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【静岡市清水区興津 清見寺】幼少期の家康公に思いをはせて

心字池を中心に背後の裏山の斜面を生かしてサツキやツツジが植栽された池泉鑑賞式の庭園

東海道五十三次の17番目の宿場町、興津宿にたたずむ清見寺。
家康公ゆかりの寺院には文人墨客も多数訪れ、詩歌を残している。
庭、建築、文学、朝鮮通信使などのさまざまな歴史が刻まれた古刹を訪ねた。

清見寺の歴史は古く、約1300年前の奈良時代にまでさかのぼる。平安時代は天台宗の寺院だったが、鎌倉時代に禅宗に改宗(現在は臨済宗妙心寺派)。室町時代には、足利尊氏による「全国十刹」にも選ばれた。
東西の交通の要衝でもあったため、戦乱が絶えない戦国時代には幾度も戦禍を被ることに。今川義元が安定した地位を築いた後、禅僧の太原雪斎(たいげんせっさい)により復興された。その雪斎禅師に教えを受けたのが幼少期の徳川家康だ。大方丈には「家康公手習いの間」の遺構が残されている。「今でいう小中学生ぐらいの頃に通った寺なので、清見寺は家康公にとっては平穏で楽しい思い出しかなかったと思いますよ」と24世住職の一條文昭(いちじょうぶんしょう)さんが静かに語る。
清見寺のシンボルは書院から眺める池泉鑑賞式庭園(国指定名勝)。家康公の意向が反映されており、五木三石を自ら配したとも記されている。また、夏目漱石や島崎藤村、高山樗牛、与謝野晶子など、多くの文人詩人もこの寺を訪れ、作品に書きつづっている。

眼下に駿河湾と三保の青松をおさめる景勝の地でもある清見寺は、江戸時代には朝鮮使節団の宿泊所にもなった。寺内には、朝鮮通信使詩書など国内最多の資料48点が保管され、後世に残す価値ある歴史的資料として「世界記憶遺産」にも登録されている。
例年6月20日には、韓国との平和交流を発信しようと、県が茶道裏千家のご協力の下、「朝鮮通信使記念茶会」を開催。8回目となる今年は裏千家前家元 千玄室(せんげんしつ)大宗匠と川勝知事が亭主となり、韓国の金泰欽(キム・テフム)忠清南道知事、金玉彩(キム・オクチェ)駐横浜総領事、德川宗家19代当主の德川家広氏を迎え、静岡産の抹茶を楽しみながら、家康公と通信使の平和への願いや両国が交流を重ねてきた歴史に思いをはせた。
家康公にまつわる歴史以外にも、庭、建築、文学、日韓友好などの、さまざまな歴史を感じられる清見寺。美しい景趣を楽しみながら散策してみたい。

境内にJR東海道線が走る
穏やかな笑顔に癒やされる一條文昭住職
朝鮮通信使が詠んだ漢詩を木の板に写し取った懸板(かけいた)
島崎藤村の小説『桜の実の熟する時』にも登場する五百羅漢石像

「朝鮮通信使記念茶会」。豊臣秀吉の朝鮮出兵で悪化した日韓両国の関係を修復しようと、1607年6月20日に家康公と朝鮮通信使が駿府城で会見したことを記念し、例年6月20日に川勝知事が亭主となり、清見寺で催している

アクセス

清見寺[せいけんじ]

住所

静岡県静岡市清水区興津清見寺町418-1

アクセス

JR興津駅から1km
東名清水ICから車で10分
JR興津駅から徒歩約15分

お問い合わせ先

054-369-0028

奈良時代に創建された東海道屈指の古刹。国指定の名勝庭園、家康公ゆかりの臥龍梅の他、梵鐘、山門、書画など多くの指定文化財がある。高台からの眺望も素晴らしく、風情ある禅寺から眺める清水港の景色はまた格別。
拝観料/大人300円、中高生200円、小学生100円

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