しずおか絶景 総合情報誌ふじのくに
【下田市 了仙寺】花で焚(た)く開国の香
日米異文化交流始まりの寺
今から170年前、日米和親条約の締結により下田は日本で初めての開港場となった。
アメリカのマシュー・ペリー提督率いる黒船艦隊が来航し、その後の交渉の舞台となったのが了仙寺だ。
アメリカンジャスミンの甘い芳香に境内が包まれる頃、下田は同市最大の国際的イベント「黒船祭」で活気づく。
了仙寺は1635年(寛永12年)創建の国指定史跡。ゴールデンウィークの5月初旬から中旬にかけて、境内では数百株のアメリカンジャスミンが満開を迎える。本堂の周りが甘く濃厚な香りで満たされると、「ああ、今年も黒船祭の季節が来たね」、参拝者の間ではそんな会話が交わされる。
アメリカンジャスミンは南米原産、明治末期に日本に伝わった種で、和名は「匂蕃茉莉(ニオイバンマツリ)」。「蕃」は「外国」、「茉莉」は「ジャスミン」、つまり「香りのする外国からのジャスミン」を意味している。
1854年(嘉永7年)3月、日米和親条約の締結により下田が即時開港すると、その同月、ペリー提督率いる黒船艦隊が来航。群衆が見物する中、了仙寺で饗応(きょうおう)が催された。
5月には日米和親条約付録13カ条(下田条約)の交渉が同寺本堂にて行われ、祝砲と軍楽隊演奏を響かせて水兵300人が参道を行進。締結調印式においては、日本側は畳を積み重ねた上に正座して、椅子に着席したアメリカ側と目線を合わせたといわれている。
その後、太平洋戦争の空襲で一部被害を受けながらも、幕末外交の舞台となった本堂は今も健在。山門の隣に併設された「MoBS黒船ミュージアム」には、現住職が収集した黒船や開国に関する資料約2800点が収蔵・展示されている。
5月の第3金・土・日曜は3日間にわたり下田最大の国際的イベント「黒船祭」が開催され、了仙寺境内では再現劇「日米下田条約調印」がコミカルに上演される。開港170年にあたる今年はいつにも増して観光客が訪れ、下田は幕末時代にタイムスリップしたかのように沸き返るに違いない。
アクセス
了仙寺[りょうせんじ]
住所
静岡県下田市七軒町3丁目12-12
アクセス
東名高速沼津IC・新東名高速長泉沼津ICから伊豆縦貫道経由1時間40分
伊豆急下田駅から徒歩10分
お問い合わせ先
0558−22−0657
伊豆急下田駅から了仙寺へ続く道はマイマイ通りと呼ばれる下田のメインストリート。了仙寺山門からペリー艦隊来航記念碑がある下田港まではペリーロードと名付けられた川沿いの小道で、漆喰のなまこ壁や石蔵が残る。