しずおかWELL-BE+ Vol.5

長澤玲奈さん|清水から全国へ、次の世代へ。瓦の魅力を届けたい

「瓦」に魅せられて、鬼瓦の職人「鬼師」を志す

屋根の上で厄を払い、人々の暮らしを見守る「鬼瓦」。長澤玲奈さんは、その迫力ある「表情」を土から創りだす職人「鬼師(おにし)」だ。

長澤さんは、静岡市清水区の長澤瓦商店の三代目。家業を継ぐつもりはまったくなかったが、瓦ぶき職人の父に同行して、小学校のキャリア教育の授業に出かけたことが転機になった。

「普段は仕事のことなど話さない父が、子どもたちの前で瓦の屋根材としての魅力や、その歴史について熱く語る姿を見て、瓦のことをもっと知りたいと思うようになりました」。

長澤さんの制作した鬼瓦を、地上から見た時に均整が取れた姿となるように傾けて取り付けていく

高校卒業後、実家の瓦店に入った長澤さんは、瓦の魅力を同世代にも伝えたいと考え、瓦のアクセサリーを制作。その中で、瓦についての知識不足を痛感し、愛知県の三河瓦の鬼師の下で修業することを決意した。

最初に作ったのは、瓦ビーズのアクセサリー製品。家族からは「石みたいで、瓦の魅力が伝わっていないと酷評された」と笑う

修業を通じて深まる、「清水瓦」復活への思い

静岡市清水区は、かつて主要な瓦産地の一つだった。きめ細やかな土から生まれる「清水瓦」は質の高さで知られていたが、1974年に静岡市を襲った大水害(七夕豪雨)で工場が流され、全ての窯元は廃業してしまった。

鬼師が手がけるのは、大量生産の屋根瓦ではなく、屋根を飾る鬼瓦や装飾瓦である。粘土から形をつくり、金ベラで文様を入れ、焼成していく。工程は陶芸と似ているが、釉薬(ゆうやく)を塗らずに、いぶして銀一色に焼き上げるところが異なる。

「いぶし銀の美しさと、軽量・頑丈・吸水性などの機能性。鬼師の修業を通じて、瓦の魅力を改めて感じるようになりました」。

それとともに、ふるさとの「清水瓦」を復活させたいとの思いも強くなったと言う。

鬼瓦は、屋根の上の彫刻。下から見上げた時の角度や距離も計算しながら、銀一色の中に陰影だけで迫力ある「顔」を制作する

瓦の小物やアクセサリーを店舗で製造販売

2024年9月、瓦小物の販売店舗をオープン。店舗に併設して、瓦窯(かわらがま)も完成した。

「清水の土で鬼瓦や小物を作り、清水の窯で焼成までできるようになりました。『清水瓦』の復活に向けた小さな一歩です」。

店内には、鬼瓦や干支瓦などをはじめ、アロマストーン、コースター、ネックレス、ブレスレットなどのさまざまな瓦小物が並ぶ。

「人気があるのは、瓦のアロマストーン。瓦には、屋根の結露の原因となる水分を吸収し、外に逃す働きがありますので、アロマの香りを楽しむのに適しているんです」。

また店舗では、自分でアロマストーンや鬼瓦を作るワークショップも定期的に開催している。子ども連れや女性グループ、シニアなど、幅広い年代層の方が訪れるという。

瓦のアロマストーン
いぶし銀のアクセサリーは、和洋、カジュアル・フォーマルを問わず、さまざまなファッションに合わせやすいと人気が高い(写真はイヤリング)

「清水瓦」を静岡の名産にしたい

屋根瓦の需要は、最盛期の7分の1と減少傾向にある。だが、瓦の素材としての可能性は大きいと長澤さんは言う。

「例えば、食器や鍋などにも適しています。なにより、使うほどにいぶし銀の風合いが深まるのも瓦の魅力です」。

将来の夢は、ここを「静岡の観光名所」にすること。静岡に来たら、あの店で面白い体験ができて、ここだけのものが買えるような場所にしたいとのこと。

歴史のなかで消えかけた「清水瓦」。それを新たな形で、全国へ、未来へ発信していきたいと長澤さんは語る。

2時間程度で自分だけの作品をつくり、焼き上げる。陶芸体験ワークショップは多いが瓦づくりは珍しいことから、県外から訪れる人も多い
ワークショップの様子

プロフィール

長澤 玲奈さん

静岡市清水区の瓦葺屋で生まれ育ち、家業を継ぐ。2020年から愛知・三河で鬼師修行を開始。清水の土と窯で「清水瓦」の復活に取り組み、2024年9月に店舗と瓦窯をオープン。鬼瓦や瓦小物の制作・ワークショップを通じて、清水瓦の歴史と文化を次世代へつなぐ。

この記事はいかがでしたか?

他の記事を読む

SNSで知り合いに教える

FacebookXLine

号別の記事一覧へ

CATEGORY

カテゴリー

BACK NUMBER

バックナンバー

ご意見をお聞かせください

最新号を読んでアンケートにご回答いただいた方の中から、抽選で10名様に「K'LURAピーナッツバター(有糖・渋皮あり・粒なし)」をプレゼントします。
一層充実したサイトを目指して、皆さまからのご意見をお待ちしています。

プレゼント対象の応募締切:2026年3月5日(木)まで

【注意事項】
・本品は農産物のため、年・季節によって色にばらつきがあります。
・ピーナッツアレルギーをお持ちの方は、絶対にお召し上がりにならないでください。
・開封後はキャップをきちんと閉め、お早めにお召し上がりください。