静岡の未来、創造 総合情報誌ふじのくに

世界へ、未来へつながる、空のゲートウェイ —富士山静岡空港、開港15周年

2024(令和6)年9月

国際競争力の向上や交流拡大による本県の発展を目指し、官民の緊密な連携による先導的な空港経営を推進する富士山静岡空港。
今回は今年で開港15周年を迎える中、県、運営権者、協議会が一体となって利用促進と空港機能の強化を実現し、さらなる飛躍をとげる富士山静岡空港について紹介する。

世界に開かれた静岡県の空の玄関口として

建築家坂茂氏によりデザインされた、特徴的な外観の空港ターミナルビル

2009年6月、世界に開かれた静岡県の空の玄関口として開港した富士山静岡空港は、開港初年度から国内6路線、国際2路線が就航するなど好調なスタートを切った。2011年の東日本大震災の影響などで利用者数が低迷したが、2013年の富士山世界文化遺産登録をきっかけの一つとして、徐々に回復した。
その後は、中国人観光客を中心とした訪日外国人が年々増加。ゴールデンルートと呼ばれる「大阪⇔富士山⇔東京」の中間に位置する立地の良さが注目を集め、全国54ヵ所にある地方管理空港※の中で、2010年度から10年連続で、外国人出入国数1位を記録した。
特にピーク時の2015年度は国際線が17路線に拡大し、利用者数は国内線を上回り、世界に開かれた静岡県の空の玄関口としての存在感が増してきた。
2018年12月には、訪日外国人の増加と路線の増加に対応するため、旅客ターミナルビルをリニューアルオープン。フードコートやビジネスラウンジなどが新たに加わり、空港機能の強化とともに利用者の利便性も向上した。
開港当初から、民活化の理念の下に富士山静岡空港(株)を指定管理者として空港運営に取り組んできたが、2019年4月からは三菱地所(株)と東急(株)が、運営会社の富士山静岡空港(株)に資本参加し、公共施設等運営権制度による運営を開始。県、富士山静岡空港㈱と市町・経済団体・企業をメンバーとする富士山静岡空港利用促進協議会が三位一体となり、民間のノウハウやネットワークを活用し、利用者倍増を目指すこととなった。新体制初年度の2019年度には、空港利用者数73.8万人と過去最高を達成し、順調なスタートを切った。
しかし、2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大により、旅客需要は激減し、2020年度の利用者数は過去最低の11.7万人に落ち込んでしまった。 2023年に入ると、旅客需要は上向き、空港利用者はコロナ禍前(2019年度)の約7割まで回復。

このように社会情勢の多大な影響を受け、試行錯誤を繰り返しながら、今年、富士山静岡空港は開港15周年を迎えたのである。

※地方管理空港とは
拠点空港以外の空港であって、国際航空輸送網又は国内航空輸送網を形成する上で重要な役割を果たす空港(空港法第5条)は、青森、松本、神戸など、全国に54あり、これらは地方公共団体が設置・管理します(地方管理空港)。 利尻、八丈島、種子島、宮古など、離島にある空港も多くはこの地方管理空港に分類されます。

富士山静岡空港15年の歩み

2009年

(6月)富士山静岡空港開港

2018年

(4月)新国内線ターミナル供用開始
(5月)搭乗客500万人達成
(10月)新国際線ターミナルビル供用開始

2019年

(4月)公共施設等運営権制度による運営開始

2021年

(4月)静岡県・山梨県の協働施設「ふじのくに空のしおり-3776-」オープン
(12月)国際線チェックインカウンター拡張完了

2024年

(6月)富士山静岡空港開港15周年

富士山静岡空港の利用状況 

地方管理空港別の入国外国人 (2019年)

※(出典)「出入国在留管理庁ホームページ」より

開港15周年を契機に、さらなる飛躍を目指す

現在、富士山静岡空港は、コロナ禍前の水準への完全復活とさらなる飛躍を目指し、多角的な視点から利用促進に取り組んでいる。

まずプロモーション事業では、15周年記念事業として、キャッシュバックキャンペーンや中国からの誘客促進を狙った割引クーポン配布キャンペーンを展開。本県出身の百田夏菜子さんに開港15周年PR大使を委嘱し、県内および国内就航先でのSNS等を活用したプロモーションも実施している。

開港15周年記念式典(2024年6月)

路線の復便も着々と進んでいる。国際線はチェジュ航空のソウル線が運航再開したのを皮切りに、昨年9月に中国東方航空の上海線、本年7月には北京首都航空の杭州線が運航を再開。国内線も、コロナ禍で期間運航となっていたANAの新千歳・沖縄の両路線が本年7月に通年運航を再開した。

コロナ禍からの完全復活に向けて、鍵を握るのがインバウンド需要の取り込みだ。近年、外国人観光客のニーズは団体旅行から個人旅行へと変化。旅行先も東京・大阪・京都のような定番から「地方都市」へ、見るだけなく「体験型観光」へ関心が移ってきた。このようなニーズに対応するために、個人旅行者の二次交通(公共交通アクセス)の確保、県内の観光コンテンツと連携した旅行商品の開発が進められている。

また、空港施設自体の利用者を増やすために、富士山を眺望できる展望デッキの整備、フードコートやショップの充実を進めるとともに、就航先の物産展、機体見学、ワークショップなどのイベントを開催し、交流・にぎわいの場としての機能を高めている。

新しい価値や交流を創出し、地域活性化に貢献

一方、富士山静岡空港を活用した地域活性化も今後の重要課題だ。2021年8月に中部横断自動車道が全面開通し、静岡県と山梨県のアクセスが向上して交流が活性化している。富士山静岡空港は「静岡県の空の玄関口」としての役割に加えて、広域エリアの交通ネットワーク拠点としての可能性が広がった。

また静岡県と山梨県の新たなビジネスチャンスや物流の拡大に向けて、「地産地出プロジェクト」がスタート。航空物流を活用し、両県の地産品の就航先への輸送、販売支援等を強化していく。
さらに、富士山静岡空港と空港西側の県有地の一体的な整備も構想されている。民間活力を活用しながら、空港機能の強化を図り、交流やにぎわい、さまざまな価値の創造や情報発信の拠点として、地域の魅力向上につなげていく計画だ。

国際交流の拠点として、地域活性化の中心的な施設として、また世界へ開かれた静岡県のシンボルとして、富士山静岡空港は新たな未来へと大きく羽ばたこうとしている。

飛行機の向こうに、富士山を眺望する展望デッキ

ふじのくに空のしおり -3776-

中部横断自動車道の全面開通を機に2021年4月にオープン。静岡県と山梨県の魅力を発信する特産品ショールーム。

詳細はこちら(富士山静岡空港ホームページ)

PICK UP! 地域とともに未来を創造しワクワクするそらの港へ

富士山静岡空港は、目指す姿として「リージョナル・ランドマーク・エアポート」を掲げ、静岡県の経済や地域の活性化に貢献できる空港運営を進めています。
その一つが、地域と連携した空港起点の観光コンテンツの開発です。富士山を眺めながら離発着できる空港の魅力、静岡県観光の魅力を世界に向けて発信することで、新たに、ベトナム・香港などの東南アジアからの訪日外国人の利用にもつなげていきたいと考えています。
また、空港がコンパクトで手続きがスムーズであることは、富士山静岡空港の利点の一つです。この強みをさらに高めるために、利用者がストレスなく空港を利用できる環境整備を進め、観光客はもちろん、ビジネス客の利用も促しています。
そして、にぎわいイベントや魅力ある施設づくりなどを通じて、多くの人が訪れたくなる「ワクワクするそらの港」へと成長していきます。

富士山静岡空港株式会社
専務取締役 榛葉 章良さん
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