- しずおか、この人。
前田結嬉さん・森真桜さん|静岡のお茶染めを、新たな伝統工芸へ。
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前田 結嬉(まえだ ゆき)さん
製造管理責任者。静岡市出身。デザイン専門学校卒業後、静岡市のクラフトマンサポート事業を利用して鷲巣さんに弟子入り。4年目を迎え、製造を統括する。

森 真桜(もり まお)さん
製造担当。静岡市出身。高校時代にデザインを学び、美術や芸術に関係する仕事に就きたいと考えて、卒業後にお茶染めの世界へ飛び込み、2年目。
手仕事に価値を見出し、「お茶染め」文化の創造に努める
AIなどの先端技術が、迅速かつ正確なものづくりを実現する時代に、あえて「手仕事」の道を選んだ前田結嬉さんと、森真桜さん。お茶染めの第一人者で、鷲巣染物店5代目の鷲巣恭一郎さんに弟子入りし、「お茶染めWashizu.」で技術を学びながら、展示会や「駿府の工房 匠宿」での体験などを通じて、お茶染め文化の普及に奮闘している。

静岡の名産品を生かした「循環する染物」
お茶染めは、静岡の伝統工芸「駿河和染」を土台に、鷲巣さんが生み出した染色手法。製茶の工程で商品にならなかった茶葉を、染料として生かし、茶殻は堆肥に加工して畑に戻している。
「静岡の名産品で布を染めるという地産地消の取り組みであり、『循環するものづくり』でもあります」と前田さんは話す。


染物職人の道を選んだ理由

前田さんは、染色の世界に入って4年目。静岡市内のデザイン専門学校で学び、「人を感動させられるものを、自分の手で作りたい」という思いから地元の伝統工芸の担い手のもとを訪ねて門をたたいた。しかし、後継者を育てる環境が整っていないことを理由に受け入れを断られ続けたという。そんな前田さんを救ったのは、専門学校時代の恩師である「お茶染め Washizu.」の代表・鷲巣さんだった。「お茶染めなら、型紙もデザインも染めも、自分のやりたいことが全部できる」、そう知ったとき、前田さんの心は決まった。
前田さんに続いて工房の門をたたいた森さんは、お茶染めの職人になって2年目。幼い頃から絵や工作が好きで、高校でもデザインを学んだ。進路に迷っていた高校時代、たまたま訪れた専門学校のオープンキャンパスで鷲巣さんの体験授業に参加し、「これしかない」と直感。自ら師匠に電話を入れて、卒業後すぐにこの世界へ飛び込んだ。

手仕事だからこそ、価値がある
寸胴鍋から立ちのぼる湯気と初夏の強い陽射しの中でも、黙々と仕事と向き合う二人を支えているのは、「お茶染め」への誇りと気概だ。「大量生産が当たり前の時代だからこそ、あえて手仕事で染め上げることに価値を感じます」と前田さん。「お茶染めの魅力や、職人仕事のかっこよさを、もっと多くの人に知ってもらいたい」と森さんも声をそろえる。
布を染める工程



茶葉を煮出して作った染液に生地を浸し、熱を加えて染め上げていく。染めを重ねる回数で、色の濃淡を調整できる。
型染めの糊を塗る工程



型紙を生地に置き、糊をヘラで均一に塗る。乾燥後に蒸して発色させると、くっきりとした柄が浮かび上がる。
職人間の交流が新たな創作活動に発展
お茶染めの工房がある匠宿は、陶芸や駿河竹千筋細工、漆など多彩な分野の職人が集う国内最大級の伝統工芸体験施設。その他にも静岡には様々な分野の職人がおり、分野を超えたコラボレーションや新たな創作活動を生み出してきた。

イベントや展示会に出品した前田さんと森さんのオリジナル作品

型染めで夏の入道雲をモチーフに何かが生まれる瞬間、そこから湧き上がってくるようなエネルギーを表現しました。

ぴかりと輝く光をイメージしました。
初めて作った作品だったので私が初めてお茶染めに出会ったときの「これだ!」という思いを形にしたいと考え作りました。
お茶染めを生涯の仕事に
「いずれは自分の工房を持ち、お茶染めをもっと広げていきたいです」と将来を語る前田さん。森さんは、「お茶染めは私の生涯の仕事。まずは一人前の染物職人になることが目標です」と瞳を輝かせる。二人は、「お茶染めを、百年先まで続く伝統工芸へ」という大志を胸に、着実な歩みを重ねる毎日だ。

▶駿府の工房 匠宿(静岡市駿河区丸子3240-1):https://takumishuku.jp/

お茶染めWashizu.
静岡の伝統工芸「駿河和染」と静岡茶を結ぶお茶染めの工房。代表は鷲巣恭一郎さん(鷲巣染物店5代目)。製茶の工程で出る商品にならない部分を染料に用い、地域の資源を生かした持続可能なものづくりを実践。染色方法をレシピ化し伝えていく活動を中心に、学校のカリキュラムやワークショップ、商品制作から作品づくりなどを通じて、お茶染め文化の創出を目指している。現在は匠宿を拠点に、前田さん・森さんと3人で活動中。
▶お茶染めWashizu.
https://www.ochazome-shizuoka-japan.com/
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