しずおかWELL-BE+ Vol.5

経済を動かすGXへ。「GX先進県しずおか」が描く、次のエネルギー戦略

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2026年、県は2050年脱炭素社会の実現に向けて「GXによる産業振興」「再エネの効果的な導入」「徹底した省エネ」の三つを大柱とし、エネルギー戦略を再編する。

新たな戦略には、国の「第7次エネルギー基本計画」及び「GX 2040 ビジョン」で示された「エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指す」方針を反映する。

製造業が集積する一大拠点である静岡県。脱炭素電源の確保が、そのまま企業の取引条件になる時代を見据え、三つの大柱のうち「GXによる産業振興」を産業政策の中心として取り組んでいく。

※GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは
エネルギーの安定供給・経済成長・排出削減の同時実現を目的に、産業革命以来の化石燃料中心の経済・社会、産業構造をクリーンエネルギー中心に移行すること。

静岡県エネルギー戦略 ~GX推進による脱炭素社会の実現~

このページで分かること

  • GXを「産業振興の柱」に据えた静岡県の戦略転換
  • ペロブスカイト太陽電池の実証現場と、地域実装への手応え
  • 山梨県と連携した水素分野の人材育成・ビジネス創出の動き
  • 県内3社が挑む、日本初のSBH水素船プロジェクトの最前線
目次
  1. GXの最前線|ペロブスカイト太陽電池と水素エネルギー
  2. 県内3社が挑む、日本初のSBH水素船プロジェクト
  3. GXの展望|脱炭素が競争力になる時代へ

GXの最前線|ペロブスカイト太陽電池と水素エネルギー

県が今後のGXの鍵となる技術として位置付けるのが、ペロブスカイト太陽電池水素エネルギーである。次世代技術を地域産業の成長につなげるため、開発支援が進んでいる。

ペロブスカイト太陽電池においては2026年から1年間、清水港で強風や、塩害環境下での耐久性の実証を進めている。さらに、本年度から官民連携プラットフォームとして「次世代型太陽電池部会」を設置し、県外企業とも連携しながら、県内ものづくり企業の参入機会を探っている。

フィルム型のペロブスカイト太陽電池
提供:積水化学工業株式会社
物流倉庫屋根にフィルム型のペロブスカイト太陽電池を設置し、実証実験を行っている
提供:積水化学工業株式会社
次世代型太陽電池部会の様子。県内企業から需要家としての興味関心も高く、県は部会での情報発信を続けている(2025年)

水素エネルギーにおいては、2022年に「水素部会」を設置し、水素エネルギー先進県である山梨県との広域連携の下、人材育成や技術交流を推進してきた。さらに2026年からは、水素分野専門のコーディネーターを新たに配置し体制を強化し、ビジネスマッチングを加速する。現在、水素エネルギー分野では日本初のプロジェクトも進行している。

※水素エネルギーとは
水素と酸素の化学反応(燃料電池)や燃焼によって得られるエネルギーのこと。
再生可能エネルギーとの組み合わせや電化が困難な分野での活用に期待される次世代エネルギー。

水素部会の様子。山梨県と連携し、水素エネルギー分野での第一人者による講演会などを行っている(2025年)

県内3社が挑む、日本初のSBH水素船プロジェクト

SBH(水素化ホウ素ナトリウム)を活用した船舶用水素エネルギーの社会実装に挑む。材料開発からエンジン、船舶設計まで、全てを県内企業で完結させる日本初の試みだ。

※SBHとは
水素の貯蔵材料の一つ。危険性が少なく扱いやすいことから、化石燃料に替わるエネルギー源として注目されている。

プロフィール

三協テクノ株式会社
代表取締役社長

吉田 直美さん

1981年創業の船舶設計会社。電気推進船を7〜8隻手がけ、2024年「SHIP OF THE YEAR」漁船・調査船部門を受賞した「かんげい丸」の設計実績を持つ。
本プロジェクトでは、燃料電池・バッテリー・電動推進を組み合わせた船舶推進システム全体の設計・実装を担当。


日本軽金属株式会社
新事業企画戦略部 マーケティング推進グループ チーフプロデューサー

大久保 学さん

アルミニウムおよび化学品の製造販売を手がける素材メーカー。静岡市清水区蒲原に主力工場を構え、2016年からSBHの研究開発を継続。
本プロジェクトでは、常温常圧で扱える水素キャリア「SBH」の素材提供を担うとともに、長年の研究で蓄積してきた物質特性に関する知見を共有し、システム全体の設計・検証を技術面から支えている。


株式会社赤阪鐵工所
技術本部長

黒田 透さん

創業100年以上の歴史を持つ船舶用ディーゼルエンジンメーカー。内航船を中心に、重油・LNG・メタノール・水素など多燃料対応エンジンの開発を進めている。
本プロジェクトでは、SBHから生成した水素を利用した水素エンジンと、水素発生装置の開発を担当。

Q1|プロジェクトはどのように始まったのですか?

大久保さん

2016年から8年間かけてSBHの研究を続けてきましたが、実際の使い道を探していました。創エネ・蓄エネ技術開発推進協議会でこの技術を紹介したことが、今回の連携の出発点です。

※創エネ・蓄エネ技術開発推進協議会…県が2018年に設立した、水素部会及び次世代型太陽電池部会の上位組織。
会員:企業、大学、研究機関、産業支援団体、金融機関、市町 など

黒田さん

当社は船舶のGHG(温室効果ガス)削減に向け、水素燃料の可能性を模索していました。SBHなら常温常圧で扱える。「これなら船に載せられる」と直感しました。

Q2|連携したことで何が変わりましたか?

吉田さん

これまでは、材料は材料、エンジンはエンジン、船体は船体と、分野ごとに課題を抱えていました。でも今回は、最初から3社で同じテーブルに着き、設計段階から一体で議論できています。「実験で終わらせず、どうすれば実際に港で使える船になるか」を前提に話ができるようになったことが、一番大きな変化ですね。

Q3|この技術が社会に広がると、何が変わりますか?

黒田さん

液体水素や高圧水素は、タンクの大きさや安全対策がネックでした。SBHなら既存の船の構造を大きく変えずに導入できる。小型船から始めて、内航船全体の脱炭素を現実にできると思います。

吉田さん

船は一隻つくれば20年、30年と使われます。だからこそ、今ここで“次の燃料”を形にできるかどうかが、将来の港の姿を左右します。この技術は、地方の小さな港でも導入できる可能性を秘めています。

Q4|静岡で取り組む意味とは?

大久保さん

材料を生み、エンジンを作り、船に仕上げる。この流れを全て県内で完結できるのは、静岡の製造業集積があってこそです。

吉田さん

造船、機械、化学——これだけの技術がそろっている地域は全国でも多くありません。静岡には、“やろうと思えば、全部ここでできる”土壌がある。それを実証するプロジェクトだと思っています。

Q5|今後の展望を教えてください。

大久保さん

SBHの研究は2016年から始めましたが、その背景には県の補助金による支援もありました。だからこそ、この技術を静岡発のものとして社会実装し、地域に恩返しをしたいと考えています。

黒田さん

船舶は“止められない産業”です。環境に良くても現実的でなければ意味がない。SBHはその壁を越える可能性を持っています。

吉田さん

この取り組みを「特別な実験」で終わらせたくありません。各地の港に、水素船が当たり前に停泊している——その未来を静岡からつくっていきたいですね。

GXの展望|脱炭素が競争力になる時代へ

ペロブスカイト太陽電池に、水素エネルギー。最先端の次世代技術プロジェクトへの挑戦が、現場から動きはじめ、GXの契機になっていく。

経済と環境が好循環する「GX先進県しずおか」を掲げ、脱炭素を「コスト」ではなく「競争力」へ転換し、さらなる投資と人材を呼び込んでいく。

GX先進県静岡を支える三つの強み 1.製造業の集積と製品化力 2.スタートアップとの連携 3.清水港をはじめとする港湾拠点

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