フカボリ

七夕豪雨災害から50年。今を生きる私たちが「かわなび」で知るべきこと

2024年5月30日

メディチャン学生特派員の萩原です。昭和49年7月7日、静岡を襲った「七夕豪雨」から今年で50年がたちます。あなたは当時何が起きて、今までどのような対策がなされてきたのか知っていますか?

「一つ知らないことが分かると、100個知らないことが見えてきます。」

そう語るのは静岡市役所土木部河川課の石井さん。 石井さんは、治水対策事業や過去の水害について学びの場を提供し、市民の防災意識の向上を促し、災害に強いまちづくりの推進を図ることを目的とした施設「静岡市治水交流資料館」通称「かわなび」のスタッフです。

今回私は、七夕豪雨災害から学び、今に生かすきっかけとなる「伝える施設」かわなびと、そこで働く「伝える人」の思いに迫りました。県民だより6月号(6月1日発行)と併せてご覧ください。

静岡市治水交流資料館 施設外観(静岡市駿河区)

目次

  1. 巴川は、〇〇だった?!かわなびで実際に学んでみました!
  2. 七夕豪雨災害を伝える かわなびスタッフのある工夫と思い
  3. 「水害は怖い」から目を背けない 今を生きる私たちが考えるべきこと

1.巴川は、〇〇だった?!かわなびで実際に学んでみました!

川を学ぶで“かわなび”。かわなびは今年で開館15年目を迎えました。

かわなびで学べるのは七夕豪雨災害で被害を受けた巴川をはじめとする地域の歴史から、現在の治水対策や課題まで。石井さんたちスタッフが、丁寧に館内の展示物を使って説明してくれます。かわなびは児童や学生の校外学習での団体利用をはじめ、一般利用も可能です。

取材に行った際も、一般のお客様にスタッフが説明されていました。

説明をする石井さん(写真左)

なぜ、七夕豪雨災害で記録的な被害が起こってしまったのでしょうか。原因を理解するために、川の歴史から学びます。水害が起こった原因の一つとして、川の地形が挙げられます。どうしてそのような地形になったのか?その歴史、川の地形や治水対策の変遷について説明を受けていると、驚きの事実が。巴川は「海の底だった」というのです。巴川が低地になっているのも、そのことが関係しています。詳細はぜひかわなびへ足を運んで聞いてみてください。他にも、新しい発見があるかもしれません。

約6000年前の現在の巴川流域の地図 ここに巴川が海底だったことのヒントが?!

館内では2500分の1縮尺の地形の立体模型や豪雨被害を受けた方のインタビューが組み込まれたドキュメンタリー映像なども見ることができます。川が氾濫し、当時の清水の商店街が水で溢れている映像は衝撃的でした。かわなびは情報をわかりやすく捉えることができる工夫がなされている施設です。そこにスタッフの説明が加わることで、より深く理解することができます。

館内にある模型を使って説明する石井さん

かわなびの展示の説明は、論理的です。災害の歴史と、地形の見地などです。なぜ七夕豪雨災害が発生したのか、スタッフもそれに沿って解説をします。

「難しく感じる方も少なくない」と石井さん。しかし、石井さんの解説には、治水対策をもっと知りたくなる“ある工夫”がされていました。

2.七夕豪雨災害を伝える かわなびスタッフのある工夫と思い

治水対策をもっと知りたくなる“ある工夫”とは。それは、「まるで静岡を街歩きしているような“豆知識”を取り入れること」です。その理由について石井さんは、

「帰る時に“勉強になりました”とみなさんよく言ってくれます。その中で“楽しく勉強できました”と言ってくださる方もいるんです。その「楽しく」という言葉が一番うれしいですね。論理的な説明ばかりでは、聞き飽きてしまう方もいると思います。豆知識を入れると、お客さんの食いつきが変わることに気づいたんです。」

石井さんは論理的な説明だけでなく、静岡の歴史や治水対策に関する豆知識も織り交ぜながら解説していました。直接的には災害や治水対策に関係ないようなことも、解説に興味が持てるようなことを教えてくれます。

七夕豪雨災害を含め自然災害を考えることは、原因があり、当時の様子の記録、その対策、費用の問題、現状の課題、私たちはどうすれば良いのか考える、という流れがあることをかわなび、そして石井さんの言葉から教わりました。

その考える“とりかかり”を作りたいと石井さん。七夕豪雨災害を学ぶ上で、論理的に捉えることが大切です。しかし、治水や災害対策を学ぶ“とりかかり”として、「新しいことを知り、学ぶ楽しさ」があることは、重要ではないでしょうか。学びの楽しさを、かわなびでは体感することができます。

3.「水害は怖い」から目を背けない 今を生きる私たちが考えるべきこと

石井さんは、かわなびのスタッフとして一番伝えたいことは「水害は怖いこと」だと言います。

「“水害は怖い”とわかってほしいです。人が亡くなっていますから。怖いから見ない、で終わらせないでほしい。ちゃんと歴史や情報を見て、正しく学習してほしいと思っています。」

水害にとどまらず、自然災害はいつ何が起こってもおかしくありません。そんな自然と付き合っていくために、恐怖に目を向けた上で自然災害に対して何ができるのか考えていく必要があります。

取材を終えて

七夕豪雨災害、水害を学ぶ。正しく学んだ上で、何ができるか考える。学ぶことができる施設が「かわなび」です。

「一つ知らないことが分かると、100個知らないことが見えてくる。」

この石井さんの言葉通り、かわなびでは自分の知らないことが次々に見えてきました。七夕豪雨災害が起きた原因は、川の地形以外にあったのか。当時の被害状況を見た時、自分ごととして捉えた上でどのように行動したらよいのか。私も、水害への恐怖に対して自分ごととして目を向けた上で疑問一つ一つに向き合っていこうと思いました。正しく七夕豪雨災害を理解し、発生から50年後の今を生きる私たちができることを考えていくべきだと感じます。

県民だより6月号(「七夕豪雨災害」から50年 ほか)

―――↓問い合わせ―――――――
県広聴広報課 電話054(221)2231 FAX054(254)4032

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