しずおかWELL-BE+ Vol.4

静岡の茶業が一丸で挑む「静岡茶ブランディングプロジェクト」

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静岡茶を取り巻く環境は厳しさを増している。急須で入れるリーフ茶の消費量が減り、生産量や産出額も落ち込む一方で、担い手不足も深刻だ。静岡茶は多様な産地と優れた技術、豊かな歴史を持ちながら世界的にはブランドとして伝わっていない。「静岡茶とは何か」という問いに、うまく答えられていないという課題を抱えている。

こうした状況を踏まえ、県は2025年、「静岡茶ブランディングプロジェクト」を立ち上げた。静岡茶本来の価値を再定義し、日本発のグローバルブランドとして世界に存在を正しく伝えていく取り組みだ。茶業関係者が一丸となり、未来に向けて動き出している。

茶園面積、荒茶生産量の推移(静岡県)

出典:農林水産統計

このページで分かること

  • 「静岡茶ブランディングプロジェクト」の狙いと特徴
  • 佐藤可士和氏と進める「価値の再定義」のプロセス
  • キックオフミーティングや現地視察で見えた静岡茶の本質
  • 公募メンバー160人による「共創」の広がり
  • 県が描く今後のロードマップ
目次
  1. 「静岡茶ブランディングプロジェクト」とは
  2. キックオフミーティングに見えた静岡茶の現在地
  3. 現地視察で再発見した静岡茶の本質
  4. 160人が参画する共創のプロジェクト
  5. 世界で選ばれる静岡茶へ

「静岡茶ブランディングプロジェクト」とは

静岡茶の潜在力は大きい。多様な産地や歴史、上質な茶葉、手もみ製茶技術に裏打ちされた生産加工技術、そして茶畑の景観など、世界に誇れる価値がそろっている。しかし、リーフ茶からペットボトル茶へと飲み方が変化し、静岡が茶どころであることを知らない人もいる。世界で茶の需要が伸びつつある今、県は静岡茶の価値を一度ゼロから見直し、世界に選ばれるブランドへ育てることを目指す。

総合プロデューサーには、大手メーカーのブランディングや今治タオルなど伝統産業の再生にも携わってきた世界的クリエイティブディレクター・佐藤可士和(かしわ)氏を起用。佐藤氏の下、行政、茶業関係団体、生産者、茶商など官民が連携し、静岡茶の価値を丁寧に整理する作業が進められている。

静岡茶ブランディングプロジェクトの体制

キックオフミーティングに見えた静岡茶の現在地

2025年7月4日に県茶業研究センターで開催されたキックオフミーティングには、生産者や茶商など約200人が参加した。生産者からは「静岡茶の多様性」「加工技術の高さ」といった強みがある一方で、後継者不足や収入の低さなどの課題が語られた。流通側からも「若い世代のリーフ茶離れ」「国内外での知名度低下」が挙げられた。

ミーティングに参加した佐藤氏は「ブランディングの目的は静岡茶を唯一無二の存在にすること」「本質的な課題を見極める前に、目の前の解決策に飛びつくとうまくいかない」と語り、まず静岡茶の価値を慎重に言語化することの重要性を強調。「競争から共創へ」「『買ってください』ではなく『欲しい』と思われる存在に」という視点は、参加者に新鮮な刺激を与えた。

また、参加者からは「これほど静岡茶に熱い思いを持つ人が集まったことに感動した」という声も上がった。こうした空気の中で、“共創”がプロジェクトの核になることが自然と共有され始めた。

キックオフミーティングの様子(県茶業研究センター)

関連リンク

しずおかメディアチャンネル「静岡茶ブランディングプロジェクト始動!【県政ニュース】」

現地視察で再発見した静岡茶の本質

佐藤氏に静岡茶の生産現場などを知ってもらうため、佐藤氏と事務局は、生産者の山水園(静岡市)や美緑園(菊川市)、県茶業研究センター、ふじのくに茶の都ミュージアムなどを視察した。平坦地と山間地の違い、栽培・製茶技術の蓄積、研究環境、輸出全盛期の蘭字ラベルなど、多様な側面に触れる機会となった。生産者が急須で入れたお茶を味わいながら、佐藤氏がそれぞれの特徴を聞く場面も見られた。

視察を通じ、佐藤氏は「本当の静岡茶のうまみを味わい、世界に打ち出せるコンテンツだと改めて感じた」と語った。一方で、「『静岡茶』とは何か」という根本的な課題も浮かび上がった。

茶生産者の株式会社美緑園 土井代表(右)から説明を受ける佐藤可士和氏(左)

160人が参画する「共創」のプロジェクト

プロジェクトメンバーの募集には、当初想定した30人を大きく超える160人からの応募があった。「静岡の茶業を何とかしたい」という強い思いが大きな原動力となっている。生産者や茶商、茶業に関わる異業種など、これまで交わる機会の少なかった人同士の語り合う場も生まれ始めた。

現在は総合プロデューサーや茶業関係者などとの意見交換を重ねながら、ブランドのベース価値となるブランドコンセプト構築を進めている。意見交換では、静岡茶の本来価値をシンプルに伝えるための課題を整理するため、ブランドの定義や世界に伝える方法など、多様な視点から意見が寄せられた。

静岡茶をブランドとして「生み出して終わり」ではなく、より大きく「育てていく」ためには、静岡茶に関わる全ての人が力を合わせ、”今、100年後の未来のために自ら変化を生み出す”ことが欠かせない。利害を超えて同じ未来を描ける体制づくりが、今まさに始まっている。

静岡茶ブランディングプロジェクトより「共創」「現在の取り組み」

世界で選ばれる静岡茶へ

2025年度は、静岡茶の本来価値を整理し、ブランドコンセプトと行動計画をまとめる年と位置付けた。2026年度以降は、その成果をロゴやプロモーション、公式サイトなどへ展開し、世界に向けて発信していく予定だ。

県お茶振興課
佐田課長

この挑戦を多くの人に知ってもらい、それぞれの立場から静岡茶の可能性を広げる仲間になってほしい

静岡茶を単なる産地としてではなく、世界中のどこから見ても一つのブランドとして認識される存在に育てたい。産地をまとめるという意味ではなく、各産地の特色を尊重しながら共通のベース価値を共有し、高め合うことで全体を押し上げていく考えだ。茶園の風景や歴史を体験として伝えるティーツーリズムなど、静岡茶に触れる機会を広げる取り組みも進めていく。

事業の進め方の図
キックオフミーティングに登壇したプロジェクト関係者の皆さん

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