フカボリ

知られざるさくらの魅力~企画展「サクラ×さくら」に迫る~

2026年4月1日

みなさん、こんにちは!学生特派員の高塚です。
春になると、日本各地で桜が咲き誇り、多くの人がお花見を楽しみます。桜は日本の春を象徴する存在であり、古くから私たちの生活や文化と深く結びついてきました。
今回は、そんな身近な「桜」をテーマにした、ふじのくに地球環境史ミュージアムの企画展「サクラ×さくら ―山・里・海を彩る『和』の魅惑―」を取材しました。
山や里に咲く桜だけでなく、駿河湾のサクラエビなど「さくら」という名前を持つ生き物にも注目したこの企画展。自然と文化のつながりを感じられる展示の魅力をお届けします。

企画展「サクラ×さくら ―山・里・海を彩る「和」の魅惑―」詳細は画像をクリック

目次
1.ふじのくに地球環境史ミュージアムって?
2.企画展「サクラ×さくら」とは?その見どころに迫る!
3.講演会の様子をお届け!
4.企画展担当研究員の方に聞いてみた!
5.結び

1.ふじのくに地球環境史ミュージアムって?

静岡市駿河区にあるふじのくに地球環境史ミュージアムは、自然史や地球環境について学ぶことができる県立の博物館です。
この施設は、かつて高校だった校舎を再利用して作られており、教室や使用されていた椅子、机などを活用した展示空間が大きな特徴です。学校の雰囲気を残した空間の中で、自然や地球環境について学ぶことができます。
館内では、生物多様性や地球の歴史、人と自然の関係などをテーマにした展示が行われています。静岡の自然環境を入り口に、地球規模の環境問題についても考えることができる博物館です。

▲展示室4「ふじのくにの大地」。コンセプトは「連鎖」。

展示室には、それぞれのコンセプトに沿ったさまざまな工夫が施されています。

たとえば展示室4のコンセプトは「連鎖」なのですが、その名の通り、生物同士のつながりを表した展示となっており、生き物同士がどのように関わり合っているのかを視覚的に感じることができます。さらに、展示室に置かれている椅子に来館者自身が座ることで、展示の“連鎖”が完成する仕組みになっており、来館者も展示の一部として体験できるユニークな展示となっています。

▲展示室5「ふじのくにの環境史」。
コンセプトは「均衡」。

他にも、展示室5のコンセプトは「均衡」であり、ここではシーソーをイメージした展示方法が採用されていて、生き物同士のバランスや関係性を表現しています。展示されているジオラマは非常に細かく作り込まれており、食事をしている様子や周囲の環境まで丁寧に再現されています。特に、川の中をよく見ると魚が泳いでいる様子まで表現されており、近くで見ることでその細かな造形に気づくことができます。

このように、それぞれの展示室にはコンセプトに合わせた興味深い工夫が数多く見られます。ぜひ実際に足を運び、展示の細かな作り込みや体験型の仕掛けを体感してみてください!

ふじミューの魅力についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もチェック!

百年後の静岡が豊かであるために ~ふじのくに地球環境史ミュージアムの軌跡~

2.企画展「サクラ×さくら」とは?その見どころに迫る!

本日は、このふじのくに地球環境史ミュージアムで開催されている企画展「サクラ×さくら」を取材してきました。日本人にとって身近な存在である「桜」をテーマにしたこの企画展では、山や里に咲くサクラから海の「さくら」まで、さまざまな視点から桜の魅力を知ることができます。今回の企画展は、「山の桜 里の桜」パートと「海の『さくら』」パートの2つのパートで構成されています。それぞれのパートでは、陸と海という異なる視点から「さくら」の魅力が紹介されています。

まずは、「山の桜 里の桜」パートから見ていきましょう。

「山の桜 里の桜」パート

「山の桜 里の桜」パートでは、日本で見られるさまざまなサクラの種類が紹介されています。展示室内には多くのサクラの標本が並び、日本にどれほど多様なサクラが存在しているのかを実感することができます。日本には多くの野生種や栽培品種があり、地域や環境によってさまざまなサクラが見られることが紹介されています。
まず、サクラがどのような植物なのかという基本的な解説があります。サクラはバラ科サクラ属の植物で、日本では古くから人々に親しまれてきました。展示では、サクラの特徴や種類の違いに加えて、これまで行われてきたサクラ研究の歴史についても紹介されており、どのようにサクラが分類され研究されてきたのかを知ることができます。
展示方法にも工夫があり、学校の机がサクラの花の形に配置されているのが印象的でした。机の上には、樹脂の中に実際のサクラの花を閉じ込めた標本が置かれており、上からだけでなく横からも見ることができる立体的な展示となっています。透明な樹脂の中に咲くサクラを間近で観察することで、花の形や色の違いなどをより詳しく見ることができます。

▲机の配置でサクラの花を再現
▲サクラの花のアクリル標本

また、桜が人々の暮らしや文化の中でどのように関わってきたのかを紹介する展示もありました。
「食」に関する展示では、和菓子の桜餅に使われている桜葉がオオシマザクラの葉であることが紹介されています。桜は花を見るだけでなく、食文化の中でも利用されていることがわかります。
「匠」に見る桜の展示では、桜の樹皮を利用した伝統工芸である樺(かば)細工が紹介されていました。桜の樹皮の模様や質感を生かした工芸品は、日本の伝統的な技術の一つとして受け継がれています。
さらに、「歌」や「画」に見る桜の展示では、桜が日本の文学や芸術の中でどのように表現されてきたのかを知ることができます。
万葉集や古今和歌集などの歌集には桜を詠んだ和歌が数多く残されており、古くから桜が日本人にとって特別な存在であったことが伝わってきます。このように、植物としてのサクラだけでなく、食・工芸・文学などさまざまな視点から桜を紹介しており、とても魅力的な展示となっています。

▲日本の文化・芸術に欠かせない桜

さらに、展示の中には、来館者が参加できるコーナーも設けられていました。その一つが「推し桜総選挙」です。このコーナーでは、展示されているさまざまなサクラの中から自分の好きなサクラを選び、投票することができます。たくさんの種類のサクラが紹介されているからこそ、それぞれのサクラの特徴を見比べながら、自分のお気に入りのサクラを見つける楽しさがあります。

また、「桜巡礼マップ」という展示もありました。これは、静岡県内の代表的なお花見スポットとその情報が地図にまとめられている展示です。さらに、来館者自身がおすすめのお花見スポットを書き加えることができ、まさに「皆で作る地図」となっています。ほかの来館者が書いたさまざまなスポットを知ることで、「こんな場所にも桜があるんだ」と新たな発見があり、実際に行ってみたいと感じます。また、自分自身も書き込むことでおすすめのスポットを共有することができ、来館者同士で桜の魅力を広げていくことができる展示になっていました。

このように、展示を見るだけでなく、来館者自身が参加しながら桜について楽しみながら学ぶことができる点も、この企画展の魅力の一つだと感じます。

▲推し桜総選挙!来館者の皆さんの投票で盛り上がっています

「海の『さくら』」パート

「海の『さくら』」パートでは、「さくら」という名前を持つ海の生き物としてサクラエビが紹介されています。
サクラエビとはどのような生き物なのかという基本的な特徴が解説されており、実際の標本を見ることでその姿を間近で観察することができます。

また、サクラエビは世界でも限られた場所でしか漁獲されておらず、日本では駿河湾が唯一の漁場として知られています。展示では、なぜ駿河湾でサクラエビ漁が行われているのかについても紹介されており、湾の深い海底地形や海の環境がサクラエビの生息に適していることが説明されていました。

さらに、サクラエビ漁の歴史や、人々の暮らしとの関わりについても紹介されています。静岡では古くからサクラエビ漁が行われており、地域の食文化を支える存在となっています。展示では、サクラエビと混獲される魚の標本も展示されていたりと、実際の漁業の様子を知ることができます。

また、駿河湾産のサクラエビと台湾産のサクラエビを実際に見比べることができる展示もあり、それぞれの違いを観察することができます。普段食材として目にするサクラエビについて、その生態や環境、そして人との関わりまで幅広く学ぶことができる展示となっていました。

さらに展示では、サクラエビ資源の保護やこれからの海の環境についても触れられており、自然と人間の関係について考えるきっかけを与えてくれる内容にもなっていました。

▲海のさくらも、山のサクラと同じくらい魅力的です

ほかにも、ふじのくに地球環境史ミュージアムにある図鑑カフェでは、企画展「サクラ×さくら」に合わせたグッズも販売されています。桜のキーホルダーや絵葉書、桜えびをイメージしたメッセージカードなどといった展示に関連したこの企画展ならではの商品が並んでいます。

展示を楽しんだ後は、ぜひこのミュージアムショップにも立ち寄ってみてください。華やかなデザインのグッズは、来館の記念やお土産にもぴったりです。

▲企画展「サクラ×さくら」に関連したグッズ 綺麗なポストカードは贈り物にも!

3.講演会の様子をお届け!

企画展に関連して行われた講演会では、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所長の勝木俊雄先生が登壇し、「静岡のサクラのこれまで、これから」をテーマに講演が行われました。サクラ研究の第一人者である勝木先生から、日本のお花見文化の歴史から静岡のサクラの特徴、そして将来の課題まで、さまざまな視点から桜の魅力についてのお話を聞くことが出来ました。

講演ではまず、日本におけるお花見文化の歴史について紹介がありました。奈良時代の歌集『万葉集』には桜を詠んだ歌が多く残されており、当時の人々は桜の美しさだけでなく、散りゆく姿にも人生を重ねていたといいます。現在のように桜の下で食事を楽しむお花見のスタイルが広まったのは江戸時代で、庶民の娯楽として桜の名所に人々が集まり、食事をしながら花を楽しむ文化が生まれました。このようなお花見のスタイルは日本独自の文化であり、現在では海外からの観光客にも人気の風景となっています。

また、日本には多くのサクラがあるように思えますが、植物学的に見ると野生種は約10種類だといいます。そのうち多くの種を静岡県で見ることができ、ヤマザクラやオオシマザクラ、マメザクラなど、地域ごとに特徴のある桜が分布しています。静岡は山地から海までの高低差が大きく、多様な環境が存在するため、さまざまなサクラが育つ条件がそろっているのです。

さらに講演では、サクラの保存の歴史についても触れられました。江戸時代には多くの栽培品種のサクラが存在していましたが、明治以降、成長が早く花付きの良いソメイヨシノが全国に広まったことで、古い品種の多くが失われかけました。そうした貴重な品種を収集し、保存してきた場所の一つが三島市にある国立遺伝学研究所です。これらの場所で桜が守られてきたことによって、現在も多様な栽培品種を見ることができるといいます。

また、近年は気候変動とサクラの関係も懸念されています。サクラは冬の寒さを経験することで開花の準備をする「休眠打破」という仕組みを持っていますが、温暖化が進むとこの仕組みがうまく働かなくなる可能性があります。そのため、将来的には静岡市内でもソメイヨシノが満開になりにくくなる可能性があるというお話もあり、とても印象的なお話でした。

これからはその地域の環境に合ったサクラを大切にしていくことが重要だといいます。河津桜や地域の野生種など、多様なサクラを守りながら育てていくことが、未来へとお花見文化を引き継いでいくことにつながります。

講演を通して、サクラは単なる春の花ではなく、自然環境や文化、そして未来とも深く関わる存在であることを改めて実感することができました。

▲講演会の様子

4.企画展担当研究員の方に聞いてみた!

今回の企画展「サクラ×さくら」を担当された研究員の方に、企画展を開催した目的や展示の見どころなどについてお話を伺いました。

Q. この企画展を開催した目的を教えてください。
A.このふじのくに地球環境史ミュージアムは、静岡の自然環境・人・と自然の関わりの歴史を学び、地球環境の今やこれからについて考えていく静岡県立の自然系博物館です。今回の企画展でも、そうしたミュージアムのコンセプトに合ったテーマとして「サクラ」と「サクラエビ」を取り上げました。サクラエビは、実は日本ではほとんど駿河湾でしか漁獲されない、とても興味深い生き物です。ほかの地域でもまれに見つかることはありますが、まとまった量がとれるのは駿河湾だけで、その理由をたどっていくと、静岡の独特な海の地形や環境、地球の歴史など、さまざまなものを私たちに伝えてくれます。そういった意味で、サクラエビはいつか企画展で扱いたいと考えていました。そして今回、サクラエビを紹介するのであれば、サクラも一緒に取り上げようと思いました。サクラは多くの人にとって身近で親しみのある存在であるため、より多くの人に興味この展示にを持っていただけるに違いありません。サクラやサクラエビは、ミュージアムが伝えたいことを表現できる良いテーマではないかと考え、この展示を企画しました。

Q.展示の見どころを教えてください。
A.今回の展示の大きな見どころの一つは、アクリル樹脂の中に本物のサクラの花を封入したアクリル標本です。展示されているサクラはすべて本物で、咲いた状態のサクラをそのままの形で保存しています。今回の企画展では、静岡県内で見られるサクラを厳選して、代表的なもの100種類を並べて展示しています。サクラを扱う展示施設はいくつもありますが、これほど多くの種類をまとめて、様々な種類のサクラのアクリル標本を見比べられるような展示は今まで例がありません。

また、この標本は上からだけでなく、横や裏側などさまざまな角度から観察することができます。実は、このようにサクラの花をそのままの形でアクリルに封入するのは非常に難しい技術なんです。サクラの花は水分を多く含んでいるため、加工の際には水分を抜くなどの特別な処理が必要になります。そのため、専門の業者による高度な技術があって初めて実現できる展示です。こうして作られた標本を見て、興味を持っていただけたら、ぜひ実物を見に行ってほしいです。「さくら王国」静岡県では、正月頃から夏にかけて各地でたくさんの種類のサクラを見ることができます。実物のサクラはよりみずみずしく綺麗で標本とはまた違った魅力があるので、これをきっかけに見に行ってほしいと思います。

Q.展示づくりで苦労した点や、こだわった点はありますか?
A.今回の展示では、サクラの花をアクリル樹脂の中に封入した標本を作っていますが、これらはすべて本物のサクラの花を使っています。そのため、ちょうど良い状態で咲いた花を採集しなければならないという大変さがありました。

サクラは生き物なので、今年河津桜の開花がとても早かったように、毎年開花の時期が変わります。その中で、標本にするためには「三分咲きくらいの状態」の枝を集める必要があり、そのタイミングを見極めるのがとても大変でした。展示に使うサクラの多くは三島市にある国立遺伝学研究所の協力を得て採集しました。遺伝研には200種類以上ものサクラがあり、開花の情報をいただきながら、3月から4月は1~2週間に一回必ず足を運び、一回に20、30種類も採集することもありました。朝早く三島へ行き、午前中に枝を集め、午後には写真を撮るといった作業を繰り返していました。大変ではありましたが、サクラが好きなのでとても楽しく取り組むことができました。遺伝研の皆様の多大なご協力があって初めて実現できた展示なので、とてもありがたく感じています。

Q.このイベントを通して、来館者にどんなことを感じてほしいですか?
A.サクラといえば、多くの人はまず「ソメイヨシノ」を思い浮かべるでしょう。桜にはいろいろな種類があるということだけはなんとなく知っているという方が大半だと思います。ですが、実際に展示を見ていただき、まずは「こんなにたくさんの種類があるんだ」と興味を持っていただけたら嬉しいです。静岡県内には自然の中や植物園、公園などで見ることができるサクラがたくさんあり、実際に咲いているサクラを見ると、そのみずみずしさ、美しさに感動します。ぜひこの展示をきっかけに、野外に出て桜を楽しみながら、静岡のすごさ、面白さを感じてもらえたらうれしいです。

5.結び

今回の取材を通して、サクラはただ春に咲く美しい花というだけではなく、自然環境や歴史、文化と深く結びついた存在であることを知ることができました。普段何気なく目にしているサクラにも、さまざまな種類や背景があり、それぞれに物語があるということがとても印象的でした。

また、静岡県には多くのサクラの種類が見られることや、サクラエビなど地域ならではの自然の魅力があることも改めて感じました。展示や講演を通して、静岡の自然の奥深さを知ることができたように思います。

これからサクラの季節を迎える中で、この企画展で学んだことを思い出しながらサクラを眺めると、これまでとは少し違った見方ができるのではないでしょうか。みなさんもぜひふじのくに地球環境史ミュージアムを訪れ、サクラの新たな魅力に触れてみてください。


詳しく知りたい方はこちら

ふじのくに地球環境史ミュージアムの開館・アクセス情報などはこちら

企画展「サクラ×さくら ―山・里・海を彩る「和」の魅惑―」

FacebookTwitterLine
記事一覧へ

最新記事

サムネイル

知られざるさくらの魅力~企画展「サクラ×さくら」に…

サムネイル

貨幣の日本史から考える、現代に生きる私たちのお金と…

サムネイル

こころの不調、早めのセルフケアで予防しましょう

過去の記事