フカボリ
水難事故はどう防ぐ?知っておきたい水辺の危険
2024年7月31日
いよいよ夏本番!記録的な猛暑が続く今年の夏は、海や川など水辺のレジャーに行こうと計画中の方も多いのではないでしょうか?そんなときに注意しなければいけないのが、水難事故です。残念ながら、毎年、7~9月は多くの事故が発生しています。そこで今回は海の事例を中心に、水難事故を防ぐためにはどうしたら良いのか、海上保安庁清水海上保安部の中川さんにお話を伺ってきました。
県民だより8月号(8月1日発行)と併せてご覧ください。
目次
1.近年の水難事故の状況
-近年の水難事故の状況について教えてください-
水難事故の発生件数は、7~9月が多くなっています。特に夏休みにご家族でお出かけする機会も多い8月は全国的に多くなっています。レジャー中の事故が多く、海ではSUPの事故が増えていて、帰還不能と呼ばれる波や風が強くなり、帰ってくることができなくなる事故が多発しています。その他、遊泳中の事故や釣り人の海中転落による事故も毎年多く発生しています。
2.水難事故を予防するためにできること(事前準備)
-水難事故を予防するためにはどういったことができるでしょうか-
まずは、ライフジャケットの着用です。遊泳をするときや釣りなど水辺に行く際には、必ずライフジャケットを着用していただきたいです。
ライフジャケットには主に膨張式と固形式の二つの種類がありますが、固形式のライフジャケットを推奨してます。膨張式の場合は、万が一の時に膨らまないことのないよう、使用前に必ず点検をしてから使用してください。これから購入される方は、海上保安庁総合情報サイト「Water Safety Guide」に推奨しているライフジャケットについても説明していますので参考にしてみてください。
-ライフジャケットを着ていても事故は起きる?-
ライフジャケットを着用していたが、事故にあった事例もあります。主な事故原因は、膨張式のライフジャケットが正しく作動しなかったこと、適切なサイズのものを選んでいなかったことがあげられます。子どもが大人のサイズのものを着用するなど正しいサイズを選んでいなかったために、落水した際にライフジャケットがずれて逆に危なくなってしまうということもあります。適したサイズのものを正しく着用することが重要です。
ただし、適切にライフジャケットを着用すればそれで安心というわけではありません。昨年は、ライフジャケットを着用したお子さんが沖に流されたという事例も発生しました。ライフジャケットはあくまでも溺れないということに特化しているだけです。着用することで沈むことはなくなりますが、浮き輪同様、流れに逆らうことはできません。安全な場所で、ライフジャケットを着用しても小さなお子さんと一緒の場合は、目を離さないようにしていただきたいです。
ーおすすめの対策はありますか?-
スマートフォンをひもがついた防水パックなどにいれて首からかけておくこともおすすめです。万が一身動きが取れなくなった場合に、連絡手段を確保しておくことで助かる可能性も高まります。実際に、過去には海から転落した釣り人が、ライフジャケットを着用しスマートフォンを防水パックに入れて携帯していたことで助かったという事例もありました。スマートフォンを携帯する際には、位置情報をONにしておくことを忘れずに。
-その他には重要なことはありますか?-
大前提ですが、安全な区域でマリンレジャーを楽しむことです。海には、水深が深い場所や潮の流れが強い場所など、海岸からでは目に見えない危険が潜んでいます。そういった場所を避けて安全な場所でレジャーを楽しんでいただきたいです。
-危険な場所はどうやって確認できるんですか?-
現地にある表示に従っていただきたいです。海岸の危険な場所には管理者によって立ち入りを禁止する看板が設置されています。そういった場所は、転落等の危険がある場所や落ちてしまうと自力では上ることが難しい場所など、その危険性から立ち入りが禁止されています。現地の表示を必ず守り、そういった場所には絶対に立ち入らないようにしてください。
-海水浴場の場合は?-
海水浴場の遊泳可能な期間、エリアを守ることです。海水浴場として開設されている海では、管理している市町等で、海水浴場を開く期間や時間がホームページ等で発表されます。また、遊泳可能なエリアがブイで区切られており、定められた時間内であれば、監視員が常駐しています。海水浴に行く前に、まずは行こうと思っている海水浴場のホームページ等を確認して、安全設備が整った場所で、お楽しみいただきたいと思います。
-天気予報等を事前に確認しておくことも必須ですよね-
悪天候はもちろん、波の高さ、風の強さにも注意していただきたいです。風が強いことで、帰還不能となる危険もあります。晴れていても波の高さや、風の強さにも注意を払い、海が荒れそうなときには近づかないようにしてください。
3.事故にあったら、事故に遭遇したら
-事故を目撃した場合、通報はどこにしたら良いでしょうか?-
118番にかけていただくと海上保安庁につながりますので、海の事故でしたら118番にかけていただくのが一番です。ただし、思いつかなければ110番や119番にかけていただいても大丈夫です。それぞれ連携しているのでどこにかけても連絡が来るようになっています。
位置情報をオンにした状態で、118番にかけていただければかかってきた電話番号の場所が分かるようになっています。海では自分がどこにいるのか分からなくなってしまう可能性もあります。そういった場合でも慌てず、位置情報をオンにして連絡いただければ海上保安庁で位置を把握し、救助に向かうことができます。
-溺れている方を見かけたときはどうしたら良いですか?-
水の中は、潮の流れが早い箇所もあり、助けに行った方が犠牲となる事故も起きています。決して自ら水の中に助けに入っていこうとはせず、浮きや発泡スチロールなど浮くものを投げて溺れている方が浮くことができる状態を作ってあげることが必要です。
自分一人で対処しようとするのではなく、周りに助けを求めて、手分けして対応しましょう。
-周りに浮き等がない場合は?-
2リットルのペットボトル等でも、全体重を支えるまでは難しくてもかなり助けになりますよ。
-自分が事故にあった場合はどうしたら良い?-
とにかく自分の存在を周りに知らせるということが第一です。ライフジャケットを着ているのであれば、付属の笛を吹くのが有効です。大声を出して周りの方に気づいてもらうという手段もありますが、ライフジャケットを着用していない場合、肺の中の空気を出してしまい、沈んでしまうため大変危険です。万が一の時に周りが気づくことができるよう、海では単独で行動せず、ライフジャケットを着用することが重要です。
-これからマリンレジャーを楽しもうと考えている県民の方へのメッセージをおねがいします-
繰り返しになりますが、マリンレジャーを楽しまれる場合は、ライフジャケットを必ず身に着けて遊んでいただきたいです。釣りの方も同様です。堤防なら大丈夫だろうと思っていても、一発大波で足をすくわれたり、大物が釣れて引き込まれるなど、さまざまな理由で足を滑らせる危険があります。現地についてから着用するのではなく、着用してから向かうようにしていただきたいです。
海の気象や海の安全情報については、「海しる」というホームページで確認することができます。海流や港の情報など海に関するさまざまな情報を見ることができますので、こちらもぜひ活用してください。
去年、遊泳中に海上保安庁が認知した事故は全国で250人でした。そのうち海水浴場以外のところで行方不明となった方は、173人で、約7割の方が海水浴場以外のところで事故にあっています。きちんと管理された海水浴場で楽しむことを徹底するだけでも、かなりの事故が減らせると思います。
事前準備をきちんとして、安全にマリンレジャーを楽しんでください。
取材を終えて
筆者も夏になると、涼を求めて水辺へ行きたくなります。海水浴などのマリンレジャーはもちろん、海岸や河原でのBBQなど、水辺ではさまざまな楽しみがあります。
今回、教えていただいた対策はどれも簡単で誰にでもできるようなものばかりでした。水辺での油断は重大な事故につながる可能性もあります。これまで大丈夫だったからと気を緩めずに、きちんと事前準備対策をして、安全で楽しい夏を過ごしましょう。
→県民だより8月号
―――↓問い合わせ―――――――
県広聴広報課 電話054(221)2231 FAX054(254)4032