県政セレクション 総合情報誌ふじのくに
【withコロナ、afterコロナの時代に対応】オンラインで深める絆 新しい形の“地域外交”
2022(令和4)年7月
豊かな自然に恵まれた静岡県は、ひと、モノ、文化、芸術においても世界クラスの資源を有している。そのポテンシャルをベースに、人材育成、富づくり、海外の活力取り込みを進める本県の地域外交。コロナ禍での取り組みを紹介する。
オンラインの活用で、より豊かな国際交流が可能に
国際交流は国際課という名称の部署が担当する自治体が多い中、より幅広い分野で海外との交流を進めていくという意思表示として、静岡県では「地域外交課」が担っている。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、海外渡航が思うようにできなくなったここ数年も、本県と海外との交流は途切れることなく続いてきた。コロナ禍で急速に普及・定着したのがオンラインを用いた相互交流だ。オンラインを活用することでコストの削減となり、交流のハードルが低くなるという利点を活かし、今後コロナが収束しても、対面外交と併用した効果的な“地域外交”を行っていく方針だ。
また、地域外交の新たな取り組みの柱に位置付ける「世界から選ばれる“ふじのくに”」は、少子高齢化などにより人材不足となっている県内企業を念頭に、外国人材や外資系企業などの活力を県内に取り込んでいく考えを示している。
渡航できなくても諦めない高校生の国際交流
修学旅行先として多くの高校生が訪れていた台湾。現地での高校生同士の交流も目的の一つであった。海外渡航がかなわない状況においても交流を続けたいという高校からの要望もあり、県は台湾の高校とのオンライン交流を計画。2021年度には県内15の高校から交流希望が寄せられた。県は交流希望のあった県内高校と台湾の学校とのマッチングを行い、青少年の国際交流を後押ししている。
オンラインならば渡航に要する時間も費用もかからないため、気軽にかつ多人数で、何度でも交流を行うことが可能になる。そのため交流のハードルが低くなり、回を重ねることで互いを深く知ることができるなどメリットも多い。その後も生徒同士でSNSを介した交流が続くなど、生徒たちは海外の同世代との交流を楽しんでいる。渡航が可能となってからも、事前にオンラインでお互いを知ってから修学旅行先で実際に会う、帰国後にさらに交流を続けていくなど、オンラインの効果的な活用により、多様で幅広い交流の実現が期待される。
県内高校によるオンライン交流例
静岡県立御殿場南高等学校
台湾の2校と、英語でSDGsなどについて意見交換。異なる文化を背景に持つ生徒たちとのディスカッションにより、多角的な視点で課題を捉えることができた。
また、学校生活や正月の過ごし方といった伝統行事などの身近なテーマについても話し合うことで、台湾だけでなく日本のことを振り返るきっかけとなった。
静岡県立湖西高等学校
オンライン交流会前に、台湾の相手校とインスタグラムを介して生徒同士で自己紹介。
交流会実施前から、インスタグラムを活用した交流を図ることで、生徒同士で、顔の見える関係作りができ、異文化への理解を深めることができた。
オンラインで迎える交流の節目 静岡県・浙江省 友好提携40周年
静岡県と浙江省が友好の絆を育んでから2022年で40年目。気候風土が似ていて、富士山、西湖という世界遺産がある、共に茶やみかんの産地であるなど共通点も多い。富士山静岡空港から浙江省の杭州(こうしゅう)・寧波(ねいは)への直行便も就航し、相互の往来が本格化した矢先、新型コロナウイルスにより人々の往来は遮られた。2年以上も対面交流ができない中、マスクなど医療物資の相互支援を通じてお互いを身近に感じた両県省。コロナ禍で迎える友好提携40周年の節目には、オンラインなどを活用した新しい形での交流を進めている。
本県が友好提携先の浙江省を理解するために用意したテーマの一つは「暮らしと食文化」。2022年3月に浙江省の食文化を紹介する冊子を発行し、6月に紹興酒を紹介するウェビナーを開催した。その狙いは、身近な興味から県民に浙江省への理解を深めてもらうことだ。
7月は、県内の東・中・西部の商業施設で巡回展を開催した。多くの来場者でにぎわい、中国の健康茶を飲みながら二胡の演奏や中国武術の演武を楽しむ姿が見られた。8月には県と浙江省の会場をオンラインで結び、両国の共通課題である少子高齢化や介護をテーマとしたフォーラムを開催する。
県民が友好提携先を知ることは、異文化への理解を深めるのみならず、コロナ収束後の外国人観光客の誘客など相互にメリットのある交流にも寄与する。オンラインで迎える40年目の節目は、浙江省を知るまたとないチャンス。まずは県ホームページから浙江省に触れて欲しい。
静岡県地域外交チャンネル(ウェビナー)
紹興酒メーカーの東京事務所長・夏良根(なつりょうこん)氏をゲストに浙江省の特産品である紹興酒の歴史や酒文化を紹介。静岡市内に設けられたサテライト会場では、県内大学生が紹興酒を試飲しながらウェビナーを聴講し、紹興酒の魅力に触れた。
40周年記念巡回展 中国・浙江省の暮らしと食文化
県内の東・中・西部の商業施設で浙江省を紹介するイベントを開催。二胡の演奏会や浙江省に関するクイズで、交流先の暮らしや食文化に触れた。
up to date 中国 浙江
浙江省の今を知る冊子として発行。身近な切り口から浙江省への興味を引き出す内容だ。
ふじのくに静岡県公式ホームページ「静岡県・浙江省友好提携40周年」はこちら
ウクライナ避難者に寄り添う多文化共生社会の実現に向けて
県内にも、親族や知人を頼って来静したウクライナからの避難者が23名在住(2022年6月末現在)。県は、くらし・環境部多文化共生課に相談窓口を設置するなど、在住市町や民間支援団体とも連携した支援活動を行っている。避難生活の長期化も見据え、教育や就労など避難者が必要とする支援につなげて、避難者が抱える先の見えない不安に今後も寄り添っていく方針だ。
避難者の支援を、くらし・環境部が担当しているのは、避難者も静岡県に暮らす一県民と捉え、誰一人取り残されることなく安全・安心に暮らすことができる多文化共生社会の実現を目指しているからだ。県は、副知事をトップとした多文化共生推進本部を核とし、庁内各課とプロジェクトチームを設置してさまざまな課題解決に取り組むなど、全庁挙げて多文化共生を推進してきた。
現在、静岡県には外国にルーツを持つ多くの人々が共に暮らしている(9万9千人、126の国と地域 2021年6月末現在)。県の取り組みの下、多文化共生意識が県民に広く醸成されてきたこともあり、特定の国籍の外国人への誹謗中傷を聞くことがないのは大いに誇りたいところである。