フカボリ

「あぶトレ!」で子どもの安全を守る

2024年9月24日

 県内の小学校で実施されている「あぶトレ!」をご存知ですか。
 「あぶトレ!」とは「あぶない時にどうするかを身につけるトレーニング」の略で、自分の身を守る方法を体験しながら学ぶことができます。
 NPO法人静岡県防犯アドバイザー協会の方々が講師となり、希望のあった県内の小学校で防犯教育を実施しています。今回は、静岡市立西奈南小学校で実施した「あぶトレ!」を取材しました。また、講師の方々に、この活動にかける思いも伺いました。

目次

  1. 「あぶトレ!」の中身とは?
  2. 講師に聞いた、「あぶトレ!」にかける思い
  3. 講師からのメッセージ

1.「あぶトレ!」の中身とは?

 取材のため西奈南小学校の体育館を訪れると、講師の方が「あぶトレ!」の準備をしていました。手作りの車や家などの大道具から、不審者が子どもを誘いだす際に使用しそうなおもちゃ、花火、虫かごなどもあります。どれも子どもの興味を引きそうなものばかりです。時間になると、子どもたちが体育館に集まってきました。

本日のトレーニングは以下の内容です。

  • 怪しい人や危ない場所の説明
  • 遠くを見て歩く練習
  • きっぱり断る練習
  • 防犯ブザーの使い方、取り付け方など
  • 大声を出す練習
  • 全力で逃げる練習
  • 腕を捕まれたり、抱きつかれた時の対応

などです。早速、トレーニングが始まります。

▲講師を紹介し、いよいよ「あぶトレ!」が始まります

-遠くを見て歩く練習とは?

 講師の方が「みんな20mってどのくらいの距離か分かるかな?」と質問し、実際に子どもたちが20mの距離を自分の想像で歩いてみました。不審者は20m先から子どもたちを狙うと言われているそうです。その距離感を児童に体感してもらうためのトレーニングです。
 しかしながら、20mだと思った場所は、実際は20mより短い距離でした。講師から「学校の25mプールを想像してみて!」とのアドバイスの後に、もう一度距離を計測しました。すると、多くの子がおよそ20mの位置を把握することができました。子どもが理解しやすい例えでイメージしてもらい、こんなに遠くから不審者が狙っているのだと実感してもらった上で、「近くばかり見ていないで、遠くを見て歩くようにしよう!」と教えていました。

-その他にも、さまざまな場面を体験していきます

 次に、講師が不審者役で子どもにさまざまなパターンの声かけをして、きっぱり断る練習をします。筆者が想像していたよりも、子どもの気持ちを惑わすような巧妙な内容でした。「犬を探しているから、一緒に探してほしい。」や、「お腹がすいたからコンビニを探している。一緒に車に乗って案内してほしい。」など、子どもたちの優しい心につけ込むような内容で驚きました。子どもたちはきっぱりと「嫌です!」「行きません!」と答える練習をします。

▲「犬を探しているから、一緒に探してほしい」という声かけの場面

 この他にも、大声を出す練習や全力で逃げる練習もしました。不審者役の講師や先生方が走って子どもたちを追いかけます。子どもたちはランドセルを捨ててでも逃げる、ということを体験しました。本気で追いかけてくる大人はなかなかの迫力です。

▲全力で逃げる練習

-トレーニングを終えて

 体験型のトレーニングは、実際に体を動かしながら行うため、子どもたちも真剣に、時に楽しく参加している様子でした。講師の方々は体育館の中を動き回り、身振り手振りを交えて子どもたちに教えていました。子どもの身を守るための大切なポイントがたくさん詰まった45分でした。
 最後に代表の児童が「いっぱい学んだ。(不審者は)遠くから狙ってくることが分かった」という気づきを発表してくれました。身を守る方法を学ぶとともに、大人である私たちも、地域で子どもを見かけた際は、見守る・気に掛ける ということが大切であると感じました。

2.講師に聞いた、「あぶトレ!」にかける思い

トレーニングの後に、講師の方々にお話を伺うことができました。

-「あぶトレ!」講師の日々活動について教えて下さい。

 講師は県の「あぶトレ!」講師養成講座を修了した者が務めており、普段は仕事や自治会活動をしている方、定年退職されている方などさまざまで、地域の活動と両立している方が多いと思います。
NPO法人静岡県防犯アドバイザー協会は西部、中部、東部の3つの支部で活動しています。私たちは中部支部で約20名で活動しています。中部地域の小学校を中心に回っていて、1日に3回「あぶトレ!」を実施したこともありました!
 中学や高校などへ防犯教室に行くこともあります。その時は、今日のような小学生向けの内容を少しアレンジします。例えば、声かけの内容を「ATMでお金をおろすのを手伝ってほしい」という風に変更します。実際、中高生も被害に遭うことがありますから。この他、大人向けに振り込め詐欺防止などの講座を担当することもあります。

-地域の安全のためのポイントは何でしょうか。

 やはり「地域の目」ですね。地域によっては自主的に見守り活動を実施している所もありますし、ボランティアで数十年、子どもの登下校時の見守りをしている方もいて、本当にありがたい存在です。
 地域によって実情や活動内容に差はありますし、今はなかなか地域の活動への参加が難しい方も多いと思います。無理のない範囲で、例えば在宅時に、家の付近で少し見守りをしていただくだけでも、効果があるのではないでしょうか。

-活動する中で感じる課題はありますか。

 人員不足ですね。高齢になると素早い動きは大変です。体を使った活動なので、ぜひ若い方に加わっていただきたいと思いますが、仕事などの理由で難しいようです。なり手が不足していると感じます。
 それから、子どもたちだけが「あぶトレ!」を体験するのではなく、多くの保護者に見ていただきたいという思いもあります。今は子どもたちにタブレットが配布されているので、「あぶトレ!」の動画を保護者に配信してくれる学校などもありますが、「あぶトレ!」の周知の方法は、課題の一つです。

▲「あぶトレ!」講師のみなさん。
左から増田さん、白木さん、伊藤さん、鎌田さん

3.講師からのメッセージ

-日々、「あぶトレ!」で学校を回っておられる講師のみなさんに、県民の方や子どもたちに向けてメッセージをいただきました!

○増田さん
 「あぶトレ!」を体験して、いざという時に役立ててもらいたいです。講義を受けるだけではなく、実際に体験してもらうことが「あぶトレ!」の特長です。体験した子どもたちは、大人になったら周りの子どもに「あぶトレ!」で勉強したことを伝えてほしいと思います。

○白木さん
 不審者に遭遇した時、子どもたちが大きな声を出せるか、「イヤだ」としっかり断れるかを考えると、まだまだ不安です。「あぶトレ!」に理解を示してくれる方、私たちと一緒に活動しませんか。

○伊藤さん
 「あぶトレ!」について、もっと皆さんに知ってもらいたいです。「あぶトレ!」を継続していくことが、子どもの安全にとって重要だと思います。

○鎌田さん
 「あぶトレ!」は、子どもたちの安全教育に必要です。子どもの安全を保護者の方にもしっかりと考えていただき、我々もその協力をします。「あぶトレ!」はその場限りではなく、継続していくことが大切なので、保護者にもぜひ見ていただきたいと思います。子どもたちは、くれぐれも不審者に気をつけて、今日学んだことを頭の片隅に入れて外出してほしいです。

取材を終えて

 講師の皆さんは、子どもたちや地域の安全のために日々活動して下さっていることが分かりました。普段の生活の中でも、街で見かける子どもたちの様子を少しでも気に掛けることは、子どもの見守り活動の第一歩となるのではないでしょうか。地域の大人たちによる「地域の目」が大切であると改めて感じる取材でした。取材に御協力いただきました、静岡県防犯アドバイザー協会の皆さん、西奈南小学校の皆さん、ありがとうございました。

あぶトレ!のチラシはこちらをクリック

―――↓問い合わせ―――――――
県広聴広報課 電話054(221)2231 FAX054(254)4032

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