しずおかWELL-BE+ Vol.5
長澤玲奈さん|清水から全国へ、次の世代へ。瓦の魅力を届けたい
静岡で見つけた“わたしらしさ”
公開日:2026年02月16日

「瓦」に魅せられて、鬼瓦の職人「鬼師」を志す
屋根の上で厄を払い、人々の暮らしを見守る「鬼瓦」。長澤玲奈さんは、その迫力ある「表情」を土から創りだす職人「鬼師」だ。
長澤さんは、静岡市清水区の長澤瓦商店の三代目。家業を継ぐつもりはまったくなかったが、瓦ぶき職人の父に同行して、小学校のキャリア教育の授業に出かけたことが転機になった。
「普段は仕事のことなど話さない父が、子どもたちの前で瓦の屋根材としての魅力や、その歴史について熱く語る姿を見て、瓦のことをもっと知りたいと思うようになりました」。
高校卒業後、実家の瓦店に入った長澤さんは、瓦の魅力を同世代にも伝えたいと考え、瓦のアクセサリーを制作。その中で、瓦についての知識不足を痛感し、愛知県の三河瓦の鬼師の下で修業することを決意した。
修業を通じて深まる、「清水瓦」復活への思い
静岡市清水区は、かつて主要な瓦産地の一つだった。きめ細やかな土から生まれる「清水瓦」は質の高さで知られていたが、1974年に静岡市を襲った大水害(七夕豪雨)で工場が流され、全ての窯元は廃業してしまった。
鬼師が手がけるのは、大量生産の屋根瓦ではなく、屋根を飾る鬼瓦や装飾瓦である。粘土から形をつくり、金ベラで文様を入れ、焼成していく。工程は陶芸と似ているが、釉薬を塗らずに、いぶして銀一色に焼き上げるところが異なる。
「いぶし銀の美しさと、軽量・頑丈・吸水性などの機能性。鬼師の修業を通じて、瓦の魅力を改めて感じるようになりました」。
それとともに、ふるさとの「清水瓦」を復活させたいとの思いも強くなったと言う。
瓦の小物やアクセサリーを店舗で製造販売
2024年9月、瓦小物の販売店舗をオープン。店舗に併設して、瓦窯も完成した。
「清水の土で鬼瓦や小物を作り、清水の窯で焼成までできるようになりました。『清水瓦』の復活に向けた小さな一歩です」。
店内には、鬼瓦や干支瓦などをはじめ、アロマストーン、コースター、ネックレス、ブレスレットなどのさまざまな瓦小物が並ぶ。
「人気があるのは、瓦のアロマストーン。瓦には、屋根の結露の原因となる水分を吸収し、外に逃す働きがありますので、アロマの香りを楽しむのに適しているんです」。
また店舗では、自分でアロマストーンや鬼瓦を作るワークショップも定期的に開催している。子ども連れや女性グループ、シニアなど、幅広い年代層の方が訪れるという。
「清水瓦」を静岡の名産にしたい
屋根瓦の需要は、最盛期の7分の1と減少傾向にある。だが、瓦の素材としての可能性は大きいと長澤さんは言う。
「例えば、食器や鍋などにも適しています。なにより、使うほどにいぶし銀の風合いが深まるのも瓦の魅力です」。
将来の夢は、ここを「静岡の観光名所」にすること。静岡に来たら、あの店で面白い体験ができて、ここだけのものが買えるような場所にしたいとのこと。
歴史のなかで消えかけた「清水瓦」。それを新たな形で、全国へ、未来へ発信していきたいと長澤さんは語る。
プロフィール

長澤 玲奈さん
静岡市清水区の瓦葺屋で生まれ育ち、家業を継ぐ。2020年から愛知・三河で鬼師修行を開始。清水の土と窯で「清水瓦」の復活に取り組み、2024年9月に店舗と瓦窯をオープン。鬼瓦や瓦小物の制作・ワークショップを通じて、清水瓦の歴史と文化を次世代へつなぐ。
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