美しいふじのくに 総合情報誌ふじのくに

【磐田市駒場 掛塚灯台】燈台の灯(ともしび)は消えず

3秒点灯、3秒消灯を繰り返し、約24キロ先の沖合まで光を届ける

航路を照らし続けて145年

天竜川河口の東海岸にたたずむ掛塚灯台は、
明治時代に建てられ、今も現役で稼働する全国64基の一つ。
冬の強い季節風「遠州のからっ風」が砂浜を吹き抜ける夕暮れ時、
1人の旧幕臣が航海の安全を祈って建てた灯台の歴史に思いをはせた。

 遠州灘に面した小高い防潮堤に立つ掛塚灯台は、1897年の初点灯以来、今も現役で活躍している。全国に3118基ある灯台のうち64基しかない明治期の灯台で、静岡県内では神子元島灯台(下田市)、御前埼灯台(御前崎市)に次ぐ長い歴史を持つ。
 夕焼けを背に悠然と、水平線の彼方に光線を放つ白亜の灯台。その前身は旧幕臣の荒井信敬(あらいしんけい)が建設した私設灯台だ。天竜川河口の浅瀬で多くの船が座礁することに心を痛めていた信敬は、1880年、私財を投じて木造の灯台を建てた。その高さはおよそ9メートル、光源は木綿を芯にして菜種油をともし、自ら毎晩火を守ったという。その燃料費を捻出するため、信敬は好きな酒を控えて節制したことから「改心灯台」とも呼ばれた。
 その後、私設灯台は廃止されることになり、1897年に官営灯台として完成。以来、凪(な)いだ日も荒れた日も100年以上にわたって沖合の船に光を届け、航海の安全を守り続けてきた。2002年に海岸侵食と地震対策のため約1キロ西の竜洋海洋公園南側に移設。耐震補強と塗装を施して美しく生まれ変わった。遠州灘の荒い波を考慮して約5メートルの高さに出入口を設け、はしごを使って中に入る構造になっている。太陽に赤く染まる朝夕、風に吹かれて白くたたずむ日中、少し寂しげに光をともす夜と、時間帯によってさまざまな表情を見せる。地元でもあまり知られていない遠州灘の絶景スポットだ。

砂地に並び立つ新旧の灯台。左側の式典ゲートに旧字体で「掛塚燈臺」の文字が読み取れる。1897年3月、官営灯台として完成した掛塚灯台の落成式にて
改心灯台を建設した荒井信敬。幕末、自らも銚子沖で遭難し、漁民に助けられて九死に一生を得た経験を持つ
夕闇が迫るトワイライトの遠州灘。冬になると「遠州のからっ風」が砂浜を吹き抜ける

アクセス

掛塚灯台[かけつかとうだい]

住所

静岡県磐田市駒場

アクセス

東名高速浜松ICから車で約20分

天竜川河口の東側、オートキャンプ場などで人気の竜洋海洋公園に隣接する。灯台が立つ場所は現在、防潮堤整備中。すぐ目の前の砂浜には釣り人の姿が見られる。砂浜沿いの細い道は車がやっと通れるくらいの狭さなので要注意。

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