しあわせに暮らせる地域づくり 総合情報誌ふじのくに

“オール静岡”で挑む 静岡やさかなプロジェクト

2025(令和7)年3月

水産業が盛んな静岡県。
しかし、意外にも魚の購入量が全国平均を大きく下回っている現状をご存知だろうか?
さらに、野菜の摂取量も不足しており、これらは静岡県が抱える深刻な課題となっている。
そんな状況を打破すべく、今年度スタートしたのが 「静岡やさかなプロジェクト」だ。
県、静岡県漁業協同組合連合会(以下「静岡県漁連」)、キユーピー株式会社の三者がタッグを組み、
それぞれの強みを持ち寄り、前例のない挑戦に踏み出した。
“オール静岡”の結束は、県民の食卓に新たな風を吹き込み、
その取り組みは今、さらなる広がりを見せている。

昨年4月の「焼津みなとまつり」で共同出店。やさかな新メニューを提供した

停滞感を打破する突破口を模索

「食の宝庫」と称される静岡県。マグロやカツオの水揚げ量で日本一を誇りながら、魚の購入量は全国平均を大きく下回り、野菜も国が定める1日当たりの目標摂取量350gに対して約70gも不足している。豊富な食材を十分に生かしきれていない現状が続いているのだ。

こうした課題を解決するため、静岡県では静岡県漁連を事務局とする「静岡県おさかな普及協議会」が魚食の普及に力を注いできた。高校生向けの料理コンクールや、魚料理レシピのネット公開など、イベントや情報発信を行ってきたものの、活動は頭打ちの状態で、県も新たな打開策を模索していた。

そんな中、キユーピー株式会社から連携の提案が舞い込む。もともと「やさかなプロジェクト」は同社が2022年11月に立ち上げた取り組みで、水産庁が制定した「さかなの日(毎月3日から7日)」に賛同し、キユーピーグループの商品を活用して“やさい”と“さかな”を組み合わせた簡単レシピを販売店やSNSで発信していた。

「私たち一社では限界がある。県の力を借りてプロジェクトをさらに広げたいと考え、連携を依頼しました」と語るのは、キユーピー株式会社の影山さん。県にとってはまさに渡りに船。こうして三者の想いが合致し、2024年4月に「静岡やさかなプロジェクト」として新たな一歩を踏み出すことになった。

試食会で得た確かな手応え

プロジェクトの開始に先立ち、静岡県漁連は昨年4月上旬の「焼津みなとまつり」で、キユーピーと共同ブースを出店。マグロと野菜をドレッシングで和えた新メニューを提供した。これは、カツオをマヨネーズで食べる漁師メシにヒントを得た一品で、用意した2,000食があっという間に配布終了。この成功を機に、産業フェアへの出展など活動の幅を広げていった。

昨年11月の「産業フェアしずおか2024」では、魚が苦手だと思っていた子どもがまぐろサラダをおいしそうに食べる姿や、ブリ大根がドレッシングで簡単に作れることに驚く来場者の姿が多く見られた。プロジェクトをけん引する県水産振興課は、「魚が嫌いなのではなく、調理方法や食べ方の提案次第で、印象が大きく変わる」と実感。プロジェクトの方向性は間違っていないことを確信した。

それぞれの強みを生かした協力体制

「県と連携して公的なプロジェクトにすることで、お客さまとのタッチポイントが増え、広い範囲で大きな影響力を発揮できるようになりました」と影山さんは語る。
普段は競合関係にある販売店やメーカーも、今回は「静岡県民の健康のために」という共通の目標が旗印となり、業種を超えて手を取り合えたことに大きな意義があったという。

キユーピー株式会社 名古屋支店
静岡営業所 影山 智史さん

静岡県漁連の髙瀨さんと小林さんは、「キユーピーさんが主導する企画や運営を通して多くを学びました。特にお客さまの反応を間近で見られたのは大きな収穫でした」と振り返る。

静岡県漁連(静岡県おさかな普及協議会)
髙瀨 進さん ・ 小林 智憲さん

野菜や魚を実際に購入し、食べてもらうには、販売店など現場でのアプローチが不可欠だ。
いわゆる「ラストワンマイル」、つまり消費者が最終的に商品を手に取るまでのプロセスが成功の鍵となる。これまで静岡県にとってはここが課題だったが、今回のプロジェクトではキユーピーの現場力がその弱点を補い、大きな効果を発揮した。

こうして、それぞれの強みを生かした協力体制を築けたことが、プロジェクト成功の大きな要因となった。今後の官民連携プロジェクトを進める上でも、非常に価値ある経験となった。

新しいパートナーを携えて“オール静岡”で挑む

静岡県漁連は、若者へのアプローチを強化するためにSNSを開設し、プロジェクトの活動を積極的に発信していく計画だ。一方、キユーピーは、子どもたちへの働きかけとして、学校給食に「やさかなメニュー」を取り入れることや、家庭科の授業で静岡県産の魚や野菜を活用する機会を増やすことを検討している。

やさかなプロジェクトの進化は止まらない。キユーピーに加えて5社のメーカーが新たに参画し、やさかなメニューを提供する店舗数は、8社の販売店の協力を得て約350店舗に拡大(2025年2月時点)。これにより、静岡県全域をカバーする体制が整い、“オール静岡”と呼ぶにふさわしいチームが誕生した。

県と企業が一体となって県民の食卓に新たな変化をもたらすこの挑戦は、今後ますます加速していくだろう。

静岡やさかなプロジェクトとは?

コンセプト

2024年の活動内容

やさかなメニュー選定会(8月)

やさかなメニューの選定会を実施。主菜2品、副菜6品のやさかなメニューを決定。県とキユーピーのホームページにて公開中。

やさかなメニューの詳細はこちら(静岡県サイトへ遷移します)

県庁東館食堂にて やさかなメニュー提供(11月)

2週間にわたり日替わりでやさかなメニューを提供。食堂側も「集客の目玉になった」と喜び、好評であった。

やさかなメニュー試食会(11月)

マックスバリュ東海沼津南店とビッグ富士4店舗にて、やさかなメニューの試食やマグロの解体ショーなどを実施。

産業フェアしずおか2024に出展(11月)

8月のメニュー選定会で選ばれた「まぐろサラダ」と「ブリ大根」を試食提供し、2日間で約4,250食が完売した。

目標

県民が今よりも月1回多く魚と野菜を食べる習慣をつけることで、健康的な食生活を送ること。
具体的には「生鮮魚介類を+ 2,000g/年、野菜を+70g/日」摂取すること。

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