フカボリ

静岡県が目指す「こどもまんなか社会」って?

2026年3月16日

こんにちは。しずおかメディアチャンネル学生特派員の大石です。

先日、令和8年度に向けた静岡県の予算案が発表されました。

その中で私が特に気になったキーワードが、「こどもまんなか社会」と「しずおか・地域こども未来羅針盤」です。

これまで、大学での学びや学生特派員としての活動を通して、主に「学校」という現場の視点から教育問題に触れる機会が多かったからこそ、今回はさらに視野を広げ、県が社会全体でこどもたちをどう支えようとしているのかを探りたいと思いました。

そもそも「こどもまんなか社会」ってどんな社会?

「しずおか・地域こども未来羅針盤」ってどんなもの?

そんな素朴な疑問を胸に、学生特派員が静岡県こども政策課の芦澤さんにお話を伺ってきました。

▲(右奥)静岡県こども政策課 芦澤さん
(手前)学生特派員

目次

1.「こどもまんなか社会」とは?

2.具体的な取り組みの紹介

3.「しずおか・地域こども未来羅針盤」と担当者の思い

4.県民へのメッセージ

1.「こどもまんなか社会」とは?

 そもそも「こどもまんなか社会」とは、どのような社会を指すのでしょうか。

こども家庭庁では、この言葉を「常にこどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する政策を社会の真ん中に据えること」としています。つまり、大人の都合で決めるのではなく、こどもの視点に立って意見を聴き、健やかな成長や権利を「社会全体」で強力にサポートしていくという考え方です。

―では、静岡県が目指す「こどもまんなか社会」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

国のこども家庭庁が創設され、『こども大綱』が策定されたことが県の取り組みの大きなきっかけとなっています。

静岡県でも「こどもや若者の意見を反映し、誰もが自分らしく生きていける社会の実現」という方針をベースに、具体的な数値目標を掲げ、その実現を目指しています。

その目標に向けて、県として一番大切にしているのが「こえ」を聴くことです。現在、静岡県では、こどもや若者がWEB上から直接意見を届けられるオンラインプラットフォーム(※こえのもりしずおか)を開設しています。

こえのもりしずおか

ただこえを聴いて現状や課題を知るだけでなく、県ではその後の「フィードバック」を非常に重視しています。

勇気を出してこえを届けてくれたこどもたちは、「自分の意見はその後どうなったんだろう?」と気になりますよね。

だからこそ、「あなたのこえがこんなふうに生かされましたよ」としっかりお返しをすることを大切にしているんです。

 ―県内の小中高校に通うこどもたちは、学校で配布されているGIGA端末(タブレットやPC)から簡単にアクセスすることができ、現在なんと何千人ものこえが届いているそうです。県はこれらのこえを、各市町と連携しながら実際の施策に生かしています。

2.具体的な取り組みの紹介

 ―集まったこえの中で、実際に県の施策や計画に反映されたものはありますか。

 ▲「こえのもりしずおか」によるこども・若者の意見聴取結果

こどもたちが「重要だ」「変えたい」と思っている課題として、「いじめ」や「自殺」といった切実なこえが多く寄せられ、県としてそれらを重点的に取り組む施策に位置付けることができました。また、インフラ整備の面では「自転車が危ない」という日常のリアルなこえが届き、実際の計画づくりに生かしています。

さらに、『こども・若者意見提案実現プロジェクト』という取り組みも行いました

 ―このプロジェクトでは、教員向けの講習や子育て応援企画の他、なんと小学生自身が考えたアイデアが形になったケースもあるそうです。


▲こども・若者意見提案実現プロジェクトで実現した講座など

ある地域で、「学童保育に入れる年齢を過ぎたこどもが、放課後に保護者が帰宅するまで一人で過ごすのが寂しい」というこえがあがりました。そこはお年寄りが多く住む地域だったこともあり、そのこえから「こどもとお年寄りが交流でき、放課後にこどもたちの笑いこえが響く居場所づくり」という温かい企画が生まれました。

私が何より驚いたのは、この小学生のアイデアが、わずか半年というスピードで実際のプロジェクトとして形になったということです。

こどもたちの小さなつぶやきや「寂しい」という思いをすくい上げ、大人が全力で実現していく。こうした「こえのもりしずおか」のような仕組みや、こどものこえを直接形にする取り組みは全国的にもまだ珍しく、静岡県の大きな強みになっているそうです。

3.「しずおか・地域こども未来羅針盤」と担当者の思い

 ―「しずおか・地域こども未来羅針盤」は、どのような目的で作られるものなのでしょうか。

この羅針盤のベースとなるデータ分析は、平成27年2015年)から本格化し、これまで何度もブラッシュアップを重ねてきました。

合計特殊出生率に影響を与える要因をレーダーチャートで可視化しています。これによりこの地域は県平均と比べて、にぎわいや働く場が少ないといった地域の強みや弱みをパッと見て分析できるようになりました。

これまでは「客観指標」から要因を分析していましたが、来年度(令和8年度)からは、新たに「主観指標」を取り入れていくのが最大のポイントです。

▲しずおか・地域こども未来羅針盤の主観指標

実際にアンケートを行い「こどもを持ちたいと思っているか」「今の地域に満足しているか」といった県民の皆さんのリアルな「気持ち」を調査します。客観的な数字と主観的な気持ちの両面からアプローチすることで、より地域の実態に合った分析ができるようになると考えています。

▲しずおか・地域こども未来羅針盤

―この羅針盤を活用することで、どのような未来像を描いているのでしょうか。

羅針盤を使って地域の今の状況を正確に把握することで、「少子化を抑制する対策」に加えて「少子化に適応した対策」ができると考えています。

正直なところ、人口減少そのものを完全に食い止めることは非常に難しい時代です。

しかし、変化する社会にしっかりと対応していくことは可能です。

今いるこどもたちを社会全体で大切に育むことで、地域は間違いなく豊かになります。そして、その豊かさや居心地の良さが、結果として若者や子育て世代の県外への転出を防ぐことにもつながっていくと考えています。

―どのように活用してほしいと考えていますか。特に注目してほしいポイントがあれば教えてください。

まずは、行政でまちづくりを担当する人たちに役立ててほしいと考えています。例えば、データ上は「子育て環境が整っていない」地域でも、住民の方々は「十分整っている」と感じているケースがあるかもしれませんし、もちろんその逆もあります。

そうした「データ(客観)」と「住民の感覚(主観)」のズレを、この羅針盤を使って目に見える形でお伝えしていく必要があります。

また、異なる2つの事象(データ)を重ね合わせて考えることで、課題解決への新しい視点が見えてきます。

先行してこうした考え方を取り入れている地域では「まちなかのにぎわいが少ない」という課題に対し「働く場所や活気が足りないからだ」と分析し、起業支援に力を入れたという成功例もありました。

静岡県でも新年度から、こうしたデータを基に、市町と一緒にこれからのまちづくりを具体的に考えていくための予算をしっかりと確保しています。

―令和8年度の事業で、特に注力しているものはありますか。

▲令和8年度事業

まずは、市町と連携して、それぞれの地域の実情に合った子育て環境づくりの戦略(ロジックフロー)を策定していく予定です。

また、新年度は地域全体で子育て環境を改善する取り組みを進めます。

行政だけでなく民間企業とも協力し、例えばスーパーに「子育て世帯優先の駐車場」を設けたり、お出かけ先で利用できる「ベビーカーシェアリング(ベビーカーの共同利用サービス)」を導入したりと、皆さんが日常生活の中で「子育てが社会から応援されている」と実感できるような施策を行っていきたいと考えています。

―担当者としてこどもたちにどんな未来を届けたいと考えていますか。

 思い2つあります。まず、子育て中の方々に自分たちは社会からしっかり応援されているんだという安心感を持ってもらうこと。

そしてもう一つは、こどもたち自身が主役となり、それぞれの夢を叶えられる社会にしていくことです。結婚や出産への支援はもちろんですが、その先にいる「こどもたちの未来」そのものを応援できる県にしていきたいですね。

4.県民へのメッセージ

―最後に、県民一人一人が日常の中でできる「こどもまんなか」のアクションがあれば教えてください。

▲こども政策課の芦澤さん

こどもたちの意見というのは、本当に本質を突いていて「的を射ている」と感じることが何度もあります。寄せられたメッセージを読みながら、思わず泣いてしまうこともあるほどです。

だからこそ、大人の皆さんには、こどもたちのこえを決して軽く扱わず、まずはきちんと耳を傾けてあげてほしいと思います。そして、そのこえをどうやって社会に生かせるか、どんな行動を起こせるかを一緒に考えていってほしいのです。

こどもや若者自身が、「自分のこえがちゃんと世の中の役に立っているんだ」と感じられる社会にしていくこと。県や企業はもちろん、地域に暮らす大人たちも含めた社会全体で、この姿勢を一番大切にしていきたいと思っています。

-芦澤さんのお話を伺い、単なる制度づくりではなく、こどもや若者たち子育て世代の方たち一人一人の「心」に本気で寄り添おうとしているのだと胸が熱くなるのを感じました。

そして、教育や子育ての支援には、学校という枠を超えた「地域や社会全体を巻き込む多様な形」があるのだと、私自身の視野も大きく広がりました。

今回の取材を通して最も印象に残ったのは、新しい制度を作る前に、まずは県民やこどもたちの本当のこえに耳を傾ける「傾聴」の姿勢です。

私も学生特派員を卒業し、春から新たな一歩を踏み出します。

ここで学んだ「相手に寄り添い、そのこえに深く耳を傾ける姿勢」を、これからのどのような場面でも大切にしていきたいと思います。

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