フカボリ

🐾開所前の動物愛護センター「しっぽのバトン」に足を運んでみました

2025年10月28日

はじめに
静岡県では、人と動物が共に暮らす社会を目指して、さまざまな取り組みが行われています。その成果の一つとして、県内の動物の殺処分数は年々減少してきました。しかし、残念ながらまだ「ゼロ」には至っていません。
その背景には、人と動物の共生に向けた意識の違いなど、さまざまな課題があります。
そんな中、新たに静岡県動物愛護センター「しっぽのバトン」(富士市大渕。令和7年11月23日開所)が誕生します。
今回の取材では、センター開所に込められた思いや施設の工夫、そして“人と動物が共に生きる社会”に向けた取り組みについてお話を伺いました。
この記事を通じて、動物たちの命を守るために、私たち一人一人にできることを一緒に考えていきたいと思います。

学生特派員:髙塚

目次

1.動物愛護センター開所について
2.人と動物が共生する社会になるためには
3.動物愛護センターの様子
4.結び

1.動物愛護センター開所について

● 開所の目的
県の動物愛護拠点である「動物管理指導センター(旧センター/浜松市中央区大山町)」は、施設の老朽化や収容機能の不足など、さまざまな課題を抱えていました。
こうした課題を解決し、より実効性のある動物愛護施策を進めるために、有識者やボランティアの意見を取り入れながら、富士見学園跡地をリノベーションして新たに整備されたのが静岡県動物愛護センター「しっぽのバトン」です。

施設外観:緑に囲まれた静かな環境に建つセンターは、温かみのある木のデザインが印象的です。


● センターの基本理念・目指す姿
新センターでは、次の4つのコンセプトを掲げています。
1.命をつなぐ拠点
 動物たちを新しい飼い主へとつなぐ“架け橋”として、収容機能の充実と適正譲渡の推進を図ります。
2.普及啓発の拠点
 動物とのふれあいや学びの場を通じて、動物愛護教育や適正飼養に関する理解を広げます。
3.ボランティア支援・育成の拠点
 研修会や講習会などを通じて活動を支援し、新たなボランティアの育成・発掘も行います。
4.災害時動物対策の拠点
 被災動物の救護拠点として、災害時に備えたマニュアルの整備や啓発活動を進めます。
これら4つの柱をもとに、センターは“人と動物のより良い関係づくり”を目指して運営されます。


● 県が掲げる目標
「静岡県動物愛護管理推進計画2021」に基づき、適正飼養・適正譲渡を推進しながら、「人と動物が共生する社会」の実現を目指しています。
その最終的な目標は――「殺処分ゼロ」。
命ある動物の尊厳を守りながら、人と動物が安全に共存できる社会を目指しています。

計画の詳細はこちら(県HP:静岡県動物愛護管理推進計画について)


● センター愛称「しっぽのバトン」決定の経緯について
新センターの開所にあたり、多くの県民の皆さまに親しみを持ってもらい、利用してもらうため愛称を募集しました。総応募数105件の中から、富士市の中学2年生清くるみさんが考えた「しっぽのバトン」が選ばれました。
この愛称には、たくさんの人達が力を出し合い、協力して動物の命がずっと続いていくよう願いが込められています。

愛称募集時のチラシ

● ネーミングライツパートナーの募集について
また、事業者との協働の下に動物愛護センターを有効に活用することにより新たな歳入を確保などを目的として、動物愛護センターの諸室等にふさわしい愛称(企業名、商品名等)を付けることができる権利(ネーミングライツ)を取得するパートナー(以下「ネーミングライツパートナー」という。)を募集しました。
ネーミングライツパートナーとして、ドッグランはペット用品を扱う(株)コーチョー(富士市)が「コーチョードッグラン」、ふれあいエリアは袋井市に工場がある日本ペットフード(株)(東京都)が「ビタワンふれあいエリア」と名付けました。

詳しくはこちら(県HP:静岡県動物愛護センターネーミングライツパートナー募集)

ドッグラン
ふれあいエリアの一部(猫展示エリア)

2.人と動物が共生する社会になるためには

● 殺処分の実態 

動物愛護センター作成

上記のグラフが示す通り、静岡県の犬猫の殺処分数は平成20年度の9,141頭から、令和6年度には33頭へと大幅に減少しました。
9,000頭以上の減少という成果の裏には、動物愛護、適正飼養の普及啓発やTNR活動の推進をおこなってきた行政やボランティア、そして県民の努力があります。
しかし、「ゼロ」にはまだ届いていません。


● 私たち一人ひとりにできること
・ペットを「家族」として最後まで責任をもって飼うこと。
・譲渡会や保護団体を通じた“迎え方”を選ぶこと。
・SNSなどで動物愛護の情報に関心を持ったり、活動を広めたりすること。
小さな行動の積み重ねが、“殺処分ゼロ”への大きな一歩になります。

3.動物愛護センター内の様子

● 施設の設備
見学スペースや研修室のほか、譲渡を前提とした犬や猫の飼育室も整備されています。

研修ルーム
トリミングルーム

● 譲渡・保護動物スペースの工夫
動物たちが落ち着いて過ごせるよう、自然光が入る明るい室内設計になっており、ガラス越しに見学できるスペースもあります。
訪れる人が「次に迎える命」と向き合えるような工夫が随所に感じられました。

犬の譲渡室
猫展示エリアと猫マッチングルーム

4.結び

取材の最後に、センター所長の塩崎さんにお話を伺いました。

「動物愛護センターは、街の中心から少し離れた場所にあります。気軽に立ち寄りづらいかもしれませんが、ぜひ一度、実際に来て雰囲気を感じてもらいたいです。
今後はイベントなども開催していく予定なので、その際には気軽に足を運んでみてください。
また、有料にはなりますが、ドッグランの利用もできますので、愛犬と一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。」
静かな環境の中で、動物とふれあいながら学べるこのセンターは、地域の人々にとっても新しい交流の場になりそうです。

読者に向けて
今回、実際に動物愛護センターを訪れてみて、ここは“動物を保護する場所”だけでなく、“人と動物の共生を学ぶ場所”でもあると強く感じました。
動物たちが新しい飼い主と出会うまでの時間を安心して過ごせるよう、様々な設備が整い、温かみを感じることができる場所だと思いました。
人と動物が互いを理解し、支え合える社会をつくるためには、今、私たち一人一人がどう関わるかが問われています。
「動物の命を守る」というと少し難しく聞こえるかもしれませんが、まずは関心を持つこと、知ることが第一歩だと思います。
この記事を読んでくださった皆さんが、動物たちとの暮らしを少しでも身近に感じ、関心を持つきっかけになれば幸いです。
そして、「ちょっと行ってみようかな」と思った方は、ぜひ一度、動物愛護センターを訪れてみてください。
緑に囲まれた穏やかな場所で、動物たちの表情やスタッフの想いに触れることで、きっと何か新しい気づきが得られるはずです。


-施設情報ー
県動物愛護センター「しっぽのバトン」 令和7年11月23日(日・祝)開所
住所:富士市大渕2158(旧県立富士見学園跡地)
休館日:年末年始(12/29~1/3)
開館時間:9時~16時45分
詳しくはこちら(県HP)

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