県政TOPICS 総合情報誌ふじのくに

〜スタートアップから選ばれ スタートアップが活躍できる県に〜 TECH BEAT Shizuoka 2024 開催

2024(令和6)年10月

TECH BEAT Shizuokaプロデューサーでもある静岡県フェロー西村 真里子氏にTECH BEAT Shizuoka 2024の内容と、その意義について寄稿していただいた。

TECH BEAT Shizuokaプロデューサー
静岡県フェロー 西村 真里子 氏

TECH BEAT Shizuokaは、静岡県内の企業や自治体が国内外のテクノロジースタートアップと共創し、より革新的な発想で新たなビジネスチャンスに集中できる環境を整えることを目指すオープンイノベーションプログラムである。具体的には、県内企業・自治体がデジタルトランスフォーメーション(DX)やAI活用など、ニーズや業種に合わせて導入できるよう、国内外から幅広いスタートアップが参加している。TECH BEAT Shizuokaに登壇した鈴木康友静岡県知事は「静岡=スタートアップ先進県」を目指すと力強く述べた。

オープニング
登壇した鈴木康友静岡県知事

「スタートアップとの協業」と聞くと堅苦しいイメージを持たれるかもしれないが、実際には非常に明確なニーズと技術の組み合わせから始まる。ここでは「TECH BEAT Shizuoka AWARD 2024」で静岡県知事賞を受賞した、臼井国際産業とスタートアップNossaの協業を紹介する。
駿東郡清水町に本社を構える臼井国際産業は国内外に30以上の拠点を持つ自動車用部品メーカーであるが、各地の工場に出向くにはコストと時間がかかっていた。そこで、TECH BEAT Shizuokaで出会ったNossaの360度カメラを活用した工場管理ソリューションを導入することで、国内から海外の工場の確認が可能となった。

今年のTECH BEAT Shizuokaには、約140社のスタートアップが静岡市のグランシップに集結した。出展数は毎年増加しており、国内のみならず中国、韓国、インド、台湾からもスタートアップが参加している。
海外からも静岡にスタートアップが集まる理由は、魅力的な商談相手に出会えるからである。静岡には、製造、観光、農林水産、物流など多岐にわたる産業が存在するが、スタートアップが単独でこれらの産業にアクセスするのは容易ではない。しかし、TECH BEAT Shizuokaは静岡県と静岡銀行が事務局を務め、スタートアップが「出会いたい取引先とつながれる場」を提供していることが大きな魅力となっている。

TECH BEAT Shizuoka 2024 グランシップ会場写真
国内外からスタートアップが出展

今年からTECH BEAT Shizuoka 特別企画として同プロデューサーの堀内健后氏と始めた静岡市内でのナイトイベントも非常に好評だった。静岡のおいしい食や地酒を囲みながら、静岡の企業とスタートアップがカジュアルに交流できる場を提供することで、商談への近道を作り出した。現場では、スタートアップのソリューションに興味を持った企業が「一緒にやってみよう!」と意気投合する姿が見られた。
産業の魅力に加えて、静岡の食や街、文化の魅力を感じてもらえることで、TECH BEAT Shizuokaはスタートアップにとって特別な体験となっている。

TECH BEAT Shizuokaからは、スタートアップにとってうれしい取り組みも生まれている。
静岡を代表する建設事業者である加和太建設(三島市)、木内建設(静岡市)、須山建設(浜松市)が手を組み、スタートアップとの共創を進める建設DXコミュニティ「ON-SITE X(オンサイトエックス)」は、TECH BEAT Shizuoka 2022をきっかけに始まり、今では全国の建設業に広がっている。今年も高知県の建設業者がON-SITE XメンバーとしてTECH BEAT Shizuokaに参加してくれた。静岡発の取り組みが日本全国のビジネスに影響を与えていることを実感し、非常に感慨深い思いである。

TECH BEAT Shizuoka 2024におけるON-SITE Xセッション

また、この動きは建設業者だけにとどまらず、広島銀行や高知銀行といった他県の地銀も、TECH BEAT Shizuokaに強い関心を寄せている。静岡は、スタートアップとのビジネス創造において、他県からも注目を集める存在なのだ。

今年から、土曜日の開催をファミリーデイとしてスタートさせた。子どもたちがスタートアップのテクノロジーを活用した飛び出す塗り絵(リトプラ)やVRサイクリング(常葉大学、NEXCO中日本、静岡銀行)、沼津高専生が制作したロボットやゲームで楽しむ姿を目にするたび、テクノロジーと共生する未来が当たり前になるという確信が強まる。さらに、静岡が誇る演劇集団『SPAC』の観劇がTECH BEAT Shizuokaの一部として定着し始めていることにも、大きな可能性を感じている。

TECH BEAT Shizuoka 2024 ファミリーデイ (7月27日) では、多くの子どもたちがテクノロジーを活用した飛び出す塗り絵に歓喜の声を上げた

TECH BEAT Shizuokaは、静岡の既存産業をスタートアップのソリューションで革新することを第一目標に、イノベーションを生み出す地域に必要な文化、次世代を見据えた活動にも尽力していく。スタートアップと協業する静岡の企業の「新しい取り組みをやってみよう」という気概はもちろん重要であるし、出展スタートアップを受け入れるための宿、飲食、スタートアップが長期滞在したくなるような地域の魅力発信など、まだまだ手が付けられていないことがある。
このコラムを読んだ方で「TECH BEAT Shizuokaに協力したい」という方がいらっしゃったら、ぜひ静岡県庁の産業イノベーション推進課や静岡銀行地方創生部に連絡をいただきたい。TECH BEAT Shizuokaの鼓動を世界に轟かせにいこう。

西村 真里子 氏

株式会社HEART CATCH 代表取締役、静岡県フェロー、武蔵野美術大学客員教授。日本アイ・ビー・エムでITエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、アドビシステムズでフィールドマーケティングマネージャー、バスキュールでプロデューサーを経て2014年に株式会社HEART CATCH設立。
ビジネス・クリエイティブ・テクノロジーをつなぐ“分野を越境するプロデューサー”として自社、スタートアップ、企業、官公庁プロジェクトを生み出している。

静岡県におけるスタートアップ支援

県は、2023年9月に「静岡県スタートアップ支援戦略」を策定。スタートアップから選ばれ、スタートアップが活躍でき、産学官金の連携によるコミュニティが形成される県を目指すため、「創出」「育成」「連携」を柱に支援を行う。
その戦略の一環として、今年7月25日~27日、TECH BEAT Shizuoka 2024を開催(事務局:静岡県・静岡銀行)。グランシップで、商談会や先端テクノロジーの体験コーナーなどを展開した。6年目となる今年は、スタートアップ139社、来場者7,622人と、初開催時から83社、4,322人増となり、年々増えつつある。

FacebookTwitterLine

総合情報誌「ふじのくに」とは

ふじのくに 最新号を読む
ふじのくにの入手方法

【静岡県庁で入手】
県庁東館2F県民サービスセンター 受付にて配布中
(品切れの際はご容赦ください)

【郵送での入手もできます】
返信用切手(1冊:180円)を同封し下記へお送りください。
〒420-8601 静岡県広聴広報課(住所不要)
「ふじのくに」担当宛

次号(第59号)は令和7年1月下旬発行予定です。

「ふじのくに」に関するお問い合わせ:

fujinokuni@pref.shizuoka.lg.jp