フカボリ
子どもたちの隠れたSOSを見つける!子どもの居場所づくり
2022年10月20日
県は「子どもの居場所づくり」に取り組む団体などを支援するために、2022年10月29日までクラウドファンディングを行っています。この事業は、応援したい団体やプロジェクトの内容を見て、寄付することができるんですよ!
詳しくは、県のホームページで紹介しています。
クラウドファンディング型子どもの居場所づくりプロジェクト事業
現在、クラウドファンディングを行っているのは3団体によるプロジェクトです。その1つである、『地域をつなぐ「移動する駄菓子屋さん」がキミのまちに行くよ!』の実現を目指している「一般社団法人 おたまちゃん食堂」。どんな活動をしているの?なぜ移動する駄菓子屋さん?気になった広聴広報課職員が取材に行ってきました!
目次
■1.「食べることは生きること。生きることは食べること」を合言葉に
■2. 子どもたちの笑顔を守るために工夫していること、課題とは?
■3. 支援が必要な子どもたちに会いに行きたい!「移動する駄菓子屋さん」
■4. 子どもたちのSOSに気付くためのヒントは県民だよりのお便りの中に
「食べることは生きること。生きることは食べること」を合言葉に
広聴広報課職員を出迎えてくれたおたまちゃん食堂のスタッフの皆さん。マスクを着用していますが、目元が柔らかく素敵な笑顔の方々であることがわかります。代表理事である押田智子(おしだちかこ)さんに色々とお聞きしました。
ーー子どもの居場所づくりをはじめたきっかけを教えていただけないでしょうか。
20年前から子育て支援に関わっていました。その時に、子どもたちがあまり食に関心がなく、夕ご飯にお菓子を食べていることを聞いて、子どもたちの食に疑問を持ったのがきっかけです。子どもたちの居場所と食事を提供しようと考えました。
ーーおたまちゃん食堂の合言葉は「食べることは生きること。生きることは食べること」とお聞きしましたが、その合言葉を考えた理由は?
お腹がすいていると悪いことばかり考えてしまいます。胃袋が満たされると良い方向に考えることができます。なので、少しでもいいから食べてほしいと思い、合言葉を決めました。温かいご飯で心も身体も元気になって、お友達をつくったり、笑顔になれるような地域の居場所を目指しています。
ーーどんな活動をしていらっしゃるのでしょうか。
子ども食堂を月に3回開催し、お弁当を作って配布しています。他にも、企業様や農家様などから提供を受けた食品を配布するフードパントリーや、塾に行っていない子どもたちを集めて遊びからコミュニケーション、学習支援などを行なっています。
場所は、三島市・長泉町・小山町を中心に、三島市立錦田公民館や三島市立北上公民館、長泉町健康づくりセンター(ウェルピアながいずみ)などで活動をしています。
ーー子ども食堂でお弁当を配布しているとのことですが、いつもどのぐらいのお弁当を作るのでしょうか。また、お弁当の材料はどのように調達しているのでしょうか。
1回につき、50~80食ぐらいのお弁当を作ります。お弁当の材料は、お肉・魚・お米などは支援団体や企業様から、野菜は農家様から寄付をいただいています。他にもフードバンクで集まった食品などを受け取って、子どもたちに食べやすいように料理しています。
ーー利用者の子どもたちは、どのようなお子さんが多いのでしょうか。
おたまちゃん食堂では、子どものいる家庭ならどなたでも来れるように、窓口を広くしています。中には、ひとり親や貧困の家庭などのお子さんもいます。家族連れも含めて、1回につき80~100人ぐらい来ます。雨の日でも仕事で疲れている日でも子どもを連れて来られます。
ーーおたまちゃん食堂のスタッフは何人でしょうか?また、スタッフにはどんな方がいらっしゃいますか。
スタッフは20人で、他に協力してくださる方が10人ぐらいいます。スタッフの中には、普通の主婦の方や、調理好きな男性の方などがいます。また時々、学生のボランティアの方もお手伝いに来てくださいます。
ーー子どもの居場所づくりをはじめて、うれしかったことは何でしょうか。
子どもたちから「おいしかった」と小さな手紙をもらったり、「野菜が食べられるようになったよ!」と聞いたりした時です。また、ある子どもが「おたまちゃん食堂で食事をしておいしかった」と夏休みの感想文を書いて賞に選ばれたと聞いた時もうれしかったですね。
子どもたちの笑顔を守るために工夫していること、課題は?
おたまちゃん食堂は子どもたちやその親の笑顔を守るために、いろいろな工夫をしているそうです。それでも問題点や課題があるとのことで、行政や個人にお願いしたいことを押田さんに聞いてみました。
ーー活動を行うにあたって、工夫していることはありますでしょうか。
お弁当は季節のお野菜を中心に、子どもたちの好きなメニューをつくるように工夫しています。食べたことのない食材を出す時は、子どもたちに食材の特徴などを教えるようにしています。
また、ひとり親の家庭の方から「行っても大丈夫ですか?」という問い合わせをいただくことがありますので、誰でも来やすいように窓口を大きく広げています。子どもたちとコミュニケーションを取りたい1人暮らしの高齢の方も来ていただいても構いません。「誰でも来てもいいよ」というところから、支援を始めています。
ーー子どもたちはなかなか悩みを言いづらいかと思いますが、子どもたちの隠れたSOSはどんなところから気づくことができますか?
ひとり親家庭で、コロナ禍でなかなか外に出られず、親は仕事で不在のため1人で過ごす子どもが多くなっています。また、コロナ禍で親の仕事がなくなってしまい、収入減で食料品や生活用品がなくなり、明日食べるものがないという子どもたちもいます。そういった子どもたちと接して、いつもの行動と違うなどささいなSOSのサインを見逃さないようにしています。
ーーお母さんお父さんは、どのような悩みや不安を持っていらっしゃるのでしょうか。
「コロナ禍で仕事がなくなってしまい、物価も上がっているため、食料品や生活用品が買えない」「子どもにちゃんとしたものを食べさせたいけれど、身体を壊してしまい仕事ができない」といった悩みや不安を持っていらっしゃる方が多いです。
ーー子どもたちやお母さん、お父さんの悩みにどのように寄り添っているのでしょうか。
子どもだけでなく、お母さんお父さんとも積極的にコミュニケーションを取り、少しでも前向きになれるように寄り添っています。例えば、子どもと会話していないお母さんを見かけた時に私から話しかけてみます。そうすると帰りには、笑顔で帰っていきます。大人も子どももSOSを出せる場所でありたいし、全力で寄り添っていきたい。そして最終的には、いつかおたまちゃん食堂を卒業してそれぞれの幸せにつなげられるよう支援しています。
ーー子どもの居場所づくりの問題点、課題はありますか。あるとしたら、何でしょうか。
子どもの居場所を行う場所がなかなか見つからないことです。場所を借りたい場合は、お金がかかりますので、公民館や小学校・市役所の一部などを借りられるとありがたいです。また、どこに助けを必要としている子どもがいるのか情報がないので、こちらの方からコンタクトが取れないという問題もあります。子どもの居場所づくりのスタッフの人数も不足しています。
ーー問題点や課題解決のために、県や市など行政にしてもらいたいという要望はありますでしょうか。
委託の形でもいいので、県と市町で子どもの居場所づくりをまとめる課をつくってもらいたいです。埼玉の方に、子どもの居場所づくりの担当の課があり、どこにお米や野菜があるのかそういった情報をまとめて、子どもの居場所づくりの団体に行き渡るようにしていると聞いています。
また、支援を必要としている子どもたちや親に、民間が頑張っていることを知ってもらい、子どもの居場所づくりに関する情報を直接伝えて欲しいです。
以前に知事広聴で知事に問題として提案し、その後、場所やスタッフの確保の協力をいただいているのですが、コロナ禍でスタッフが来られなくなるなど何が起きるかわかりませんので、スタッフの人数は多ければ多いほど助かります。
ーー個人として、子どもの居場所づくりのためにできることはありますか?
子どもの居場所づくりについて、個人のホームページやSNSなどで折りに触れて、広報していただけるとありがたいです。また、お料理が好きな方やお子さんが好きな方などがいらっしゃいましたら、ぜひ手伝っていただけるとうれしいです。
支援が必要な子どもたちに会いに行きたい!「移動する駄菓子屋さん」
おたまちゃん食堂は「移動する駄菓子屋さん」の実現を目指し、必要な資金を調達するためにクラウドファンディングを行っています。なぜ活動をさらに拡大するのか、なぜ移動する駄菓子屋さんなのか、押田さんはその理由を熱く語ってくださいました。
ーー今年度、クラウドファンディングを行っていますが、行う理由を教えていただけないでしょうか。
移動する駄菓子屋さんで、子どもたちの隠れたSOSを見つけに行くためです。もちろん、子どもなら誰でもOK。おたまちゃんの車が来たら遊びに来てもらいたいです。その中で、コミュニケーションを取り、SOSを出したい子どもとは、慎重に接して、「今一番何が必要か?」話を聞いたり様子を見に行ったりします。今までは、構えていた場所に来られない子どもたちはそのままでしたが、ヤングケアラーや学校に行っていない子どもたちともコミュニケーションを取りながら、本来ある子どもたちの生活に戻せるようにしたいです。「待つのではなく会いに行く」、今までにはない新しい時代の居場所づくりだと思っています。年齢に関係なく、話ができる場所を提供しながら、新しい時代の支援につなげていきたいです。
ーー隠れたSOSを見つけに行く方法は、例えば「移動する子ども食堂」など他にも方法があるかと思いますが、なぜ「移動する駄菓子屋さん」でしょうか。
駄菓子屋さんは昔からあり、子どもたちが行きやすい場所だからです。駄菓子屋さんは今は少なくなっています。一方で、ヤングケアラーや登校拒否など増えています。車を走らせて駄菓子を売るのが目的ではなく、家庭でも学校でも居場所がなく孤立している子どもや、そうでない子どもも気軽に来てもらい、支援を必要としている子ども達を見つけるのが目的です。
ーー「移動する駄菓子屋さん」はとても面白い取り組みですが、このような取り組みは他地域にもあるのでしょうか。
移動する駄菓子屋さんは他地域にもありますが、子どもの居場所づくり支援とつなげようという取り組みはあまりないかと思います。
ーー移動する駄菓子屋さんは、月1回三島市内を回ることを想定しているようですが、他地域を回ることは考えていらっしゃいませんか。
まずは三島市内で活動し、活動方法などがわかってきて、「ぜひうちの地域にも」と依頼があれば、移動車を増やして、色んなところに行きたいと思っています。被災地にも行くことを想定しています。
ーークラウドファンディングを支援してくださる方の声にはどのようなものがありますか?
面白い発想だという声をいただいています。駄菓子屋さんは昔からあるものなので、皆さんイメージしやすいようで、駄菓子屋さんに集まる子どもたちの笑顔が思い浮かぶとのことです。また、このプロジェクトが成功し、同様の取り組みが他にも広がってほしいと期待の声もいただいているため、ぜひとも実現させたいです。
ーークラウドファンディングをまだ支援していない方に対して、何か呼びかけを。
クラウドファンディングの支援金で行った移動する駄菓子屋さんでの体験は、一生子どもたちの心に残ります。子どもたちをずっと守っていくことができます。自分が「子どもたちの未来をつくっていく」という感じでクラウドファンディングをしていただくとありがたいです。
ーー今後の抱負を教えていただけないでしょうか。
私たちは、「お醤油がないから貸して」「おかずを作りすぎたから持ってきたよ」と気軽に言える、そういった近所付き合いができる昔ながらの人間関係を今風に作り直し、今苦しんでいる子どもたちに「未来って希望が持てるかも!」と思ってもらえるようにしていきたいです。街に移動する駄菓子屋さんが来るのが楽しみになって欲しいです。
ーー最後にフカボリを読んでくださる方に対して、何かお伝えしたいことはありますか。
子育て中のお父さん、お母さん一人で悩まないで。あなたを助ける人がいる。SOSをどんどん出して欲しい。子どもたちがSOSをどんどん出せるような居場所を大人がつくってあげてください。
おたまちゃん食堂についてさらに知りたい方は、おたまちゃん食堂のホームページを見てくださいね!
クラウドファンディングの方法についても、おたまちゃん食堂のInstagramで紹介しています。寄付すると、寄付金のうち2,000円を超える部分については、翌年の所得税と住民税から、原則として全額が控除されます。
子どもたちのSOSに気付くためのヒントは県民だよりのお便りの中に
おたまちゃん食堂の押田さんは、「子どもたちのささいなSOSに気付くようにしている」とのことでしたが、子どもたちの隠れているSOSって気付きにくいですよね。特に普段子どもと接していない方はなかなか難しいです。どうすればいいのだろうと思っていたところ、県民だより9月号を読んだ読者の方からのお便りの中にヒントがありました。
県民だより令和4年9月号1面 一人にさせない。みんなで支える子育て
ーー県民だより9月号お便りから、SOSに気付けるためのヒント(抜粋)
○朝に通りすがりの通学の子どもたちに大きな声で「おはよう」と挨拶した夫。理由を聞いたら、「社会を支えている大人の存在と責任を子どもたちに伝えるのは、お互いのあいさつの交換からだよ。子どもたちの様子がわかるよね」と。地域の子どもたちが健やかに学び育ってくれることを切に願っています。
○中学生の息子とヤングケアラーについて話をしました。自分が楽しく過ごしてる時に、大変な思いをしながら学校に来たり、親のために頑張ってる人がいるんだと、衝撃を受けたようでした。SOSに気付いてあげられるよう、大人の私たちだけでなく、子どもたちにもヤングケアラーという言葉や相談できるとこがあることをもっと周知させていかなければいけないと感じました。友達との会話から、「それってヤングケアラーじゃない?大丈夫?無理してない?」「相談窓口があって話を聞いてくれる大人がいるよ」と身近な友達からの助言が背中を押してくれるようになったら、すごく良いと思いました。
お便りの中には、「ヤングケアラーという言葉を初めて知った」という感想も多く、まだまだヤングケアラーについて十分認識されていないと感じました。家族や友人などとヤングケアラーについて話し合い、少しずつ広めていくという方法でしたら、個人でもできるのではないでしょうか。また、近所の子どもたちに挨拶するなど地域全体で子どもを見守ることも大切ですね。そこから、誰かが子どもたちのSOSに気付くきっかけづくりになるかもしれません。
また、他にも元ヤングケアラーの方からも、当事者としての意見をいただきました。
ーー県民だより9月号お便りから、元ヤングケアラー当事者としての意見(抜粋)
○僕自身も高校生の時、母が体調を崩し家事などを手伝っていたことがあるので、ヤングケアラーの気持ちが分かります。「やるしかないからやってる。考える暇もなければ、考えても答えが出ない」と当時は少し諦めていました。僕は一時的だったのですが、ずっと続けなければならない若い人たちに少しでも気が楽になるようにカウンセラーさんとかと話す機会をつくってほしいと思います。腐らないでほしい。
○元ヤングケアラーです。私と同じようなつらくて悲しい子ども時代を過ごして欲しくないと思います。子どもの私には自分から知らない大人に話しかけることなんて全くできませんでした。「ここに電話で相談してね」とか「ここに話に来てね」なんて言われても自分からは行けないと思うんです。私がそうだったから。なんとか大人から手を差し伸べてあげられたらと思います。
当事者でなければわからない想いがひしひしと伝わってきました。困っている子どもたちには大人がそっと寄り添ってあげることが大切かもしれません。おたまちゃん食堂は子どもたちにとって、気軽に大人に話したり相談できたりする場であり、そのような場所がクラウドファンディングでさらに広がってほしいと思います。
取材に協力してくださった、一般社団法人おたまちゃん食堂の皆さま、本当にありがとうございました!
―――↓問い合わせ――――――――――――――――――――――――――
県広聴広報課 ☎054(221)2231 FAX054(221)4032