しずおか絶景 総合情報誌ふじのくに

【小國神社(周智郡森町)】斎庭(ゆにわ)を鮮やかに染めていく、紅葉のシンフォニー

2024(令和6)年10月

色づくもみじと常緑樹のコントラストが美しい、境内の宮川沿いの散策路。見頃は例年11月下旬から12月上旬

緑豊かな里山が広がる周智郡森町。古くからこの地を守る遠江国一宮小國神社(とおとうみのくに いちのみや おくにじんじゃ)の杜は、秋の深まりとともに美しい紅葉に染まっていく。境内の宮川沿いの散策路に並ぶ約1000本のもみじはそれぞれに葉の色づく具合が異なり、朝昼夕と移っていく陽を浴びて、幻想的な世界を創り出す。秋が進むにつれて広がる華やかな紅葉の姿は、美しい音色を重ねていくシンフォニーにも似ている。最近はスマホで写真を撮ることが多いが、まずはレンズ越しではなく、自分の五感で秋の贈り物を存分に楽しみたい。

小國神社の社記によると、欽明天皇の御代16(555)年2月18日に本宮峯(本宮山)に御神霊が鎮まったことから、人々が祭祀を始めたと伝えられている。御祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)。日本を稲穂の実る豊かな国に造り上げ、悪神を平定し、国土を統一した神である。中世の頃から皇族や武将たちのあつい信仰を受け、室町時代、戦国時代を通して祭祀が途絶えることはなかった。元亀3(1572)年、甲斐の武田信玄が遠江に侵攻した際は、徳川家康が戦勝を祈願。天正3(1575)年に見事勝利を収め、その後家康は社殿の造営や社領の寄進を行っている。

現在の社殿は明治15(1882)年の火災の後に再建されたもので、同じ祭神を祀る出雲大社本殿の約半分の規模である。社殿の屋根は檜の皮を幾重にも重ねて造る総檜皮葺き(そうひわだぶき)で、数十年に一度、新たな造営が繰り返されてきた。近年では令和元(2019)年から令和5(2023)年にかけて「令和のお屋根替え」が行われ、伝統技術の素晴らしさが注目を集めた。檜皮葺きの技術はユネスコ無形文化遺産に登録されている。

明治19年に再建された大社造の御本殿。屋根は総檜皮葺で昨年40年ぶりに「令和のお屋根替え」が行われた

小國神社の境内は約35万坪に及び、四季折々の草花が各所に咲きそろい「癒しの斎庭」として親しまれている。斎庭とは神々が居るところを意味する言葉で、長い時を重ねて静かにたたずむ杉木立や周辺を彩る多様な草花を眺めていると、その名前の由来にうなずける。

最近は外国人参拝者も増えており、国内外を問わず参拝者が利用しやすいように環境の整備を進めている。「古代から変わらずに受け継がれている神社の静謐さ(平穏)を守りつつ、美しい斎庭に多くの方が訪れてくださるよう、これからも不断の努力を続けてまいります」と語る打田文博宮司。美しく豊かな自然と神々の存在を感じられる場として、紅葉以外の時期にも何度も足を運びたくなる神社である。

小國神社では、年間100を超える祭祀が粛々と執り行われ、伝統を守り伝えている
御祭神大己貴命は「縁結びの神様」として知られる。水引で結んだもみじのお守りが人気
鳥居横の「小國ことまち横丁」には茶の専門店やスイーツが楽しめるカフェが並ぶ

世界に誇る、しずおか絶景

紅葉に彩られる境内は、日本の伝統美を堪能できる場所

私が知る紅葉は、一面の赤がどこまでも続くイメージでした。しかし、小國神社の紅葉は単調な赤ではありません。複雑に色味が交じり合い、奥行きのある風景を描き出しています。紅葉に染まる境内は、日本の伝統美を堪能できる空間だと思います。参拝の後は、小國ことまち横丁に寄って、カフェで一休み。わらび餅、かりん糖、りんご飴など、昔ながらの伝統的なグルメを楽しむことができます。

蔡 佳蒨(サイ カセン)さん
(台湾 台北出身)

アクセス

小國神社

住所

周智郡森町一宮 3956-1

アクセス

・新東名 遠州森町スマートICより車で約7分
・新東名 森掛川ICより車で約15分
・東名 袋井ICより車で約20分

お問い合わせ先

TEL:0538-89-7302

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