静岡の未来、創造 総合情報誌ふじのくに
伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクト(ICOI(イコイ)プロジェクト)
温泉に入って楽しく健康に!ヘルスケアの視点(アプローチ)で温泉地を活性化
静岡県伊豆地域は国内屈指の源泉数を誇る全国的な観光地。
今、県は温泉の持つ健康増進効果等に注目し、
従来の観光業の枠に収まらない振興策を進めている。
目指すは、伊豆の多彩な資源を温泉でつなぎ合わせたヘルスケア産業の創出だ。
青いフロートを使ってプールにプカプカと気持ち良さそうに浮かぶ大柄な男性たち。彼らは日本プロラグビーの最高峰リーグワンに加盟するラグビーチーム「静岡ブルーレヴズ」の選手たち。そして、プールの水は“温泉”である。
ここは静岡県賀茂郡西伊豆町、廃校になった山あいの小学校の校舎を利用した町営宿泊施設「やまびこ荘」。温泉を引き込んだ25mプールがユニークな、校外学習の宿泊体験などに人気の施設だ。
温泉のプールと聞くと露天風呂のようなポカポカの湯加減を想像しがちだが、もともとぬるめの湯で加温はしていない。水着着用で春から秋にかけて利用できる屋外温水プールである。
そして上の大きな写真は、東海大学と西伊豆町が共同で採択を受けた「伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクト(ICOI(イコイ)プロジェクト)実証事業」の取り組みの様子。町営温泉プールを利用した新たなスポーツ合宿プランの開発を東海大学が実施するというものだ。
「湯治(とうじ)」という言葉のとおり、温泉は古くから療養目的で利用されており、その効果効能は一般に知られている。しかしながら、スポーツ分野における積極的な利用は少なく、温泉を利用したトレーニングがアスリートの心身に及ぼす影響についての研究もあまり知られていないのが現状だ。
そこで実際に、アスリートに水中ウォーキングやリカバリーをしてもらい、血圧測定や唾液採取を行った。科学的な見地から温泉効果のエビデンス(根拠)を得ることを目的としている。
温泉のポテンシャルは無限大
もとより伊豆は数多くの名士文人が湯治のために滞在した全国屈指の温泉地。近年ではユネスコの世界ジオパーク認定や、東京2020オリンピック・パラリンピック自転車競技の開催地となるなど、新たな地域資源も加わった。コロナ禍により観光業は一時期大きな打撃を受けたものの、大規模な旅行支援策や入国制限の緩和により、かつての状態を取り戻しつつある。
一方、長期的に見れば「人口減少」「働き手の減少」という大きな課題を抱えている。また、健康意識の高まり、旅行スタイルの変化などへの対応も迫られている。
そこで県は伊豆地域の産業がこれからも持続的に発展するために、観光事業者と他分野事業者との連携によるイノベーションを推し進める必要があるとして、2021年度にICOIプロジェクトを始動させた。
本プロジェクトは「伊豆に適した新しいヘルスケア産業の創出」と「研究拠点の創出」という二つの柱で展開していく。温泉と、食・スポーツ・自然・文化・歴史などの地域資源とを掛け合わせることにより、ヘルスケア産業を創出しようとする新しい試みだ。
本年度は「スポーツ」「ヘルスツーリズム(湯治)・ワーケーション」の分野で実証事業・補助事業を実施。その成果を継続させるための人材育成・調査研究にも取り組んでいる。思い描くビジョンは、「住む人や訪れる人が、身も心も元気になる伊豆地域」。そうした伊豆ならではの魅力を全国へ、そして世界へ向けて発信する。
伊豆ヘルスケア温泉イノベーションプロジェクトとは
伊豆地域の温泉を核とし、地域資源やスポーツ科学などの知見を組み合わせ、官民が一体となって伊豆地域に適したヘルスケアサービスなどを創出することで、地域の活性化と産業の振興を図る取り組み。
ふじのくに食と温泉文化フォーラム開催
県は昨年11月、プラサヴェルデ(沼津市)にて、東アジア文化都市事業として「ふじのくに食と温泉文化フォーラム」を開催した。観光面で密接に関係する「食文化」と「温泉文化」の発信と振興を図るもの。「食」と「温泉」の二つのプログラムに分かれ、シンポジウムやトークセッション、取り組み事例の紹介などが行われた。
「温泉」プログラム前半のシンポジウムでは、イタリア・ドイツ・ハンガリー各国の健康保養地の紹介、ポストウェルネスとしての温泉活用が語られ、後半のトークセッションでは、タイのスパ利用や国内温泉地の先進的な事例が紹介された。