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静岡ホビーショー小中高校生招待日の開催〜プラモデルから静岡のものづくりの魅力を体感〜

2022(令和4)年10月

令和元年における全国の「プラモデル」の出荷額は241億7,100万円。
そのうち、静岡県の出荷額は222億5,800万円で92%を占め、静岡が誇る日本一の産業だ。
年1回開催されている見本市・静岡ホビーショーを舞台に産業と教育の連携を実現させた静岡県独自の取り組みを紹介する。

※「2020年工業統計調査品目編」(経済産業省)

静岡独自の取り組み「小中高校生招待日」

2022年5月11日~15日、ツインメッセ静岡において第60回静岡ホビーショーが開催された。主催の静岡模型教材協同組合(青島文化教材社、タミヤ、ハセガワ)に加えて全国の模型メーカー約80社が一堂に会し、3年ぶりに一般公開も実現し熱気あふれる開催となった。

5日間の日程の中で、小中高校生招待日が設けられていることをご存知だろうか。静岡開催のホビーショーならではの特徴的な取り組みで、2019年から始められた。そのきっかけは、視察時に県知事が発した「子どもたちに見せるべきだ」という言葉だ。主催団体である静岡模型教材協同組合と県の経済産業部が意見を出し合い、県内の小中高校生限定の招待日を設定。静岡市と教育委員会とも連携し、実現となった。

その教育的意義の第一は、プラモデルをつくることでものづくりを体験し、自分で何かを作り出す喜びを感じてもらうこと。
また、プラモデル製造が静岡を代表する産業の一つであることを実感してもらい、次世代を担う人材の育成にも寄与すること。さらに多くの有名メーカーが静岡で製造していることを知ることで、地域に誇りを持つことになる。実体験を通して学べる貴重な機会なのだ。

子どもたちの笑顔から新たな発見

2019年の初回は約5,200人が参加。3年ぶり2回目となった2022年は、コロナの影響による人数制限もあり約3,100人の児童・生徒の来場となった。参加者にはアンケートも実施した。

静岡模型教材協同組合理事長の田宮俊作さんは、その結果に驚きを隠せなかったと言う。
「約75%の児童生徒が今までプラモデルに触れたことがなかったなんて思ってもみませんでした。その子たちがホビーショーで体験したことで面白いと感じてくれて、また作ってみたいと言ってくれる。こんなにうれしいことはありません。プラモデルを作るには手だけでなく、考える脳も必要。集中力、想像力、あきらめないことも身に付いていくはず。うちの組合名に教材という名前が入っているのは、もともと飛行機の仕組みを理解するために学校教育で使われていた模型を製造していたことに由来します。プラモデルが子どもたちの成長に良い関わりを持つことは、組合本来の役割でもあると思っています。」

出展者も、子どもたちの歓声や満足そうな笑顔に、この特別な日の持つ意義の大きさを理解し、積極的に関わってくれるようになっていった。もともとプラモデルは子どもたちのものだった。大人向けの商品が多くなったが、もっと子どもの喜ぶ製品も提供していこうと、各社の開発、マーケティングにも新しい視点をもたらしたという。

楽しさを生み出す中高生の力

小中高校生招待日の開催において特筆すべきは、中高生のボランティアの存在だ。招待日の告知を見て、静岡聖光学院中学校・高等学校、城南静岡高等学校・中学校の両校が手を挙げてくれ、開催2回目にして欠かせない存在になっている。
各企業の体験ブースで子どもたちの補助をするだけでなく、受付、館内放送など、ホビーショーの運営にも積極的に取り組んでくれている。

小学生たちと楽しいことを共有することで、彼らはかけがえのない経験を積んでいると先生方も参加する意義を高く評価。世代の違う子どもたちとコミュニケーションを取るために相手の気持ちを考えること、教えることで自分の経験も深まり、さらに地域貢献を通して地域社会の一員であることも実感できるのだ。

2023年静岡ホビーショーでも小中高校生招待日を実施予定。さらに充実したメニューで、子どもたちにものづくりの魅力をアピールしていく。

中高生ボランティアに接した子どもたちからは、「親切に教えてくれて分かりやすくて楽しかった(小5女子)」「静岡はプラモデル産業がすごく盛んなことを知りました(小5男子)」などの声が寄せられた。

ボランティア参加校からの声

プラモデルから静岡の教育水準の向上を

静岡聖光学院中学校・高等学校
参加人数 : 200人(中学1・2年生と、美術部の中3・高1・高2)
活動内容 : 企業ブースでの工作体験等のお手伝い

参加生徒の声
プラモデル初体験の小学生もいたので、どうしたら楽しんでもらえるかなど接し方を考えるなかで、他者への思いやりの心が強くなったと思います。ボランティアとして参加し今までとは違う目線で学ぶことができたのも良い経験でした。このような機会を設けていただいた企業の皆さまにも感謝しています。社会貢献できるチャンスなので、今後も積極的に参加していきたいです。

地元に貢献できる人間を育てたい

城南静岡高等学校・中学校
参加人数 : 144人(高校3年ICT科の全生徒)
活動内容 : 受付、誘導、バス案内、館内放送等のお手伝い

参加生徒の声
「世界に誇るホビーのまち静岡を、知ってほしい!楽しんでほしい!引き継いでほしい!」という「地域貢献」の考え方から参加しました。小中学生と接することで、サービス精神やビジネスマナーも向上できました。静岡の模型産業のすばらしさに感動し、求人があれば静岡のホビーの仕事に携わりたいと考えています。今後は本校の運営するオンラインショッピングモールも活用し、世界中に向けて広報活動を行っていきます。

静岡模型教材協同組合理事長 田宮俊作氏からのメッセージ

田宮氏

田宮氏:知事に『子どもたちに見せるべきだ』と言われ、虚をつかれた、やろう!即断即決、翌年には開催。知事には感謝しています。デジタルネイティブと言われる子どもたちも、体験すれば手を動かす楽しさ、アナログの良さがわかる。子どもたちの目が輝くと、大人もみんなワクワクしますから。他の地域のホビーショーも子どもを招待したいとうらやましがっていますよ。できればもう少し広い会場が欲しい。静岡がコンベンションシティとして世界にアピールする絶好の舞台ですからね。

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