しずおかWELL-BE+ Vol.3
産業振興と健康づくりの両輪で、県民幸福度日本一へ
みらいに、新しい輝きを
公開日:2025年10月29日

「健康寿命日本一」(厚生労働省、2025年12月発表)を誇る静岡県。この地から、全国的にもユニークな新たなプロジェクトがスタートした。その名は、「静岡ウェルネスプロジェクト」だ。「食品・ウェルネス産業の振興」と「県民の健康寿命の延伸」の両輪で、県民幸福度日本一の実現を目指す、全国でも類を見ない取り組みだ。
今回は、この静岡ウェルネスプロジェクトから、
- 県内外のスタートアップと地域企業の共創などを促進する静岡ウェルネス・フーズEXPO2025
- 未利用食材を活用したアップサイクル製品の研究開発を支援する未利用食材活用トライアル拠点
- 県民の健康寿命の延伸に寄与する新たなウェルネスサービスの創出
- 新たな製品・サービスの創出を推進する産学官金連携プラットフォーム静岡ウェルネスフォーラム
を紹介する。
静岡ウェルネスプロジェクトの概要
このページで分かること
- 革新的なフードテック・ウェルネスビジネスの創出に向けた、静岡県の取り組み
- 産業振興と健康づくりを同時に進めていく、全国でも珍しいプロジェクトモデル
目次
フードテック・ウェルネスビジネスの創出を目指す「静岡ウェルネス・フーズEXPO2025」
2025年9月11日、静岡ウェルネスプロジェクトの一環として、「静岡ウェルネス・フーズEXPO2025」を開催した。目的は、静岡県発のフードテック・ウェルネスビジネスの創出である。県内企業と県内外スタートアップなどとのビジネスマッチングを通じて、食の社会課題解決に寄与する「未来型食品」の開発や、県民の健康寿命の延伸に寄与する「新たなウェルネスビジネス」の創出につなげることが、狙いだ。
展示ブースには、県内外のスタートアップなど32社・9団体が出展。AIを活用したおいしさ測定技術や多様化する消費者ニーズに対応したパーソナライズ食など、フードテック分野やウェルネス分野の先端技術や製品などが注目を集めた。
また、創業支援や人材育成などを手掛ける企業によるフードテックの可能性についての講演、食の社会課題解決等の取り組みを紹介するピッチ、トークセッションが開催され、企業、大学・研究機関、金融機関 など、業種の垣根を越えた「出会いの場」となった。
食品ロスをビジネスチャンスに「未利用食材活用トライアル拠点」
食をめぐる重要な社会課題の一つが、農業や食品加工の現場から生じる、食べられるのに捨てられてしまう、いわゆる「食品ロス(未利用食材)」の問題である。地球環境への負荷低減、農家や食品関連企業の収益向上のためには、未利用食材を活用した新製品・新ビジネスの創出が欠かせない。
県は、これまでに県内約2,000社を対象に、未利用食材の発生実態や活用ニーズなどに関する調査を行い、未利用食材の供給企業と活用企業のマッチングを進めてきた。
この取り組みを加速させるために、2025年9月29日、県工業技術研究所に未利用食材を活用したアップサイクル製品の研究開発を支援する「未利用食材活用トライアル拠点」が開設された。
トライアル拠点では、企業からの技術相談を始め、試作品の開発、品質評価など、食のアップサイクル(捨てられるものに新しい価値を加えて生まれ変わらせること)を技術面から支援する。
さらに、(公財)静岡県産業振興財団 ウェルネス・フーズ産業支援センターに設置された「食のアップサイクル相談窓口」とも連携し、研究開発から事業化、販路開拓までを一貫支援する体制を整えている。
市町・大学・研究機関と連携した「新たなウェルネスサービスの創出」
食品・ウェルネス関連産業の振興と並ぶ、もう一つの大きな柱が「県民の健康寿命の延伸」である。
プロジェクトでは、市町の健康課題と企業によるソリューション(課題解決力)をつなげるために、大学や研究機関などと連携した支援体制を整えている。
その中心的な役割を担うのが、2021年4月に開学した「静岡社会健康医学大学院大学(静岡SPH)」である。静岡SPHでは、県内市町におけるコホート研究で集積したデータや県民の医療ビッグデータを用いて、県民の疾病の特徴、疾病の原因となる因子や生活習慣を解析し、健康寿命の延伸につながる方策を提言している。
このような科学的根拠に基づく提言を企業の新規製品やサービスの開発につなげ、県民の健康寿命の延伸に貢献することもプロジェクトの目的の一つだ。
産業と健康をつなぐプラットフォーム「静岡ウェルネスフォーラム」
静岡ウェルネスプロジェクトにおける静岡発の新たな製品やサービスを生み出すための基盤を担うのが、「静岡ウェルネスフォーラム」である。
フォーラムでは、産業振興を担う(公財)静岡県産業振興財団 ウェルネス・フーズ産業支援センターと、県民の健康づくりを推進する県健康福祉部が事務局となり、企業、市町、大学、金融機関、医療機関など、多様な関係者と連携しながら、県民幸福度日本一の実現に向けて、プロジェクトを推進していく。
産業と健康をつなぐプラットフォームとなるのが「静岡ウェルネスフォーラム」であり、今後は、フォーラムを通じてネットワークのさらなる拡充を進め、オープンイノベーションやビジネスマッチングを促進していく計画である。
未利用食材の活用事例を聞く|未利用植物資源の100%活用により、サーキュラーエコノミーの実現をめざす
- サーキュラーエコノミー:資源を効率的に循環利用し、廃棄物の発生を最小限に抑えながら、製品や素材の価値を可能な限り長く維持して新たな付加価値を生み出し続けるシステム
右:CBO 一家崇志さん(静岡大学農学部 准教授)
当社は、静岡大学発ベンチャーです。長門代表取締役がお茶成分の全てを使い切れていないことに着目し、植物成分を全て活用するための構想を話し合ったことからスタートしました。
現在は共感いただいた企業様とBMT teamを立ち上げ、植物素材を使い切るためのエコシステムを創造しています。
BMTのコアテクノロジーは、当社が独自開発した「Cell Breaker System」です。湿式粉砕と酵素処理を組み合わせた技術で、低エネルギー・低コストでの成分抽出を可能にしています。
BMTの対象は茶葉に限ったものではなく、農産物や産地に合わせてローカライズできます。あらゆる未利用植物から有用成分を抽出し、農業・食品・素材・エネルギーなどのさまざまな分野での再資源化することが可能であり、目指しているのは真のサーキュラーエコノミーモデルの構築です。
植物成分の全抽出の工程や、マーケット分析で得られたデータをAIを活用してデジタル統合し、最適な成分抽出およびカーボンクレジットの算出を行い、新たなビジネス創造に役立てます。
当社のミッションは、アカデミアとビジネスの融合でイノベーションを起こし、世界を希望で満たすことです。地域社会や異業種企業との共創を通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に貢献したいと考えています。
産業も県民も、地域全体を元気にしていく、静岡県の挑戦。
静岡ウェルネスプロジェクトのように、農林水産、食品加工、観光、IT、健康サービスなどの業種の垣根を越えて知恵と技術を集結し、「地域の産業振興と県民の健康づくりを同時に進めていくプロジェクトモデル」は、全国でも珍しい。
多様な産業を、県民一人ひとりを、そして地域全体を元気に幸せにしていく、静岡県の新たな野心的な挑戦。それが、静岡ウェルネスプロジェクトなのである。
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