しずおかWELL-BE+ Vol.4
鈴木志歩さん|放置竹林の問題に、竹細工アートでアプローチ
静岡で見つけた“わたしらしさ”
公開日:2025年12月24日

サークル活動を通じて、放置竹林問題と向き合う
山あいの自然豊かな町、駿東郡小山町。竹細工アーティストの鈴木志歩さんは、小学校から高校まで、この町で育った。
「小さい頃は山で遊ぶのが大好きでした。家の中でゲームをするより、のこぎりやトンカチで何か作る方が好きでした」。
自然への憧憬は、大学に入学しても変わらず、環境保護サークルに入部した。サークルでは、週1回、放置竹林の整備として、地域の人たちと一緒に竹を切り、桜を植え、山の自然を再生するプロジェクトを進めていた。このサークル活動のなかで、「切った竹をもっと生かす方法はないか」と考えるようになったという。
竹を編み込んで作品をつくる、竹細工の魅力にはまる
竹の良い活用方法について模索していた頃、市の講座で竹細工と出会った。竹細工では、まず始めに竹を細く裂いて、厚さや幅をそろえ、しなやかに均等に曲がる「竹ひご」を作っていく。
「実は、この竹ひごづくりが一番大変です。でも竹ひごを編む作業はとても楽しく、“竹ってこんなに自由な素材なんだ!”と驚きながら、夢中で編んでいました」。
そして完成したのが、記念すべき最初の作品「波ぶち竹かご」だ。それからは、動画などでさまざまな編み方を学びながら、次々に作品を制作していった。
その頃、生まれ育った小山町でも放置竹林が問題となっていることを知り、地元を拠点に竹細工と本格的に向き合おうと考えた。
地元の小山町でワークショップを展開
「竹の人だよね!」と声をかけられるように
現在、大学4年の鈴木さんは、Bamboo Bond~縁は竹なわ~という活動名で、小山町で竹細工の作品制作に取り組んでいる。2025年3月から、月に1度ほど、足柄ふれあい公園や道の駅などのマルシェイベントに出展し、竹細工作品の販売やワークショップを行ってきた。
「イベントの約2週間前から少しずつ作品作りや竹ひごの準備を進めます。マルシェでは幼稚園の子どもからお年寄りまで、本当に幅広い世代の方が興味を持ってくださいます」。
とくに人気が高いのが、星形や六角形が浮かび上がるように竹を繊細に編んで作る「竹まり」だ。コロンと丸いフォルムがかわいらしい。
ワークショップを通じて、地域の人とのつながりも深まった。「最近では“あ、竹の人だよね!”と声をかけてもらえるようになりました」と笑う。
また7月には、中国の高校生の来日した日中交流事業に参加し、竹細工ワークショップを実施。小山町の国際交流にも貢献している。
竹細工との出会いが、竹林再生のきっかけになったらうれしい
「竹の魅力は、軽くて、柔軟で加工しやすいこと。そして革製品のように、使い込むほど風合いが出てくるところ。可能性だらけの素材です」。
来春から、社会人生活がスタートするが、竹細工はライフワークとして続けていくつもりだという。
「竹細工を通して、たくさんの人々が放置竹林の問題に気づくきっかけになったらうれしい。竹を楽しむ人が増えれば、きっと山も元気になるのではないでしょうか」。
竹細工作品を両手に抱えながら、鈴木さんは目を輝かせる。
プロフィール

鈴木 志歩さん
2002年小山町生まれ。静岡県立大学4年生。
放置竹林による環境悪化へのアプローチの一つとして竹細工を始めた。少ない道具で等身大に続けられる竹細工制作に魅力を感じ、大切な人や場所・地域への想いを込めて活動中。将来は地元に工房を構え、竹細工作品に囲まれながら暮らすのが夢。
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