静岡で輝く人 総合情報誌ふじのくに

クラーク・シェリーキャサリンさん/笹間が特別な場所であることを伝えたい

2024(令和6)年9月

地元愛から始まったプロジェクト

持続的に漁業を行えるよう水産資源を管理する、国際水産資源管理の研究者として世界中を飛び回っていたクラーク・シェリーキャサリンさんが、島田市最北部の笹間地区に移住したのは19年前のこと。縁あって静岡市清水区にある遠洋水産研究所(現・横浜市)で働いていた頃、趣味のサイクリングで訪れた自然豊かな笹間が故郷の景色と重なり、移住することを決めました。「SASAMA」という言葉の響きにもときめいたそうです。その後、国連食糧農業機関のコンサルタントとなり、テレワークで研究や報告書作成、本の出版、講義のために世界各地へ行くことも。「疲れて帰ってきても、笹間の自然が癒やしてくれますし、難題に向き合う時も集中できる。ここだから良い仕事ができます」

転機が訪れたのは8年前。ある日、家主が他界し、空き家同然となっていた集落の名主・岡村家の屋敷を見た時に、「朽ちてなお神々しい地域の遺産を残していかなくては」という使命感に駆られました。そして、屋敷を買い取り、地元の人たちと再生することで過疎化や高齢化が進む地域に活気を取り戻そうと、岡村家の屋号「サスイチ」を引き継ぎ、「SASU・ICHI(サスイチ)復元プロジェクト」としてスタート。

テニスコート5面分もの敷地には、母屋をはじめ、離れや茶室、蔵、私設の稲荷神社など10の建物と日本庭園があります。できるだけ昔のものを生かすためにしっくい、建具、瓦など、それぞれ専門の職人に依頼して、4年前に茶屋「蛍」と民泊をオープンさせました。コロナ禍の影響を受けながらも、国内外から延べ4,000人が訪れ、静かな山村に新たな風を吹き込んでいます。

2年前に日本国籍を取得したクラークさんは、民泊に「3泊以上」というルールを設けました。「3日以上泊まってもらえたら、SASU・ICHIや笹間が、訪れた人にとっての特別な場所であることが伝えられると思いました。そうしたら、笹間に住みたいと思ってくれる人が増えるかもしれない」

クラークさんは山村の未来を照らす、光のような存在です。

築70年ほどの母屋はいろりの間や広間、図書室など14部屋から成る
茶室を改装した茶屋。クラークさんの手作りマフィンとエスプレッソが好評

プロフィール

蔵で見つけた琴を修復。週1回のお稽古が楽しみの一つ

クラーク・シェリーキャサリン さん

国連食糧農業機関コンサルタント
SASU・ICHI(サスイチ)復元プロジェクト代表

米国・メーン州出身。大学で水産学の修士コースに進み、日本水産の母船に勤務した時に日本人の誠実な働きぶりを通じて、日本文化に興味を持つ。博士号を取得後、日本の文部科学省奨学金を得て、2003年に遠洋水産研究所に勤務するため来日。2005年に笹間に移住。現在、愛犬ティモ君とSASU・ICHIの母屋に暮らしている。

日本の外交政策に関する国民の意識向上に貢献されたとして、2024年度外務大臣表彰を受賞

SASU・ICHI

住所

静岡県島田市川根本町笹間上1323

公式サイト

https://www.sasuichi.org/

編集後記

静岡市で観測史上最高気温を記録した中での取材となりました・・・
こういう時は、アイスで少しでも涼を取りたいですよね。
今号で紹介している七富チーズ工房さんの夜アイス専門店は要チェックです!(麻)

読者の声 第56号アンケートより

武道のことからWBCのお話の展開が興味深かったです。兵法について掘り下げてみたくなりました。(焼津市M.Mさん)

畳石式わさび田のしくみのイラストがわかりやすく、わさびの学習をしたばかりの小学生の娘と楽しみながら読みました。(静岡市 T.Nさん)

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