しずおかWELL-BE+ Vol.6
若手養成から偏在解消へ。静岡県が進める、医師確保の多面的な取り組み
くらしに、豊かさをもっと
公開日:2026年03月24日

静岡県は医師不足という課題を抱えている。人口10万人当たりの医師数は全国39位と低い水準にあり、県内でも地域による偏在が顕著だ。
こうした状況を受け、県では医師の確保と偏在解消を両輪に、若手医師の養成から定着までを見据えた施策を進めてきた。静岡県の医師確保対策は今、どこまで進んでいるのか。現状と今後の展望を見ていく。
静岡県の医師数と地域偏在の現状
このページで分かること
- 静岡県における医師不足と、地域偏在の現状
- 若手養成を軸にした、医師確保の仕組みとその成果
- 医師のキャリアと定着を支える、多面的な取り組み
- 東部地域の偏在解消に向けた、大学連携の新たな挑戦
目次
静岡で貢献してくれる医学生を支える|医学修学研修資金貸与事業
こうした状況を踏まえ、静岡県では早くから医師確保に向けた制度整備を進めてきた。その中核を担ってきたのが、「医学修学研修資金貸与事業」だ。将来、医師として静岡県の地域医療に貢献する志を持つ医学生らを支援するため、医学部に在籍する学生や専攻医らを対象に、修学資金の貸与を行っている。
在学中の6年間、月額20万円を貸与。卒業後は、貸与期間の1.5倍にあたる9年間、県内の指定医療機関に勤務することで返還が免除される。
平成19年度の開始以来、令和7年4月時点で累計1,717人が利用し、義務期間中の医師と義務期間終了後も県内に定着した医師を含め、759人が県内で勤務している。若手のうちに県内で生活基盤を築くことが、その後の定着につながるケースも多く、県の医師確保策の柱となっている。
イメージ(静岡県キャリア形成プログラムの場合)
医学修学研修資金の県内勤務者数
県内で働く若手医師を育てる|しずおかバーチャルメディカルカレッジ
医学修学研修資金貸与事業と表裏一体で進められているのが、「しずおかバーチャルメディカルカレッジ」だ。平成26年に創設され、修学資金の利用者を“仮想の医科大学の学生”と見立て、人的ネットワークづくりや学びの場を提供している。
夏季セミナーでは、県内で活躍する医師の講演会や、先輩医師であるリクルーターとの交流、グループワークなどを実施。病院合同説明会や意見交換の場も設け、県内医療への理解を深めている。出身大学や出身地の異なる学生同士がつながることで、将来に向けた横のネットワークが生まれ、県内で働くことへの心理的なハードルを下げる役割を果たしている。
参加者から「静岡県で働く未来を具体的に思い描けた」「卒業後のキャリア形成を考えるきっかけになった」といった声が寄せられている
さらに、医師を目指す裾野を広げる取り組みとして、高校生や中学生を対象とした「こころざし育成セミナー」も実施。憧れとしての「医師」という職業を、将来の進路として具体的に考える機会を提供している。
県内病院での模擬手術体験や施設見学、医師の講話を通じて、医療現場を体感する
静岡に、医師として恩返しを
令和8年1月30日、県庁で「次世代医師リクルーター委嘱状交付式」が行われた。次世代医師リクルーターは、県内で働く若手医師が静岡県の地域医療の魅力を全国の医学生に伝え、将来の医師確保につなげる取り組み。第12期となる今期は30人が選ばれ、1年間、県のイベントなどを通じて活動していく。リクルーターの一人、岩田暖さんに話を聞いた。
プロフィール

岩田 暖さん
静岡県浜松市出身。浜松医療センターで臨床研修医として従事。幼少期に斜視の手術を受けた際の担当医師に感銘を受け、医師を志すように。現在は眼科医を目指し、患者の立場に立った診療を心がけている。
浜松医療センターでは、どのような仕事をされていますか。
各診療科をローテーションしながら臨床経験を積んでいます。救急で入院された患者さんの初期対応や、入院後の診療計画の立案、投薬などを、指導医の先生に相談しながら担当しています。
地元・静岡で医師として働く魅力は。
人との距離が近いことですね。浜北で育ったので、知っている方が患者さんとして来院されることもあります。地域の方に育てていただき、今度はその方々と診療を通じてお会いできることがうれしいです。
リクルーターとしての意気込みと、これから医師を目指す方へメッセージをお願いします。
幼い頃からお世話になった地域のみなさんに恩返しができるといいです。その想いを医学生の方に伝えられたらと思っています。
(これから医師を目指す方へ)
日常でもっと勉強すればよかった、復習しておけばよかったと思うことが多くあります。
医師国家試験の知識が役に立つことが必ずあるので、今は辛くても勉強頑張ってください!
医師のキャリアを支える、こんな取り組みも
静岡県医師バンク
県外で働く医師と、医師を求める県内医療機関を結ぶマッチング事業。県医師会に委託して運営し、令和2年度の開始以降、毎年就業につながる実績を重ねている。
女性医師支援センター
産休・育休後の復職支援に加え、キャリア形成や管理職登用の相談にも対応。ライフステージに応じた支援が、医師の継続就業を支えている。
医師確保の新たな取り組み|大学との連携協定
近年、静岡県が力を入れているのが、大学との連携による医師養成と派遣だ。令和7年には、浜松医科大学、順天堂大学とそれぞれ連携協定を締結した。
とくに課題となっているのが東部地域である。医師数が少ないだけでなく、若手医師を育てる指導医が不足し、専門医を養成する体制が十分とは言えない状況が続いてきた。連携協定では、大学から指導医や専攻医の派遣を受け、研修環境を整備することで、地域で医師を育て、定着につなげることを目指している。
順天堂大学との協定では、県東部に立地する医学部附属静岡病院を拠点に、小児科や産婦人科など、これまで東部地域では専門医養成が難しかった分野の研修プログラム整備が進められている。産婦人科についてはすでにプログラム設置が完了し、来年度から養成が始まる見込みだ。
これらの取り組みは始まったばかりで、成果が見えてくるまでには時間を要する。
ただ、専門医資格を取得できる研修体制を地域につくることは、将来的な医師定着に向けた重要な一歩だ。大学と連携しながら、人を育て、地域に根付かせる取り組みが、今静かに動き始めている。
研修体制を整え、偏在解消の取り組みをさらに強化
令和8年度以降に向けて、静岡県は引き続き、東部地域を中心とした医師確保と偏在解消に取り組んでいく。浜松医科大学、順天堂大学との連携を軸に、専攻医の派遣や研修プログラムの充実を進め、医師を育てる環境そのものを強化していく考えだ。
県全体で医療提供体制を支え合い、誰もが安心して医療を受けられる地域を目指して——。静岡県の挑戦は、これからも続いていく。
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