しずおか絶景 総合情報誌ふじのくに
【井川湖(静岡市 )】南アルプスの豊かな恵みを映し出す、湖面
2024(令和6)年9月
藍色をたたえた湖面の向こうに見える、どこまでも続く山々。井川は、人の暮らしと南アルプスの自然が出合う「接点」のような場所だ。
井川湖は1957年、井川ダムの完成により誕生した。日本が終戦から立ち上がり、高度経済成長へ向かおうとする時代。逼迫(ひっぱく)する電力需要を満たすため、南アルプスの豊富な水資源を利用した水力発電が計画された。今も井川には、当時の足跡が残っている。ダムの北側、徒歩5分ほどにある木造駅舎の井川駅は、ダム建設時に資材輸送専用鉄道として敷設された大井川鐵道井川線の終着駅だ。路線には、湖に駅が浮かぶように見える「奥大井湖上駅」があり、南アルプスの急勾配を日本唯一の「アプト式鉄道」が走る。湖上駅の絶景はSNSでも話題となり、訪日観光客からの人気も高い。(株)大鉄アドバンスのインバウンド推進室長である孫江明氏は、「アプト式鉄道で夜の湖上駅を訪れるツアーは、中国人観光客に大好評だった」と語る。新緑や紅葉の季節には、この鉄道を利用して、国内外から多くの観光客が井川を訪れる。
ダムから井川湖沿いにある緑に囲まれた遊歩道「廃線小路」も、ダム建設の名残だ。ここはもともと鉄道の線路で、終点にはダム建設用の骨材プラントがあった。
ダムの建設は、井川の村の姿を大きく変えた。学校、水道などのインフラ整備により新しい村づくりが行われる一方、ダム建設により水没する193戸が移転した。
在来作物を栽培する望月仁美さんも、ダム建設で移転した1人だ。在来作物とは、その地域で代々、種子や農法などが大切に受け継がれてきた野菜や作物のことで、井川には「井川おらんど(ジャガイモ)」、「地這いキュウリ」、「井川ナス」、「井川からし菜」、「井川大蒜(読み方:おおびる)(ニンニク)」など多くの在来作物がある。「同じ種を街中で育てても、味も形も違ってくる」と語る望月さん。南アルプスの山々に囲まれた地で守り育てられてきた井川の作物は、この土地を離れて存在することはできない、地域の大切な伝統文化である。
井川には、豊かな自然が息づいている。井川湖は、水力発電のためにつくられた人工湖だ。しかし今では風景の一部となり、その湖面に南アルプスの姿を映し出している。
世界に誇る、しずおか絶景
訪日外国人から見た、井川
奥大井湖上駅は、中国のSNS「小紅書(シャオホンシュー)」でも話題の駅です。急な勾配をガタゴトと登るアプト式鉄道は、中国にはほとんどない鉄道で、遊園地のアトラクションのように楽しめました。 また、井川湖の遊覧船から見るまちの風景は、中国人の私にもなぜか懐かしい気分にさせてくれます。
アクセス
井川湖
住所
静岡市葵区井川964
アクセス
新東名 新静岡ICより県道189号経由 約1時間30分
大井川鐵道井川線千頭駅より県道388号経由 約40分
お問い合わせ先
静岡市環境局環境共生課
エコパーク推進係TEL:054-221-1357