静岡の未来、創造 総合情報誌ふじのくに

環境×ビジネスで未来をつくる!静岡県SDGsビジネスアワード開催

2022(令和4)年7月

富士山や南アルプスなど、豊かな自然に恵まれた静岡県は、県民の環境への意識も高い。企業活動においても環境への取り組みは必要不可欠な課題だ。静岡から発信する環境×ビジネスのオンリーワンな取り組みを紹介する。

地域活力の向上を目指した、SDGs×ESGの取り組み

地球規模で環境問題が深刻化する中、SDGsの達成が急務となっている。地域単位でも環境、経済、社会の持続可能性の確保に向けた取り組みを図ることが求められ、令和元年8月、全国初となる「地域ESG金融連絡協議会」が発足した。

ESG金融とは、企業の分析、評価を行う上で長期的な視点を重視し、環境、社会、企業統治の要素を考慮した投融資行動を取ることである。ESG金融連絡協議会では地域の金融機関や経済団体、自治体等が連携し、ESG金融を活用しながら効率的でインパクトのある地域支援を行っていく。

こうした機運の高まりに合わせて県は、環境ビジネスの普及拡大を目指す取り組みを実施している。

一つのアイデアから事業化へ 静岡県SDGsビジネスアワード

県は、未来をつくる環境ビジネスを表彰するため、SDGsビジネスアワード2021を開催。環境ビジネスに取り組む法人を対象に、本県をフィールドとして環境問題の解決に貢献する事業アイデアを募集。採択された団体は、総合プロデューサー谷中修吾氏を筆頭に、環境分野だけでなく金融、経営、マーケティング、地域づくりなどさまざまな専門分野で活躍するメンターの支援を受け、多方面から事業化へのプロセスを磨いていくことができる。

最終プレゼンテーション、授賞式は2022年3月23日 グランシップにて開催。

静岡県SDGsビジネスアワード2021採択団体(5団体)

磁石で高速加熱するMAGHEAT〜加熱は化石燃料から磁石燃料へ〜
消えて無くなるものを創る〜SDGsの実現に貢献する次世代の解体技術への挑戦〜
農村の「農工複合体」が近未来をリノベーションする〜みかんから新産業を生み出す三ヶ日プラットフォームの挑戦〜
マグロの希少部位に光を
富士山麓ジビエを通じた環境教育プラットフォームの創造~全ての狩猟プロセスの実践値を教育プログラムに変換する〜

県知事賞「MAGHEAT」TSK株式会社

初開催である令和3年度は、45件の応募があり五つの団体が採択された。3ヶ月間で事業アイデアをブラッシュアップさせた後、最終審査を経て見事に静岡県知事賞に輝いたのは、TSK株式会社MAGHEAT」。脱炭素社会への実現に向けた磁力を使ったエネルギーの提案だ。

磁石を高速で回転させて、金属内部に熱を生み出す仕組み

「MAGHEAT」はモーターに取り付けた磁石盤を回転させることで近接した対象金属(アルミニウムなど)を加熱する装置だ。
原理はシンプルで、回転する磁石盤の磁力を受けた金属内部に電気(渦電流)が発生し、その電気の内部抵抗により熱が生まれる。
金属加工の加熱は化石燃料が主流の中、磁石とモーターによるエコな加熱の可能性を追求している。

開発責任者のTSK株式会社専務取締役 窪野茂氏は
「磁力で熱を発生させるアイデアは社員が持っており、この現象を使って世の中に貢献できる製品を作れないかと社内で議論が繰り返された。火を使わないことは、温室効果ガスへの削減につながると考え、社員一丸となって、製品を開発してきた。メンターの方々との交流で、技術者にありがちな『製品が出来て満足』してしまうという問題点を指摘され、ビジネスに落とし込むことを鍛えられた。自分たちだけでは気付けないこと、思いもよらない観点からの指摘をクリアしていくことで視野が広がり、顧客への紹介の仕方も変わった。
県知事賞の受賞で、有識者に認めてもらえたことが自社技術への自信となり、他分野へとビジネスネットワークが広がったことも、零細企業としては大きな収穫になった。まだ課題もあり、例えばハウスメロン栽培など農業分野に進出するためには自社の専門外となるデータの集積が必要になる。今後は、大学、研究機関とも連携しながら進めていきたい。」
と受賞を契機に次の展開を着実に見据える。

静岡県SDGsビジネスアワード2022の開催を決定

アワード自体への反響も大きく、採択団体への注目が集まるとともに、この情報に触れた他団体が環境ビジネスに取り組むきっかけとなることも期待できる。今年度も、第2回目となる静岡県SDGsビジネスアワード2022の開催を決定。8月から募集を開始する。

突き抜けたアイデアで環境ビジネスの未来を切り拓け!

静岡県SDGsビジネスアワード総合プロデューサー
BBT大学 経営学部グローバル経営学科 学科長
谷中 修吾氏 (湖西市出身)

静岡県SDGsビジネスアワード 総合プロデューサー 谷中修吾氏にアワード実施の意義を聞いた。

静岡県が先陣を切って環境分野をリードすべし!

近い将来、現実的に人類が地球に住み続けられなくなる… それほどに地球環境問題は深刻化している。悠長にSDGsと言っている場合ではなく、超速で環境イノベーションを生み出すことが必要だ。今こそ、大自然の富士山を有する静岡県が、先陣を切って日本の環境分野をリードしていく。それが、静岡県SDGsビジネスアワードの情熱だ。

最大の特徴は、3ヶ月のメンタリング期間を設けて、事業の成長支援を図るアワードであるということ。私の知る限り、環境ビジネスに特化してアクセラレータ型(事業成長支援型)のアワードを主催している地方自治体は、日本全国で静岡県だけ。未来をつくる環境ビジネスを発掘し、加速し、波紋を広げる。静岡県から、日本、そして、世界へ。

抜群のポテンシャルを持つ静岡県の環境ビジネス

本アワードでは、3ヶ月かけて採択団体の事業アイデアをブラッシュアップ。だからこそ、エントリーするのは本気の法人ばかり。すべての応募団体の事業アイデアが魅力的で、選考プロセスは実に難航した。最終的に採択されたのは、他では真似できないオンリーワンの価値を持ち、静岡県を象徴するような事業アイデアで応募した5団体。

メンタリング期間では、濃密なオンラインミーティングのみならず、各団体の現場を体感して討議するリアルミーティングも取り入れた。事業の価値を理解すればするほど、静岡県をフィールドとして環境ビジネスを展開する各団体のポテンシャルの高さを実感。未来をつくる環境ビジネスと呼ぶにふさわしい事業ばかりで、国内外に発信する社会的意義がある。

謙虚な団体ほど本命、その価値を広く発信せよ!

静岡県内には、ポテンシャルの高い環境ビジネスが山ほどある。同時に、対外的な発信に“謙虚”なのが、我が静岡県の特徴だ。だからこそ、環境分野で素晴らしい貢献をしている真面目な企業ほど、その取組を広く発信していないことが多い。私から見ると、謙虚な団体ほど本命で、もっと知られるべき価値がある。

第2期となる静岡県SDGsビジネスアワード2022では、採択団体の数を増やす見込みだ。長年の実績を持つ企業やNPOはもちろん、創業して間もないスタートアップも大歓迎。さらには、昨年度は採択に至らなかった団体の再エントリーも積極的に受け入れるため、遠慮なく飛び込んできてほしい。突き抜けたアイデアで、環境ビジネスの未来を切り拓け!

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