フカボリ
道路保全から広がる笑顔と循環。愛着を育む「しずおかアダプト・ロード・プログラム」
2026年7月30日
しずおかアダプト・ロード・プログラムは、県が管理する道路を含む一定の区間において、住民団体、学校、企業などが、道路清掃や美化活動を行い、行政がその活動を支援する仕組みです。

今回は、長年にわたり美化活動に取り組み、令和7年度に国土交通大臣表彰を受賞された富士宮市の「特定非営利活動法人EPO」さんを取材しました。平成22年から15年以上にわたり「しずおかアダプト・ロード・プログラム」に参加し、道路の保全活動を続けているEPOの北詰さんに、活動のやりがいや地域・動物たちとのユニークな循環についてお話を伺いました。
目次
1.始めたきっかけと、EPOならではの「おいしい循環」
2.国土交通大臣表彰がもたらした、利用者の方々の大きな自信
3.道路保全の枠を超えてー地域とつながるこれからのステップ
1.始めたきっかけと、EPOならではの「おいしい循環」
-美化活動(しずおかアダプト・ロード・プログラム)を始めた経緯を教えてください
もともとは、他の福祉事業所さんからプログラムを紹介されたことがきっかけでした。「地域のために役に立てる活動だな」と共感し、平成22年から活動をスタートしました。
現在は月2回の定期作業に加え、草が伸びる時期には臨時作業も行い、年間約30回ほど、事業所の目の前を通る国道469号の斜面約125メートルにわたり、草刈りやゴミ拾いを行っています。
-活動はかなり急な斜面で行われているそうですね。安全面などでの苦労はありますか?
ほぼ全体が土手のような斜面なので、とにかく安全第一です。まずは職員が事前に斜面の草を刈って準備を整えます。その後、利用者の方々の適性に合わせて「適材適所」で作業を分担します。
職員が刈った草を、利用者の方が「レーキ(フォークのような農具)」を使って斜面の下へ集め、下にいる利用者の方々が一輪車で運ぶ。常に職員が見守り、声を掛け合いながら安全に作業を進めています。
-刈り取った「草」を、事業所で飼育している動物たちに活用していると伺いました
はい、実はここ2年ほどで始めた新しい取り組みです。EPOにはホースセラピーや流鏑馬(やぶさめ)で活躍する馬が10頭、そして羊が20頭います。以前は刈り取った草を処分していたのですが、「これって、もったいなくない?」と思い立ち、お馬さんにあげてみたところ、大喜びで食べてくれたんです。
今では、刈り取った草をただ捨てるのではなく、動物たちのご馳走(餌)にしたり、羊たちの敷きわらにしたりして、100%事業所内で活用する「エコな循環」が生まれています。作業の後に「お馬さんにあげよう!」と、利用者の方々も毎回の作業をイベントのように楽しんでくれています。


2.国土交通大臣表彰がもたらした、利用者の方々の大きな自信
-これまでに県知事表彰などを重ね、ついに「国土交通大臣表彰」を受賞されました。当時の様子はいかがでしたか?
一番の思い出は、受賞したことを事業所の「朝の会」で利用者全員に報告したときのことです。発表した瞬間、利用者の方々から「やったー」という思いのこもった力強い声が上がり、実際に作業を担当しているメンバーだけでなく、事業所全体から自然と大きな拍手が沸き起こりました。お互いを称え合う温かい光景に、思わず目頭が熱くなりました。
-受賞は利用者の方々の意識にも変化を与えましたか?
ものすごく大きな変化がありました。「自分たちの活動をしっかり見て、評価してくれる人がいる」「自分たちの仕事が誰かの役に立っている」という実感が、大きな自信につながりました。
それ以来、作業に対するモチベーションが一段と上がりました。今では朝に「今日、道路の草刈りやるよ!」と伝えると、「よしやるぞ!」とみんな喜んで参加してくれます。
ただ、自分たちがきれいにしている場所だからこそ、ポイ捨てされたゴミを見つけると、以前よりも悲しく感じるようにもなりました。その分、「自分たちの手できれいに保ちたい」という道路や地域への愛着と美化意識は、一層強くなっています。EPOにとってこの道路は、まさに「事業所の玄関」であり、大切な一部なんです。

3.道路保全の枠を超えてー地域とつながるこれからのステップ
「ここは山の中なので人通り自体は少ないですが、ハイキングをされている年配の方々や近所の方から『いつもきれいにしてくれてありがとう』と声をかけてもらえるのが、利用者の方々の大きな励みになっています」と語る北詰さん。最後に、これからの展望や、美化活動に興味がある方へのメッセージを伺いました。
-今後の夢や、新しく取り組みたいことはありますか?
EPOでは美化活動のほかに、障害のある子どもたちのための「放課後等デイサービス」や、障害のある方の自立支援として、羊の毛を使った「羊毛フェルト商品」の制作、敷地内の植物(クロモジなど)から抽出する「アロマ蒸留水スプレー」の販売など幅広く活動しています。
また、毎月最終土曜日には事業所を一般開放し、引き馬体験や、動物とのふれあい、カフェやワークショップなどを楽しめる地域イベント”EPO Open Day”を開催しています。
今後はさらに、羊たちを連れて幼稚園や放課後児童クラブを訪問する「出張移動動物園」のようなサービスも展開し、活動を持続可能にするための自主財源づくりにもみんなで挑戦していきます。
将来的には、道路保全の活動でも他の事業所さんや地域の方々とコラボレーションして、一緒に作業した後に動物たちと触れ合えるような、新しい「交流の場」を作れたら楽しいなと思っています。
-しずおかアダプト・ロード・プログラムに興味を持っている方へ、アドバイスをお願いします
道路がきれいになることで、通行する人が癒されるだけでなく、地域の「防犯対策」にもつながります。汚れや乱れの放置は、犯罪者に『管理が行き届いていない場所』という印象を与え、重大な犯罪を誘発する一因となりますが、一方で、常に美しく整備された環境は、ポイ捨てや不法投棄を防ぐ心理的なブレーキとなり、地域全体の安全を守る防犯対策へとつながります。
自分たちの街がきれいになれば愛着が湧きますし、何より活動を通じて新しい「人のつながり」が生まれます。
やる気があっても「どこに連絡すればいいか分からない」という方もいると思うので、静岡県庁にはぜひ参加方法や地域の窓口を分かりやすく発信していただき、最初の一歩を踏み出しやすい環境を整えてくれるとありがたいですね。やって損は絶対にありません。メリットしかありませんので、少しでも興味がある方は、迷わず一歩を踏み出していただきたいです!

取材を終えて
お話を伺う中で、単なる「道路保全・清掃活動」にとどまらず、刈った草を動物の餌にし、動物たちの温もりが利用者の方々の癒しや新たな羊毛などの商品を生み、さらに地域を笑顔にするという、素晴らしい「循環の物語」に深く感動しました。
「やらされる仕事」ではなく、自分たちの玄関をきれいにするように誇りを持って取り組むEPOの皆さんの姿は、キラキラと輝いていました。
美化活動を通じて、大切な街への愛着が深まり、新しい人のつながりも生まれていく。そんな魅力にあふれた「しずおかアダプト・ロード・プログラム」に、あなたも一歩を踏み出して、参加してみませんか?
しずおかアダプト・ロード・プログラム制度への加入等のお問い合わせ
最寄の土木事務所へご連絡ください。
- 下田土木事務所 維持管理課 電話:0558-24-2117
- 熱海土木事務所 維持調査課 電話:0557-82-9177
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