静岡の未来、創造 総合情報誌ふじのくに
清水港を拠点として 広がる物流・人流〜海に開く“山の洲”の港として新たな役割を担う〜
2023(令和5)年1月
古くは飛鳥時代、百済への救援船が出港したという記録が残る清水港。家康によって水軍が置かれ、国内交易の要衝としても重用、近代では工業製品の輸出港として発展を遂げてきた。
そして今、入港船舶数7,463隻、コンテナ貨物取り扱い個数は東京・横浜・神戸など主要港に次ぐ全国8位(令和3年速報値)と、物流の拠点へ。国際拠点港湾として、施設整備や災害への取り組みを進めており、清水港の今後の多面的な活用に期待が集まっている。
“農産物の輸出拠点としての清水港”産地と港湾が連携し、農林水産物の輸出を拡大
国が2030年までに農林水産物・食品の輸出額5兆円を目指す中、清水港の農林水産物・食品の輸出額は年々増加しており、2021年には247億円と過去最高を更新した。また、同年には産地・港湾が連携した産直港湾の取り組み(連携計画)が、全国に先駆けて国から認定を受けた。 県は、2025年の輸出額目標を350億円に設定し、さらなる農林水産物などの輸出促進に取り組んでいく。
山の洲(くに)の農産物を集積する取り組み
目標達成に向けて県が取り組んでいるのは、2021年8月に全線開通した中部横断自動車道を活用し、山の洲(静岡県、山梨県、長野県、新潟県)の産品を清水港から輸出する新たな仕組みの構築。
県は、ミカンやイチゴなどの冬の農産物が多いため、山の洲産のモモやブドウなどの夏の農産物を扱うことで荷量を確保し、年間を通じた清水港からのコンテナ輸出を目指している。 また、農産物によって適した温度帯が異なるため、混載の組み合わせや梱包資材など鮮度保持の検証に取り組む他、輸出先国の残留農薬などの規制や現地のニーズに合わせた農産物づくりを進めている。
さらに、香港・シンガポール・台湾・タイなどの輸出先国で、農産物・食品フェアを開催し、販路拡大を後押ししていく。
“自然災害時の清水港の役割”「命のみなとネットワーク」の形成に向けた取り組み
国土交通省の呼びかけで、災害時の陸路の分断を想定し、“みなと”の機能を最大限活用した、海上輸送による救助や物資輸送などを行うための、物流・人流ネットワークの構築が進められている。海岸線の長い静岡県において、道路寸断時の港湾を活用した支援体制は必須で、その取り組みへの期待も高い。 県は、伊豆半島での孤立解消を目的に、漁船・民間船が輸送を担った実績がすでにあり、さらに官民連携してのネットワークの構築を図っていく。
駿河湾フェリーの活用を想定した輸送訓練の実施
2022年12月13日、西伊豆地域沿岸部において豪雨による土砂災害が発生し、陸路による支援が困難となった場合を想定。松崎港を拠点とした駿河湾フェリーを活用した緊急物資の輸送訓練、被災者の移送訓練、フェリーからの給水活動訓練を実施する予定であったが、天候により中止となった。当訓練は2023年度以降の実施で調整する。
駿河湾フェリーを用いての訓練は初めてとなり、照明車・ポンプ車など国土交通省や静岡県、静岡市の災害対策車両を清水港からフェリーで海上輸送。断水を想定したフェリーからの給水支援活動、旅客船と連携し堂ヶ島の被災者を清水港へ移送する訓練を予定している。 今後も引き続き、万が一の場合にすぐに動ける体制づくりを進め、観光船としてだけでなく県民の安全を守るためにも、駿河湾フェリーを活用していく。
安全・安心と憩いに配慮した津波防潮堤づくり
清水港日の出地区では、津波防潮堤の整備を進めており、2022年度より親水公園である「清水マリンパーク」において本体工事に着手している。また隣接する商業施設は、2023年秋にリニューアルオープンする。
県はこれに合わせ、防潮堤を覆う防災機能を持った築山を造成するとともに、津波避難ビルとなる商業施設の2階とデッキでつなぐことで、富士山の眺望、清水港の景観を損なうことなく、憩いの場の創出と防災を両立する取り組みを行っている。