フカボリ

高校とヤマハ発動機が本気のタッグ 未来を作る 静岡県の高校教育とは?

2022年8月9日

静岡県政の情報を毎月、発信する「県民だより」。

「県民だより」(令和4年7月号)では、静岡県の高校教育をテーマに、普通科を中心に生徒が意欲的に学習に取り組めるようさまざまなプログラムを提供している「オンリーワン・ハイスクール事業」や、農業・工業・商業・水産・家庭・芸術を目指す高校生を支援する「プロフェッショナルへの道」を紹介しました。

詳しくは、県民だよりのホームページを見てね!

県民だより令和4年7月号2面 未来の担い手をサポート 広がる!静岡県の高校教育

実は、全国でも、高校教育で「マイスター・ハイスクール事業」というユニークな取り組みを行っているんですよ!えっ?マイスターって聞き慣れない名前だけれど、何?どんなことをやっているの?疑問に思った広聴広報課職員が、高校教育課の方にインタビュー形式でマイスター・ハイスクール事業の静岡県での取り組み状況を聞いてみました!

小中学生やその保護者の方には、自分やお子様の将来の道を考える参考に、県民の方には、高校教育への理解をより深めるきっかけになりましたら、幸いです。

目次

■1.マイスター・ハイスクール事業って?

■2.東海初の指定校に! 県立浜松城北工業高等学校での取り組みって?

■3.ますます期待されるマイスター・ハイスクール事業

マイスター・ハイスクール事業って?

お聞きするのは、高校教育課の井島秀樹指導監と小林礼治教育主幹のお二人。井島指導監は、以前、県立浜松城北工業高等学校の校長在任時に、マイスター・ハイスクール事業の申請の中心としてご尽力いただいた方です。浜松城北工業高校については、後でご紹介しますね!小林教育主幹は、マイスター・ハイスクール事業を担当している方です。

▲マイスター・ハイスクール事業に対する熱い思いを今から語っていただきます!
 高校教育課の井島指導監(右)と小林教育主幹(左)

ーー早速ですが、マイスター・ハイスクール事業の概要について教えていただけないでしょうか。特に、マイスターは聞き慣れない言葉だと思いますが。

マイスターとは、「ものづくりのスペシャリスト、熟練した人」であり、マイスター・ハイスクール事業は、文部科学省の事業で、地域に根付き、地域のために、県・市・地域の企業、高校が一体となって連携し、地域に必要な産業に関わるものづくりの人材を高校で育成するプログラムです。産業といえば、工業に限らず、水産業・農業、商業なども該当します。

ーー事業を行うことになったきっかけ、その背景について教えていただけないでしょうか。

学力向上だけでなく、地域が求めているものづくりの人材を学校で育てたいという背景があります。特に、コロナ禍の中、情報通信技術の進化など産業の構造が変化しており、その変化に対応できる人材が求められています。

ーー事業はいつ始まったのでしょうか、今年度は、全国で取り組んでいる高校は何校あるのでしょうか。

令和3年度から始まり、令和4年度は全国では15校が取り組んでいます。

まだ始まったばかりなんですね!そんな、マイスター・ハイスクール事業については、文部科学省のホームページでも紹介されています。

文部科学省 マイスター・ハイスクール事業ホームページ

東海初の指定校に! 県立浜松城北工業高等学校での取り組みって?

令和4年度、県立浜松城北工業高等学校が、マイスター・ハイスクール事業の指定校となりました。なんと、東海初の指定校だそうですよ!そんな浜松城北工業高校での取り組みについて、さらにお聞きしたいと思います!

ーー浜松城北工業高校とはどんな学校でしょうか。

地域に根付いている高校です。4学科(機械科、電子機械科、電気科、電子科)があり、技術を学び・形にできる生徒、社会でしっかりと責任を果たせる生徒の育成を目指しています。部活動が盛んで、元気な生徒が多いです。

県立浜松城北工業高等学校のホームページ

ーー浜松城北工業高校が指定を受け、県や浜松市、ヤマハ発動機株式会社と連携して取り組むことになったとお聞きしました。指定を受けることになったきっかけを教えていただけないでしょうか。

浜松市の要望と、浜松城北工業高校の要望が一致したからです。

浜松市は、健康・医療、新農業など注目している成長分野が7つあり、その一つがロボットです。産業の中ではロボットが全ての基本となっており、工場内でロボットが組み立てを行うなど、さまざまな分野にロボットが入っていますが、ロボットを動かす人材が足りないという課題があり、人材を育成したいという思いがありました。

一方で、浜松城北工業高校は、産業界が求める人材育成の取り組みを行うには可能な環境ですが、どうしても学校の中で教育が留まってしまうという課題があり、企業や地方公共団体などと連携して新しい制度を使い、学校の魅力を発信したいという思いを抱えていました。

ーー浜松市内には、地域の企業がたくさんありますが、どうしてその中でヤマハ発動機と連携することになったのでしょうか。

ヤマハ発動機といえば、オートバイのメーカーという印象が強いですが、ロボットの設計・製作・制御を行う「ロボティクス事業部」という部署があります。浜松市を代表する企業ということもありますが、浜松城北工業高校とヤマハ発動機の工場の場所が、距離的に近いということも決め手となりました。

ただ、今回はヤマハ発動機と連携することになりましたが、ロボットを実際に使っている企業は他にもたくさんあります。

ーーヤマハ発動機にとって、浜松城北工業高校と連携することでどんなメリットがあるのでしょうか。

ヤマハ発動機にとっての一番の目的は、「地域人財育成」です。浜松城北工業高校でロボットを扱える人材を育成することによって、地域でロボティクス産業が栄え、地域企業でのロボティクスの活用が増え、ロボティクス製品をあちこちで使ってもらえるというメリットがあります。

また、地域企業でロボットを扱える人材の雇用が増えることによって、課題であるロボットを扱える人材不足の解消にもなります。

他にも、浜松城北工業高校で学んだ生徒が、就職先でヤマハ発動機のロボットを使ったり、それを身近に感じたりすることで、ヤマハ発動機にとって、ロボティクス事業の認知やブランドイメージの向上に繋がるということもあります。

▲6月20日に、浜松城北工業高校・県教育委員会・ヤマハ発動機、浜松市の間で、
協定締結式が行われました。

ーー浜松城北工業高校で、どんな取り組みを行うのでしょうか。

まず、一番の特徴は、ヤマハ発動機から、管理職と先生の2人を派遣してもらうことです。

「マイスター・ハイスクールCEO」と呼ばれる管理職の方には、事業を全般的に見ながら助言をもらったり、企業とつないだりしてもらいます。

先生には常勤講師という形で、生徒に向けて授業をしてもらいます。

▲CEOとして派遣されたヤマハ発動機の都築明宏さん
▲教員として派遣されたヤマハ発動機の南部秀樹さん

ーー今回、浜松城北工業高校に派遣される都築さんと南部さんはどんな方でしょうか。

都築さんは、ヤマハ発動機内で人材育成に取り組む姿勢や知識・経験が高く、教育・人材育成に対して熱い思いを持っている方です。

南部さんは、ロボットの制御開発経験者で、ロボットの知見・経験が高く、ロボット本体や使われ方にも知識がある方です。

ーー具体的な授業、カリキュラムのイメージはどのようなものでしょうか。

ロボット関連企業からの講師と、ヤマハ発動機から派遣された先生とで、ロボットの設計・製作などの実習を行う「ロボティクス概論」を時間割に組み込みます。また、夏休みなどに、ロボット関連企業で集中講義と実習も想定しています。

▲早速、生徒に「日本のものづくり」に関する授業を行いました!

ーーこの取り組みに対して、浜松城北工業高校の生徒はどんな反応をしているのでしょうか。

7月から始まったばかりなので、生徒の反応はまだまだ十分にはわかりません。具体的にどんなことが始まるのか、どんなことを求められるのか、生徒たち自身も今は期待と不安があるのかもしれません。ただ、ヤマハ発動機は誰もが知っているメーカーですし、今回のマイスター・ハイスクール事業についても、新聞で大きく取り上げられましたので、ワクワクしていると思います。

▲生徒の反応から、ものづくりへの関心が高いことがわかりますね!

ーーこの取り組みはいつまで行うのでしょうか。

3年間(令和7年3月末まで)です。

ーー3年間!長いですね!3年後、どのような変化を生徒に期待していますか。

3年後、数字でいうならば、地域の企業に8割以上の生徒が就職するとか、ロボット関連の企業に今まで以上に就職するという可能性もあるかと思います。ただ、数字上だけでなく、生徒一人一人がいろんなことに疑問を持ち、それをたくさんの人と協力して、解決を図り、全てについて主体的に考えることができるようになるのを期待しています。

ーー3年後、事業が終わるかと思いますが、その後はどうなるのでしょうか。

事業終了以降は、基本的に県教育委員会と浜松城北工業高校が引き継ぐことになりますが、ヤマハ発動機にも可能な範囲でサポートの継続をお願いしたいと思っています。

ますます期待されるマイスター・ハイスクール事業

マイスター・ハイスクール事業について語っていただいている井島指導監と小林教育主幹の熱い思いはもう少し続きます!

ーー最初に事業の概要についてお伺いしましたが、改めてこの事業で重要なことは何でしょうか。

一番重要にしているのは、地域の要望と高校の要望を一致させることです。高校が勝手に教育を行うのではなく、一方で地域が勝手に「このような人材を育てて欲しい」と主張するのではなく、お互いが連携してよりよい形に導いていくことです。

ーーこの事業全般で、期待していることは何でしょうか。

静岡県はもともと企業人を高校に先生として迎え入れる制度を全国に先駆けてやっていました。企業から先生を迎え入れるという制度は他の都道府県ではあまりなく、本県の取り組みが先進事例となります。ただ、本県ではすでに企業から先生を迎え入れる下地はありましたが、連携にまでは十分に手が回っていませんでした。この事業をきっかけに、高校と企業、県や市との連携がさらに深まるのではないかと期待しています。生徒、保護者、中学生に対しても、高校が新しい取り組みをしているというアピールにもなります。

また、工業高校ではいろいろなスキルを持った専門性の高い教員がいます。しかし、どういった技術が地域で必要とされているのか、あるいはより最新の技術を教えているのか、という点について少し心配もあります。その点を大きく改善してくれると期待しています。

ーー今回の浜松城北工業高校での指定をきっかけに、他地域への波及など、将来の展望はありますか。

ヤマハ発動機からは、浜松城北工業高校だけでなくて、他の工業高校とも連携したい、広めていきたいという要望をもらっています。他地域へ広めることは、県の方針にもなっています。

ロボットに注目しているので、他の企業からも連携したいという要望も聞いています。

ーー最後に、マイスター・ハイスクール事業についてPRをお願いします!

これから進路を検討する中学生に向けて、この事業はロボットだけではなく、いろんなものが学べますので、ぜひ期待してください。お待ちしております!

県民だより7月号や今回の取材を通して、静岡県の高校教育で行っているさまざまな事業について、改めて勉強させていただきました。どの事業も魅力的なものばかりで、私がもし高校生だったら、どれを学ぼうかな・・・多分、迷ってしまいます(笑)今の小中学生には、自分が将来どんなことをやりたいのか、自分が今興味あることは何か、よくよく考えた上で、自分に合った高校を選んで欲しいと思いました。

取材に協力してくださった、県高校教育課の井島指導監と小林教育主幹、本当にありがとうございました!

―――↓問い合わせ――――――――――――――――――――――――――

【問い合わせ】 県広聴広報課 ☎054(221)2231 FAX054(221)4032

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