フカボリ

休むことが学びになる?広がり始めたラーケーション制度

2026年3月24日

「学校を休むこと=学びが止まること」
そう考える人は、まだ多いかもしれません。
しかし今、学校の外での体験を“学び”として認める新しい制度が、少しずつ広がり始めています。それが「ラーケーション制度」です。

平日に家族と出かけ、博物館や歴史ある街を訪れたり、社会で起きている出来事を自分の目で確かめたりする――。そんな学校外での体験を、欠席ではなく「学び」として位置づけるこの制度は、生徒にどのような変化をもたらしているのでしょうか。

本記事では、静岡県内でいち早くラーケーション制度を導入した学校への取材を通して、その実態と可能性について探っていきたいと思います。

目次

1.ラーケーションとは何か
2.ラーケーション制度導入校の先生にお話を伺いました
3.ラーケーションを取得した生徒にも感想を聞いてみました!
4.結びにー私が感じたラーケーション制度の魅力や可能性

1.ラーケーションとは何か

・ラーケーション制度の基本的な仕組み
ラーケーションとは、「学び(ラーニング)」と「休暇(バケーション)」を組み合わせた造語です。
 こどもが学校以外の場所で体験や探究活動を行う際、「欠席」ではなく「出席停止・忌引き」等の扱いになる制度で、保護者が学校に届け出を行い、静岡県の県立学校では年3日まで取得可能とされています。

・制度が生まれた背景
静岡県では、こどもたちの多様な学びを進め、また家族で過ごす機会を増やそうという観点 から、ラーケーション制度を取り入れる学校を増やす取組を進めています。

・ラーケーション制度の目的
(1) 自然と触れ合ったり、芸術に接したりするような多様な体験をする中で、普段とは異なる環境で経験や学びを得る。
(2) 自分の興味・関心に応じて、授業の内容を広げたり深めたりすることができることから学校の授業の探究的な学びにつながる。
(3) 自ら考え、企画し、実行ができることから主体性や自主性を育むことにつながる。
(4) 家族とこどもが一緒に過ごせる充実した時間を生みだすとともに、保護者の「ワーク・ライフ・バランス」を充実させる。

2.ラーケーション制度導入校の先生にお話を伺いました

制度を推進している学校の具体的な取り組みを紹介します。

▲県立浜松西高等学校中等部

現在、県立学校でラーケーション制度を導入しているのは、県立清水南高等学校中等部と県立浜松西高等学校中等部の2校です。
今回の記事では、取材を行った県立浜松西高等学校中等部での取り組みを紹介します。同校では、すでに多くの生徒がこの制度を利用しています。
学校側は、生徒がより良く制度を活用できるよう、学校行事がある日はラーケーションを取得できない日としてあらかじめ設定しています。また、利用の際には事前に申請書と計画書を提出し、承諾を受けた上で利用可能となっています。さらに、利用後には報告書の提出が求められており、制度を「学び」として定着させる工夫がなされています。

教頭先生にもインタビューを行いました。

―これまででどのくらいの生徒が制度を利用していますか?
先生:12月現在で、41件のラーケーション利用がありました。

―どういったことをする生徒が多いですか?
先生:大阪・関西万博や京都、史跡や博物館などの文化施設、講演会、海外、展覧会など、多様な場所で、それぞれの関心に応じた学びが行われています。

―ラーケーション制度について、どのように感じていますか?
先生:平日に学びの場へ出かけられる点に、この制度の大きな価値があると感じています。
保護者の方とともに、生徒も学校を休むことができることで、家族全員で出かけることが可能となります。学校の中だけでは学べないことは多く、普段学校で学んでいる内容を、実際に外へ出て確かめる経験はとても大切だと思います。

―学校として、制度を利用する上で求めていることはありますか?
先生:申請書や計画書、報告書を提出してもらうことで、「単に学校を休むのではなく、学びに行く」という認識を生徒の中にしっかり位置付けることを大切にしています。

―制度導入後、生徒にどのような変化を感じますか?
先生:生徒一人一人の新たな興味や関心を知るきっかけになっています。また、体験を通して学びへの理解が深まる場面も多く見られます。

―ラーケーション制度が今後さらに広がっていくために、必要だと思うことは何ですか?
先生:ラーケーションは意義のある取り組みだと思います。一方でさまざまな事情から制度を利用しにくい生徒がいることにも目を向けていく必要があると感じます。また、『必ず取るもの』という雰囲気になるのではなく、それぞれの家庭やこどもの状況に応じて、無理のない形で選択できる制度として広がっていくことが望ましいと思います。

―ラーケーション制度を一言で表すと、どのような制度ですか?
先生:「学校だけでは学べないことがある」、ということを実感できる制度です。
学校での学びも大切ですが、学校の外で得られる学びの中には、これからの社会でより必要とされるものもあります。学校内外の学び、どちらも大切にできる制度だと思います。

3.ラーケーションを取得した生徒にも感想を聞いてみました!

実際にラーケーション制度を使用した2人の生徒にインタビューを行いました。

▲学生特派員(左奥)と生徒(右手前)

―ラーケーション制度を使ったきっかけは?
Aさん:家族で大阪・関西万博に行きました。土日は混雑するため、平日にしっかりと見学したいと考え、ラーケーション制度を利用しました。
Bさん:京都にある博物館の抽選に当たったことがきっかけです。研修旅行では時間が足りず、伏見稲荷大社などを十分に見て回れなかったため、京都の街並みや歴史をより深く知りたいと思い、ガイドを付けて学ぶ目的で制度を利用しました。

―どのような場所で、どんな体験をしましたか?
Aさん:万博記念公園を訪れました。予約が取れず、パビリオンには入れませんでしたが、世界各国の文化や雰囲気に触れることができました。
Bさん:京都市内で歴史的建造物を巡り、博物館も利用しました。ガイドの説明を聞きながら街を歩くことで、建物の背景や歴史をより深く理解することができました。

▲Aさんが訪れた大阪・関西万博
▲大屋根リングの上から見た空
▲Bさんが訪れた伏見稲荷大社 
 ▲平等院鳳凰堂にも行くことができたそうです

ラーケーションを通して、新しく知ったこと・感じたことはありますか?
Aさん:世界には本当にたくさんの国や人がいるということを実感しました。さまざまな言語が飛び交っていて、「自分の知らない世界がまだまだある」と強く感じました。
Bさん:伏見稲荷大社の奥の方まで回ることができ、ガイドの説明があったことで、自分たちだけでは気づけない歴史や由来を知ることができました。

―ラーケーション制度を利用して良かったと思いますか?
Aさん:平日に出かけられる点が良かったです。また、学校の社会科の授業で国名が出てきたときに、実際に見たパビリオンの国と結びついて、ラーケーションでの学びが生きたなと感じました。
Bさん:地名の由来や文化について「もっと知りたい」と思うきっかけになりました。

―家族との時間が増えたことについてどう感じましたか?
Aさん:土日ではなく平日に家族全員で出かけられたことがうれしかったです。
Bさん:歴史好きの父と一緒に歴史について話す時間が増え、家族の仲も、歴史への理解も深まりました。

―「ラーケーション制度をまた使いたい」と思いますか?
二人:できるだけ学校は休みたくないですが、家族全員で出かけたいときには、またこの制度を利用したいです。

―ラーケーション制度を使いやすい雰囲気はありましたか?
Aさん:担任の先生が「ラーケーションは学びに行く制度」だと強調してくれていたので、利用しやすい雰囲気でした。
Bさん:クラス全体が制度に対して前向きで、ウェルカムな雰囲気だったのが良かったです。

―ラーケーション制度のメリットはありますか?
Aさん:平日に出かけられること、出席停止扱いになること、興味のある分野を深く学べることですね。また、利用後に報告書を書くことで、「学びに行く」という意識が高まり、体験を文章に表す力も身につきました。家族全員で予定を気にせず出かけることもできましたね。

―これから制度を使う生徒へのメッセージ
Aさん:「体験をまとめる」ことを意識して見ると、学びがより深まるので、そのことを意識しておくことが大事ですね。
Bさん:メモを持ち、ガイドの話や気づいたことを書き留めることで、後から振り返りやすくなったので、メモするのはとても良かったです。

4.結びにー私が感じたラーケーション制度の魅力や可能性

ラーケーション制度は、まだ全国的に導入されているわけではないことから、この記事を読んで初めて知った、という方も多いと思います。私自身、言葉は聞いたことがあっても、今回の取材でお話を伺うまで具体的なイメージはありませんでした。
一歩間違えると「ズル休み」にも見えてしまうのでは?という心配もありましたが、今回の取材を通して、学校現場では、制度の運用としてできる工夫や地道な風土の醸成によって、取り組みを浸透させていこう、という努力があることを知りました。
もし私が学生の頃にラーケーション制度があったなら、国際系のボランティア活動に参加し、さまざまな人々と関わりながら英語を使って交流することで、より一層学びを深めてみたかったと感じました。
ラーケーション制度は、学校だけでは学ぶことができない知識や感性を育むことができるだけでなく、家族の時間を増やすことにも大きくつながります。家族とともに学ぶ体験は、きっと大人になっても記憶に残る大切な時間になると思います。
今後、より多くの学校でラーケーション制度が使えるようになることで、制度の魅力や可能性が一層広まっていくことを期待しています。

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