しずおかWELL-BE+ Vol.2

山中碧音さん|信じて、動く 挑んで、形にする 地域を伸ばす若き起業家

「幸せになってほしい」それが私の原点

「起業なんて、全く考えていなかった」―。
静岡理工科大学で情報学を学び始めた頃の山中碧音さんは、プログラミングと学生生活を満喫する、一般的な大学生だった。転機は、データサイエンス・人工知能研究室の富樫敦特任教授との出会いだ。大学2年時、官学連携の一環で富樫教授が旗振りした中学生向けプログラミング教室を運営し、学生団体STEPの代表として仲間を率いた。

慣れ親しんだ静岡理工科大学の研究室で語る山中さん

学外での交流や起業体験イベントを通じて起業の本質に触れるなか、磐田市の製造業との共同研究にも参加。多くの外国人実習生を抱える現場では、紙のマニュアルが大きな壁となっていた。「タブレットでマニュアルが見られたら…」という社員の一言をヒントに、研究仲間とともに作業工程の動画や多言語に対応できる「ビデオdeマニュアル」を開発。契約には法人格が必要だったため、3人で株式会社Azran(アズラン)を創業した。

Azranの脇坂泰清最高執行責任者(COO、大学院生)と
「ビデオdeマニュアル」の入力画面(サンプル)。作業動画と説明文を入力するだけでマニュアルを自動生成

創業後は、人脈や工場見学を生かして営業を展開。導入先は9社に広がり、異業種からの反響も得た。創業支援にも積極的に関わり、「SHIP(SHizuoka Innovation Platform)」では、プレゼンテーションの構成やビジネス設計、チーム作りなどを実践的に学んだ。
SHIP会員の更なる挑戦を後押しする、「SHIPアワード2023」で大賞を受賞。スタートアップ創業者を招き、スタートアップのリアルな姿を知る機会と、オープンイノベーションにつながる出会いの場を提供している「スタートアップナイト」では登壇者として経験を語り、起業を志す人たちに勇気と刺激を届けた。

「スタートアップナイト」に登壇した山中さん(写真左)2024年11月、SHIPで

静岡イノベーション拠点SHIP公式サイト

現在は、東京の新規事業開発を手がける企業でプログラマーとして働きながら、㈱Azranの業務も続ける“二刀流”だ。「大きな組織での経験が会社を育てる土台になる」と語るまなざしには、冷静さと情熱が同居する。

卒業後も研究室に通い続ける山中さん。原点はここにある

今最も注力しているのは新規事業の企画だ。きっかけは、学生団体STEPでの活動に手応えを感じたことだった。そこから「ビデオdeマニュアル」の開発を通じ、課題解決に関わるやりがいを実感。その経験が別の課題への意欲につながった。着目した課題は「誰かの痛み」や「生きづらさ」。詳細はまだ公表できないが、何をどうすれば解決できるかを模索しながら、VR(仮想現実)の活用も視野に入れ、9月の始動を目指している。

活動の軸にあるのは「幸せになってほしい」という思い。自社のサービスによって、困りごとを乗り越えたり、目標に一歩近づいたりできるのなら、それが社会を前に進める力になる。そう信じているからこそ、「この内容で本当に幸せにできるか」を、開発のたびに問い続ける。さらに、静岡という地にも強い期待を寄せている。「静岡の人は、身近なリソースで目の前の課題を解決する力がある。それはスタートアップにとても向いた文化だと思う」。眠っている地域の力を信じ、静岡県一のSaaS※企業を目指す。その先に見据えるのは、暮らしや働き方が少しでも良くなる未来。活動の積み重ねが、自分たちの挑戦の意味になると信じている。

  • Software as a Serviceの略。

プロフィール

株式会社Azran 代表取締役

山中 碧音(やまなか あおと)さん

2001年静岡市生まれ。学生時代から、三島市の起業支援拠点「LtG Startup Studio」、「しずおかビジネスプランコンテスト」など、複数のコンテストで入賞し、2024年に株式会社Azranを設立。現在は東京と静岡の2拠点生活を送りながら、釣りや映画、おいしいビール探しを楽しんでいる。

株式会社Azran公式サイト

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