フカボリ
「若年者ものづくり競技大会」出場をきっかけに、企業で活躍中!~技能をとことん高め、次世代へ引き継ぐ~
2023年6月30日
学生がものづくりの技能を競い、日本一を決める、「若年者ものづくり競技大会」。18回目を迎える今夏、ものづくり県・しずおかで開催されます。本県代表の19人が日頃、磨いてきた技能を披露し、頂点を目指します!
大会に出場された方が、その後どのような活躍をされているのか、気になった広聴広報課職員が、本田技研工業株式会社トランスミッション製造部(浜松市中区)の山本さんに取材しました。
山本さんの現在の活躍の状況を、県民だより令和5年7月号と一緒にご覧下さい!
目次
1.ものづくりの好きな青少年が、「若年者ものづくり競技大会」に挑戦!
本田技研工業株式会社 トランスミッション製造部に勤務し、旋盤職種に取り組んでいる山本雄理さん。高校時に第12回若年者ものづくり競技大会で金賞を受賞、就職後も第57回技能五輪全国大会で敢闘賞、第58回技能五輪全国大会で金賞を受賞するなど、ご活躍されています。
ーー「若年者ものづくり競技大会」に出場したきっかけや、メカトロニクスや機械製図(CAD)など多くの職種がある中で、旋盤職種を選んだ理由は?
元々ものづくりが好きで、工業高校に入りました。旋盤職種がものづくりの代表として広く認知されているので選び、高校生のものづくりコンテストに参加し、東海大会で「若年者ものづくり競技大会」の出場権を得たのがきっかけです。
ーー旋盤とはどのような職種なのでしょうか?
旋盤とは、工作物を機械の軸に固定して回転させながら、バイトとよばれる専用の刃物を当てて、ナイフでリンゴの皮を剥くように削っていきながら、丸い形の部品を作ります。
ーー大会に出場するにあたって、工夫したことや大変だったことは?
大会では、「この鋼の丸棒から0.01ミリの精度で図面通りの製品を作って下さい。」「作った複数の部品がスムーズに組み合わされるように調整してください。」といった課題が出されます。工程を覚えるのが大変で、機械を精度よく取り付けて作業をするには、技能が必要です。そこを高めるように、努力しました。思い通りに作業をするのはなかなか難しく、失敗したり寸法を間違えたりしました。しかし、思い通りにできた時は達成感があります。
ーーどのぐらい練習をしましたか?
工業高校では、自分は機械工学科の中で専門知識を学び、大会の練習は部活動の中で行なっていました。基本的には、週4~5日ぐらい。平日は放課後に2~3時間、土日は半日~1日練習をしていました。
ーー金賞を取った後、家族や先生、友達など周りの反応はどうでしたか?
友達などに本当に喜んでもらえました。大会での金賞は、自分の高校では初。でも、自分1人で取れたものではない。教えていただいた先生や、支えてくれた家族に対して感謝しています。
ーー金賞を取った後、自分の中で、ものづくりに対する気持ちなど何か変化はありましたか?
さらにその上に、技能五輪など高いレベルの大会があることを知り、「より高みを目指したい。学生と社会人とでレベルが違うので、突き詰めるなら、その中で突き詰めていきたい。」と思うようになりました。
2.さらなる高みを目指して、本田技研へ、そして「技能五輪」へ
さらなる高みを目指して、本田技研工業株式会社トランスミッション製造部に入社した山本さん。山本さんがいらっしゃるトランスミッション製造部は、技能五輪のメカトロニクスと旋盤職種に取り組んでいます。旋盤職種には、本田技研の他にも、多くのものづくり企業が出場しているそうです。
技能五輪大会の詳細ついては、特設サイトをご覧下さい。
ーー本田技研ではどんな仕事をしてらっしゃるのでしょうか?
今は、コーチとして指導する側、後輩の選手の育成に携わっています。
選手の時は、残業を含めて8~10時間 ひたすら技能五輪の課題に取り組んだり、準備したりしていました。
ーー本田技研でものづくりの仕事をし、その合間に技能五輪の練習をするのではないのですか?
ひたすら、技能五輪の課題に取り組んでいます。なかなか一般の方から理解しづらい仕事なのですが、実業団のチームのような立場です。会社の名前を背負って、大会で活躍するための技能や技術を磨くと共にその過程で将来会社にて活躍することができる人材の育成を行っています。
ーー技能五輪と、若年者ものづくり競技大会はどう違いますか?
技能五輪は取り組む課題のレベルが全然違います。自分が入社して初めての技能五輪に出場した時、予選の課題、図面を読んでも理解できませんでした。難易度が高いです。高校野球とプロ野球のように、お金をもらいながら競技に取り組んでいるだけの差はあります。
ーー技能五輪で金賞を取るために努力したことは?
入社して2年目に全国大会に出場した時にトラブルを起こし、順位を落としてしまいました。その経験があったので、3年目の大会では自分の技能を上げるのはもちろんですが、本番で練習どおりに実力を発揮するために、事前にトラブルが起きそうなものに対して対策を立てたり、イメージしたりと準備していました。大会時は、設備や環境が変わるため、普段だったらあまり出ないような単純なミスやトラブルが起こりやすくなるので、練習の時からトラブルやミスを予想して対策したり、本番並みに追い込んで訓練をしたりしました。
ーー金賞を取った後、仕事にどんな好影響がありましたか?
後輩たちに、自分の技能をきちんと伝え、次の金メダリストも本田技研から出るように、仕事に対する意欲が変わりました。
ーー後輩選手を育成するにあたって、工夫していることは?
その選手に何を教えるかによって変わりますが、基本的に旋盤を知らずに本田技研へ入社した選手もいるので、最初から教えて、最終的には自分たちがやっていたのと同じように高いレベルで競技課題を作成できるように育成しています。
教える時、自分がこうやっていたからこれをやりなって言っても、それが必ずしも全員に当てはまるわけではありません。その選手にあったやり方や教え方を一緒に探って見つけなければならないし、教える時に言い方も工夫しなければいけないし、本当に難しいです。
ーー山本さんの今後の将来の目標は?
まずは、今教えている選手が大会で活躍し、結果を残してもらいたいです。
長い目標ですと、自分は元々機械加工が好きで、技術や技能を突き詰めてきたという思いがあるので、その技術で誰かのために、会社のために、お客様のためになるような仕事をしていきたいです。
ーー今年、若年者ものづくり競技大会へ参加する後輩たちへ、ぜひメッセージを!
1つのことを突き詰めて努力することで、その経験が将来必ず役に立ちます。とにかく、大会の目標に対して、がむしゃらに努力をして下さい!
取材するまでは、山本さんのように技能五輪に向けて日々ものづくりの技能を高めるのに励んでいる方々がいらっしゃるのを知りませんでした・・・技能五輪トレーニングセンターにお邪魔した時に、必ず笑顔で挨拶してくださった選手の皆さん。でも、練習している姿は、今までの笑顔と全く異なり、真剣な表情そのものでした。これからの活躍に期待し、応援しています!
取材をお引き受けくださった山本さん、本田技研の皆さま、本当にありがとうございました。
○本田技研工業株式会社トランスミッション製造部 ホームページ
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県広聴広報課 ☎054(221)2231 FAX 054(221)4032