの仕込み作業の様子が、ポスターになっていました。

どうして、この場面を選んだのか、PRブースにいた、西伊豆町役場の職員、山本文彦さんに聞いてみました。

ガストロノミーツーリズムのポスターを作るために、自分たちが住むエリアの①地理・地形的要素、②伝統的な食文化、③食をとりまく歴史・文化的要素を挙げてみて、その中から特に、このエリアで「おすすめ」、または、ほかのエリアと比較したときに「唯一無二(ユニーク)」であるというものを絞り込む、という作業をしたのだそう。

西伊豆町と言えば、夕陽と西風。その西風で3週間程乾燥させて作る、正月魚(しょうがつよ)とも呼ばれる新年の縁起物「潮かつお」以外、ありえない!と考えて、このポスターができあがったそうです。

そのほかの市町のポスターも、お茶やうなぎ、海産物など、静岡と言えば!といった特産品が多かったですが、知らなかったものも。これが、「その土地の風土から生まれた食材や伝統、歴史によって育まれた食文化」になるのかな、と、少し理解が進んだ気がしました。

それにしても、このガストロノミーツーリズムのポスター、それぞれの市町がオススメする地元のイチオシが、一気にわかって、全部見てみたい!

3 家康のてんぷら

ガストロノミーツーリズムは、ここだけにしかない特別なモノでもあり、私たちのまわりに普通にあるモノなのかも…以前より、少しだけ身近に感じていたら、「家康のてんぷらコンテスト」を開催、という記事を見かけました。このコンテストのキャッチフレーズは、“静岡で食べたい!旅行者を笑顔にする”。歴史(家康)と食(てんぷら)が一緒になってるなら、コレも、ガストロノミーツーリズム?

コンテストの主催者である観光政策課に話を聞いてみました!

-このコンテストの狙いは?

(観)徳川家康公と言えば、静岡(駿府)の地で育ち、浜松時代に天下統一への足がかりとし、徳川幕府制定後は、大御所様として晩年を過ごされ、県内にはゆかりの土地やエピソードが数多く残っています。

そんな徳川家康公ゆかりの地である静岡県への注目が集まっている好機を生かして、本県を訪れる観光客に向けて、さらに旅の満足度を高める食のコンテンツとして「家康のてんぷら」をアピールしていこうと考えました。

-確かに、家康公の食にまつわるエピソードを聞いたことがあります。自ら漢方薬を調合する健康オタクだったとか、てんぷらが好物だったとか。

(観)このコンテンストに先だって、家康公が好物だったとされる「てんぷら」について、静岡大学の先生に文献を調べてもらったら、「久能の浜(駿河湾)の鯛をごま油で揚げて食べた」という記述があったそうです。その文献をもとに、食と温泉文化フォーラムでお話しされていた、サスエ前田魚店の前田尚毅さんにも協力していただいて、興津沖でとれた「しろあまだい」で、家康公を驚かせる絶品のてんぷらを作ってもらいました。

-食にこだわりがあった家康公が食べても満足できる一品、とても気になります!

(観)今回のコンテストでは、家康公の好物だったと言われる、静岡県産の鯛を使った「元祖部門」と、健康に気を遣っていた家康公に「食べたい!」と思わせるような、静岡県産の農林水産物を使った「令和版部門」として、オリジナルメニューを募集して、それぞれ16点、22点の応募がありました。これらの料理は、各店で12月から2024年3月まで食べられますよ。

静岡県観光協会ハロナビ

元祖部門のグランプリに選ばれた、食彩工房ムッシュMOIZUMIの「家康のてんぷら」をランチでいただけると聞いて、さっそく食べに行ってきました。

トルコがルーツのカダイフを使ったパリパリの衣と、ふんわりした真鯛の身のバランスが絶妙で、家康公が食べても満足しただろうなぁ~という美味しさでした!

「今度、友人が静岡に遊びに来たら、家康公ゆかりの名所をまわりながら、家康のてんぷらを食べたら、喜んでくれるかなぁ…」そんなことを考えたところで、もしかして、こういうことも、ガストロノミーツーリズムなのでは?と思い至りました。

4 ガストロノミーツーリズムって、こんなこと?

旅先でご当地グルメを食べることを目的としているのが「グルメ旅」だとしたら、ガストロノミーツーリズムには、その土地ならではの歴史や食・食文化の要素が欠かせないみたい。家康のてんぷらも、35市町のポスターも、料理人でも生産者でも観光事業者でもない私たちにとっての「ガストロノミーツーリズム」のヒントがある気がしました。

静岡県を訪れる人たちのお目当てが、歴史上の名所・名跡でも、富士登山でも、駿河湾で楽しむマリンスポーツでも、そこには地理的、歴史的背景があり、それがここにしかない唯一無二の魅力となっていること。そして、その気候風土や歴史文化に結びついた食の魅力でおもてなしすることが、静岡県の目指す「ガストロノミーツーリズム」なのかなぁ、と今回の取材を通して感じました。

私でもできるガストロノミーツーリズムのおもてなしで、友人を誘って出掛けてみようと思います!

美味ららら

美味らららとは、「ららら」と鼻歌を歌いながら、静岡の美味しさを物語や風景と共に巡っていただきたいという想いから生まれた言葉です。また、「~ら?」「~でしょ?」は静岡県の方言でもあり、「美味しいでしょ、でしょ、でしょ」という静岡のどこに行っても美味しいことを伝える意味も込められています。

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